「古代海人の世界」探訪

玉置神社 (十津川村)
 2012年4月15日、大和なる玉置山(1076m)に登りました。玉置神社の元宮は原始的なエネルギーに満ちています。いま車で登っても険しいこの山の頂に、神武天皇が十種神宝を置いて必勝を祈願したという神話は何を示唆しているのでしょうか。そのあたりから玉置山の名が生まれたとも言われているようです。
 


丹生都比売神社 (天野)
 2012年4月16日、高野山持明院での先祖供養の帰りに、天照大御神の妹神・稚日女命を祀る紀伊國一宮丹生都比売神社へ行きました。空海を高野山へ導いたのが丹生大明神とのことで、高野山真言宗の聖地「壇上伽藍」の内部には日本古来の神を祀る「御社(みやしろ)」があるそうです。また、高野のタカノと、天野のアマノで「タカマガハラ」になるとの説もあるらしい。
 「丹」は朱砂の鉱石から採取される朱のことで、その鉱脈のある場所に「丹生」の地名や神社があるのだそうです。のちに、讃岐の「仁尾(にを)」や「入野(にふの)」も「丹」の関連地名だったことを知りました。
 


廣田神社(西宮)・生田神社(三宮)
 2012年5月8日、新神戸での高野山新聞社創立百周年祝賀会で演奏した後、天照大神の荒魂(あらみたま)を祀る廣田神社と、天照大神の和魂(にぎみたま)又は妹神を祀る生田神社へ参拝しました。
 たまたま同じ日に行った二つの神社の創建が同じであることが、「神功皇后元年(西暦201年)」と『日本書紀』神功皇后条巻第九(神功皇后摂政元年二月)に記されているそうです。
 


籠神社 (天橋立)
 2012年5月9日、新神戸から天橋立へ移動し、天照大神と豊受大神が伊勢神宮へ遷座したことで元伊勢と称ばれている丹後國一宮籠神社と奥宮の眞名井神社へ。左の1993年撮影の鳥居とはずいぶん印象が違います。
 天橋立の内側(海)を走り、宮津〜府中を12分で結ぶ天橋立観光船は、海人族の気分が味わえて、とても快適でした。カモメたちも人慣れしていて、かなり接近してくれます!!
 


出雲大神宮 (亀岡)
 2012年5月10日、丹波國一宮へ。今の出雲大社は明治以前は杵築大社と称しており、『丹波国風土記』に「奈良朝のはじめ元明天皇和銅年中、大国主命御一柱のみを島根の杵築の地に遷す。すなわち今の出雲大社これなり」とあるため、ここが元出雲とされているそうです。
 「皇祖より壱萬年以前」の立看板には度肝を抜かれましたが、学生時代に伊福部昭先生からお聞きしたことがあったので納得しました。
 


志賀神社 (志賀島)
 2012年7月10日、初の対馬入り。あいにくの雨でしたが、民宿たけだ家さんに舟の手配をお願いしておいたので、空港から志賀島を目指しました。途中、スコールのような雨に見舞われ、どうなることやらと思いましたが、調絃していたら雨があがりました。どうやって上陸するの? といった感じの小さな島ですが、幼少からの御転婆が幸いし、鳥居をくぐって右の崖を攀じ登りました!!
 CDの解説にも書いた「しかさへづる聲」の箇所でウミネコが数羽はげしく啼いて歌に和した場所です。
 


屋利止加神社 (鑓川)
 2012年7月11日朝、民宿のある佐賀(さか)から和多都美神社へ向かう途中、屋利止加(やりしか)神社へ立ち寄りました。対馬では多くの神社が海から来る神を迎えるかのように建っています。突風で傘が差せない中、階段を昇って参拝しました。
 


和多都美神社 (仁位)
 2012年7月11日。豊玉毘売の墳墓(写真右)と磯良恵比須の磐座(写真左)のある和多都美神社へ。
 雨の中、日本人観光客には会いませんでしたが、バスでやってきた韓国からのツアー客が二礼二拍手一礼をしていたのが印象的でした。対馬ならではの光景です。
 のちに、二礼二拍手一礼そのものが新しい形式だったことを知りました。
 


海神神社 (木坂)
 2012年7月11日。藻小屋ヤクマの塔のある景色で有名な木坂にある対馬國一宮たる海神神社へ。
 お昼頃には雨が酷く、280段の階段をのぼることを断念。
 夕方再訪した時も雨でしたが、今度は頑張って登り、神楽殿で調絃を始めたら雨があがりました。
 


金山宮(犬ヶ浦)
 2012年7月11日。対馬で例の北緯34度32分(太陽の道)に位置する神社といえば金山宮ですが、祭神すらわからないという謎のお宮です。海神神社から海岸沿いを北上し、迷った末に見つけました。この巨石は海中から引き揚げたものとしか思えませんが、何のために?
 


舟志乃久頭神社 (舟志)
 2012年7月11日。対馬北部の西岸犬ヶ浦(いんがうら)から東岸の(きん)に向かって大移動(横断)する途中にあった神社。雨のあとということもあるかと思いますが、暗いイメージでした。いったん川に沿って下った細い道を直角に曲がり、階段を昇って鳥居をくぐりました。
 道路に面した看板には舟志乃久頭神社とあったのに、次の鳥居は久頭乃神社、その次は久頭神社で、狛犬もその都度増やされたようで何セットも置かれていました。祭神は多久頭魂(たくづまのかみ)とありますが?
 


琴崎大明神 (琴)
 2012年7月11日。(きん)という地名に惹かれ、舟で海から琴崎大明神を目指すつもりが、2.5mの荒波のため陸から行くことに。コロク御子神社から山を越えた所にある琴崎大明神にはコロク神社の扁額も架かっていました。対馬には源流がわからない神社が多いとか。
 


金毘羅神社 (佐賀)
 2012年7月12日。いよいよ対馬を去る朝、佐賀(さか)の民宿たけだ家さんが「対馬で一番新しい、出来たてピカピカの神社だよ」と言って、各漁港ごとにあるのではないかと思われるほど対馬に沢山ある金毘羅神社の一つに案内してくれました。ここからは佐賀の漁港が見渡せます。
 あいにくの曇り空でしたが、民宿の皆さんへの感謝の気持ちを抱きつつ佐賀をあとにしました。
 


住吉神社 (鴨居瀬)
 2012年7月12日。空港へ向かう途中、対馬住吉神社のルーツともされる鴨居瀬(かもいぜ)の住吉神社へ。こちらも海からの参拝が正式なのか、水の中まで階段が続きます。
 紫瀬戸とも呼ばれるこの入り江は水がきれいで、水底にはたくさんのウニが見えました。
 


志賀海神社 (志賀島)
 2012年7月12日。対馬空港から福岡空港へ飛び、志賀島を目指しました。飛行機が遅れたため市営渡船に乗れず、西戸崎からタクシーで沖津宮近くまで行ったものの満潮で渡れませんでした。志賀海神社に立ち寄ったのち市営渡船で博多湾に戻り、時機を待つことにしました。
 


穂高神社 (安曇野)
 2012年7月21日に松本に入り、翌朝穂高神社へ。穂高駅から歩いて数分とは思えないほど静謐な空間に心洗われました。ところが、神楽殿の前を通ると、なぜか突然「コケコッコー」という叫び声が聞こえてビックリ! 何と本物のニワトリが走りまわっていました。境内で放し飼いにされているそうです。
 


穂高神社奥宮(神垣内)
 2012年7月22日、穂高神社から奥宮へ。明神池は息をのむほど美しく、まさしく秘境!! 舟で神楽歌を演奏しながら、どこまで行っても水が透明で水底まできれいに見えることに驚いていました。とても現世にいるとは信じられず、ただただ感動の一言でした。
 


諏訪大社下社 (下諏訪)
 2012年7月23日午前、諏訪大社下社春宮(右)と秋宮(左)へ。
 諏訪大社といえば御柱ですが、春宮には穂高神社と同じくお船祭りの船が置かれていました。両宮は、2月朔日に秋宮から春宮へ、8月朔日に春宮から秋宮へ神霊渡御の行列が仕立てられることで知られています。
 


津島神社 (諏訪湖)
 2012年7月23日、下諏訪から上諏訪へ向かう途中に高木津島神社がありました。
 津島神社は建速須佐之男命が朝鮮半島から日本に渡った時、和魂が対馬に鎮まったことに始まるとか。ここから見る諏訪湖は対馬の浅茅湾のイメージと重なります。
 


諏訪大社上社(上諏訪)
 2012年7月23日午後、信濃國一宮 諏訪大社上社本宮前宮へ。前宮は元の本宮とも言われ、神域を流れる「水眼(すいが)」の清流(画像左端)が御手洗川として大切にされていたそうです。本宮に本殿はなく、拝殿等の威容よりも御神体山(守屋山)から吹いてくる風の清々しさが印象的でした。

【追記】2015.4.29
 室町時代初期に編纂された『諏訪大明神画詞』によると、大和朝廷によって日本が統一される前、諏訪の地には洩矢(もりや)神を長とする先住民族が住んでいた。そこへ天孫族に敗れた出雲王国の建御名方神率いる一族が稲作の技術を持って進入して来た。
 洩矢族は負けてしまうが、勝者である建御名方神は洩矢族を諏訪の共同経営者として用い、洩矢族の長を洩矢の神を祭る神官とした。その神官が守矢家であり、現在78代目となる。
 建御名方軍と洩矢軍の戦跡は現在も残っており、建御名方神の陣地跡には藤島明神が、天竜川を挟んだ洩矢軍側には洩矢大明神が祀られている。
(茅野市神長官守矢史料館パンフレットより)
 


伊弉諾神宮 (淡路島)
 2012年8月27日、宇多津から日帰りで淡路國一宮へ行ってきました。明治15年に、禁足地だった御陵を整地した上に建てられたという本殿の迫力に圧倒されました。また、神池は、幽宮(かくりのみや)跡の御陵を囲む濠の遺構と伝えられており、これぞ海人(あま)族の本流との空気を湛えていました。
 


阿麻弖留神社 (小船越)
 2012年10月5日。対馬再訪。空港まで民宿たけだ家さんに来て貰って、途中の阿麻弖留神社に寄りました。
 社号は『対州神社誌』に三所権現、『大小神社帳』に照日権現神社、古くは天照乃神社とあり、『明細帳』で阿麻弖留神社になっています。
 祭神は『大小神社帳』に天津向津姫神、『大帳』に「対馬下県主日神命または天照魂命」とあり、『明細帳』には天日神命(ヒニミタマ)とあるそうです。天日神命は対馬県主の祖なのだとか。
 


和多都美神社 (佐賀)
 2012年10月5日。民宿たけだ家さんに到着後すぐ、裏手に位置する和多都美神社へ。一之鳥居は八幡宮で、ここ佐賀(さか)の八幡が木坂の海神神社(木坂八幡)のルーツとか。
 二之鳥居は和多都美神社で、現在は二位と佐賀が名乗り、木坂の海神和多都美を名乗っていた時代があって、対馬の神社名は難しいです。
 


志古島神社 (和板)
 2012年10月6日。今回の旅のテーマは「日本神楽の創始者は安曇磯良と申す志賀島大明神」ということで、磯良を祭神とする神社を探して、神楽歌「磯等」を演奏してみました。
 右の一之鳥居は志古島神社、左の二之鳥居・三之鳥居は敷島神社で、「シコ」「シキ」「シカ」は同じ。
 


和多都美御子神社 (二位)
 2012年10月6日。和多都美御子(おんこの)神社の祭神は神武天皇の父鵜葺草葺不合命で、豊玉毘売命の妹・玉依毘売命の夫とされているため、神話では豊玉毘売命の子で養母の玉依毘売命と結ばれた磯良に比定されています。V字に折れた参道の中央から二之鳥居と三之鳥居が見渡せました。
 


濱殿神社 (二位)
 2012年10月6日。豊玉毘売命・穂高見命・玉依毘売命の父豊玉彦命御陵墓のある濱殿神社へ。市営渡船・豊玉町仁位の発着所より奥、仁位川に面して鎮座。周辺に和多都美御子神社和多都美神社が揃っているところが、二位の歴史の古さを物語っているのでしょうか。
 


乙宮神社 (南室)
 2012年10月6日。玉依毘売命を祭神とする乙宮神社は、対馬市立串郷、豊玉町糸瀬、美津島町緒方、同芦浦、同久須保、厳原町南室、同上槻にあるとされています。こちらはたぶん厳原町南室の乙宮神社。対馬の神社は地図に載っていない場合が多いので、探すのが大変です。
 


志々岐神社 (小浦)
 2012年10月6日。対馬には湾ごとに海神が祀られていて、小浦に産土神として豊玉毘売命を祭神とする志々岐神社がありました。鳥居に扁額がなく、神社名がわかりませんでしたが、灯篭に彫られた「志々岐神社御遷坐事業」の字で判明。肥前国松浦郡に同名の神社あり。
 


住吉神社 (鶏知)
 2012年10月6日。7月に行った鴨居瀬(かもいぜ)の住吉神社から分祀されたという鶏知(けち)の住吉神社へ。海岸沿いにある神社は敷地が狭く、細い階段の上に本殿がある場合が多いのに、こちらは敷地が広く、境内もよく整備され、本殿が立派なことに驚きました。
 


都々智神社 (尾崎湾内大島)
 2012年10月6日干潮時、尾崎(おさき)の都々智神社へ。こちらの奥宮が郷埼大明神(伊奈郷琴崎神社同神)にあたるため行きたかったのですが、陸上自衛隊郷埼訓練場を越えなくてはならず断念。翌日、浅茅湾内を船で周遊しようと試みるも、高波のため郷埼へは行き着けず。
 


敷島神社 (加志)
 2012年10月6日午後6時前に見つけた加志の敷島神社は、午前中に行った和板の志古島神社と同神。太祝詞神社の手前にあります。
 敷島神社は典型的な海人族の神社といえる「近の島」(チカノシマ→シカノシマ→シキシマ→シコシマ)形式で、加志経島に鳥居があり、こちらは7日に舟で行きました。
 


大吉戸神社 (黒崎)
 2012年10月7日午前、浅茅湾内を船外機船でまわりました。鋸割(のこわき)から黒瀬湾に入ると右手に城山(じょうやま)があり、僅かながら山腹を巡る金田城(かなたのき)の石塁も見えました。
 城山の麓、というか船着き場に、古くは城八幡宮ともいった大吉戸(おおきど)神社がありました。
 


壬神社 (泉)
 2012年10月7日。(みずのえ)神社(右画像左端)は、大正3年に志古島社舌崎大明神を合祀して神社に昇格しましたが、もともとの信仰の対象は「近の島」たる志古島であったと想像されます。対馬の「近島」としては大きい志古島(右画像右)は現在も禁足地だとか。
 


高良大社 (久留米)
 2012年10月8日。対馬から福岡へ飛び、1,600年あまりの歴史を持つとされる筑後國一宮高良(こうら)大社へ行きました。祭神は高良玉垂命。一説に磯良ともありますが、高良玉垂命は『日本紀略』(795)に「筑後国高良神奉授従五位下」とあるのでどうでしょうか。
 

A2012/11-2013/3 B2013/4-6 C2013/7-8 D2013/10-11 E2013/11-2014/2
F2014/2-5 G2014/6-7 H2014/7-10 I2014/10-11 J2014/11-2015/2
K2015/2-4 L2015/4-5 M2015/5-6 N2015/6-7 O2015/7-10