2005年2月18日〜20日 Museo di Santa Croce, Umbertide, Italy
私が「日本の歌」を歌い続けてこられたのは、おそらく三善晃先生のお蔭だろうと思う。
大学三年の秋、学内演奏会で三善晃作曲『四つの秋の歌』を歌うことになった。日本の歌を歌うのは時期尚早ではないか(一人だけ浮いてしまうのではないか)と迷う私に、ピアニストがこの曲集を歌うことを強く勧めてくれ、三善先生にレッスンをお願いする運びとなった。その後も先生は折にふれて御指導くださったが、私にはそれを演奏に生かすだけの力量が不足していた。 私が三善晃作品を録音する決心をしたのは、約600曲の「日本の歌」を収録した後で、最初に御指導いただいてから、実に30年近い年月が経っていた。しかし、その間、私の心から三善先生より頂いたある言葉が消えることはなかった。このことについてはライナーノートに書くつもりだが、この一言で私の人生が決まったと言っても過言ではない。 「日本の歌」の演奏を志して以来のさまざまな思いを抱きつつ、私はウィーン経由でペルージャへ飛んだ。ペルージャ近郊のウンベルティーデにあるサン・クローチェ美術館には、この録音のためだけにイタリアの名器「FAZIOLI」が用意され、国宝級の絵画に囲まれた非常に贅沢な空間の中で至福の時を過ごせた。 日本では息抜きをする暇もないだろうからと、私が音楽だけに集中できるようウンベルティーデでの録音をセッティングして下さったプロデューサー氏のお蔭で、これまでにもまして幸福なレコーディング及び休暇となった。いつも「日本の歌」に対する私の思いを最高の形で結実させようとサポートして下さるカメラータ・トウキョウの皆々様に心からの感謝を捧げたい。 2005年2月20日 藍川 由美
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![]() ピアノ 森 美加 カメラータ・トウキョウ CMCD-28095 2005年2月18-20日 Umbertide/ 9月22&24日 Wien |
《世界のテクスチュアーズに織り込んで》
三善 晃
敬愛する藍川由美さんに私の歌曲作品を歌っていただけることが、なにより嬉しい。
藍川さんの歌には日本語の清冽な水脈が流れている。グローヴァルな相互理解が求められる今日、その前提として最も大事なことは、すべての民族や国がそれぞれの母国語のほんとうのパラダイムを持つということだろう。国際的な歌手・藍川由美さんがそれを表現していることは大事な、素晴らしいことだ。 このCDには私の若い頃からの作品も網羅されていて、私が器楽作品においても追い求めてきた「日本」が表象されている。殊更に歌手と作曲家の協同などとは言わず、それぞれの仕事が平易に、日常的に、日本のリテラシーを紡いでゆくといいと思う。 |
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歌曲集 『聖三稜玻璃』 (山村 暮鳥・詩) 歌曲集 『四つの秋の歌』 (高田 敏子・詩)歌曲集 『白く』 (左川 ちか・詩)歌曲集 『高原断章』 (神保 光太郎・詩)歌曲集 『抒情小曲集』 (萩原 朔太郎・詩) | 貝がらのうた (三善 晃・詩) 歌を投げてみようか (三善 晃・詩) りすの子 (三善 晃・詩) 仔ぎつねの歌 (三善 晃・詩) なんのき (谷川 俊太郎・詩) うとてとこ (谷川 俊太郎・詩) かっぱ (谷川 俊太郎・詩) ことこ (谷川 俊太郎・詩) 栗の実 (三善 晃・詩) |
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