Band Journal


これらの原稿は、音楽の友社の依頼により、書いたものです。


第47回全日本吹奏楽コンクール四国支部大会を聴いて

審査員の聞き所

第44回全日本吹奏楽コンクール職場の部を聴いて


2005年吹奏楽コンクール北海道大会職場一般の部を聴いて

9/4
 3日間小中高生の素晴らしい演奏を聴いた後という事もあって、大人達には少し苦言を。一般は玉石混淆ですが、大学/職場のレベルはなぜこんなにも低いのでしょう?吹奏楽が「鑑賞」の対象として、他のクラシック音楽(広義な意味の)と同様に認められていない現状は、こんなところにも原因があるのではないでしょうか?高校野球は応援するが、大学や社会人野球は見ないというのと似ているような気がします。もちろん、練習量や練習環境の問題もあるのだとは思いますが、年を重ねればそれだけ上達するというのが健全な考え方でしょう?小中高には熱心で優秀な指導者がたくさんいらっしゃいます。その先生方に教わってきて、大学や職場に行ったら指導者がいない、どうやって練習して、どうやって曲を仕上げてゆけば良いのか解らない、暗中模索、これが現状ではないでしょうか?見方を変えれば、小中高の間に、譜面から音楽を読み取る能力を養っていないのではないか?指導者の方も、譜面を与えると同時に音源を与えて、それを真似するように指導してはいないでしょうか?コピーはどこまでいってもコピーです。楽譜から音楽を感じられるよう、自分の感性を磨きながら、永く音楽を愛して下さい。
 さて、キタラホールの音響は素晴らしいものでしたが、それゆえ、特に大編成のアンサンブルはバランスと音色に一考を!と思いました。P(ピアノ)の部分をどう表現するか?ということ。Pをきれいに響かせるのは容易ではありません。しっかり息を支えて、繊細な表現力を養いましょう。クラシック音楽はホールと一緒になって音楽を作るのです。常に今聴こえている音に耳を傾ける事、そしてその音に反応して音楽を進めてゆく事、それらが聴衆の感動を誘うのだということを再確認しました。

職場C

NECソフトウェア北海道吹奏楽団
 この部門唯一の参加。8人の「キージェ中尉」どうなることかと心配していましたが、緊張の様子が審査員席にまで伝わってきました。フルオーケストラの作品を少ない人数でやるという事は、個人への負担は増えるでしょうし、あちこち歯抜けになって、メロディは紡げたとしても、演奏効果は薄いと思います。合奏の喜びを享受しましょう。仕事柄ネット検索はお手の物でしょうから、選曲にも留意なさって下さい。

職場A

新日鉄室蘭吹奏楽団
永いキャリアを彷彿とさせるバランスの取れた快演でした。ソロ部の安定感もさすがです。反面、目立たないところで軽微なミスがあったり、響きの面では物足りなさが残りました。三連符が前のめりになる欠点も見られました。初心に返って基礎練習をしましょう。

六花亭管楽器アンサンブル
明るい豊かな響きは若さを感じさせました。反面、リズムやフレーズの運びにムラやミスがあり、声部のつながりに欠けました。打楽器セクションはそれだけだととても良いのですが、トゥッティではやや押さえ過ぎの感がありました。合奏練習では、バランスやピッチに気を配って下さい。

一般C
金賞受賞団体は3団体。数年前まで職場の部でエントリーしていた高橋水産吹奏楽団が一般の部で参加。フェザータッチの独特のサウンドが快かったですが、この作品の持つ明るいバイタリティは表現しきれてなかったように思います。作品に合った表現方法を見つけましょう。美幌吹奏楽団はスケールの大きな演奏でした。特にサックス群の表現力が素晴らしかったと思います。反面、クラリネット群、金管群はやや平板に聴こえました。次いで、名寄吹奏楽団ですが、1曲目のトゥッティはとても美しかったです。課題は2曲目のような音楽でしょうか?木管低音域のハーモニーが合わなかったり、ソロ部にミスが目立ったり、鍵盤楽器とフルートのピッチが合わないのが気になりました。鍵盤楽器と管楽器のピッチのずれは、惜しくも金賞を逃した川上SWEをはじめ、他の団体にも言える事です。シンコペーションのリズムが、きちんと取れていないのも、気になりました。他には留萌市民吹奏楽団のFl+Ob+Clの瑞々しいトリオが印象に残りました。

一般A

函館吹奏楽団
豊かな音色と音量は素晴らしいものがありましたが、テヌートやクレッシェンド・ディミニュエンド、フェルマータの表現でもたもた感や違和感があったように思います。Pの表現も含めて、キタラホールの音響も考慮に入れた表現を探してみてはいかがでしょうか?

札幌ブラスバンド
一聴して実力のあるバンドだとは思いましたが、もっと良いバンドになる可能性がありそうです。後打やタカタッタッターのリズムがきちんとはまっていない。木管の音色のブレンドが悪い。音のはずし多い。オーケストラアレンジではクラリネットに弦楽器の表現力を期待しますが不充分。次のステップの参考にしていただければと思います。

釧路町吹奏楽団
底力を感じさせる演奏でしたが、冒頭、指揮とのタイミングが合わず、破裂音になってしまいました。金管群の受け渡し不充分でがさつな印象でした。木管のオブリガードはピッチのずれが奇妙な音色を醸し出していました。クラスター音の後に来る単純なハーモニーを美しく作るなど、音楽の全体像をつかんだ演奏を目指しましょう。アダージオの部分では、充分にその実力が発揮されていたと思います。

室蘭ウィンドソサイエティ
プログラムとは違い35名の演奏でした。しかも、打楽器群が離れていた事もあり、薄っぺらなサウンドに聴こえました。Pで演奏しようとする姿勢は見られましたが、おそるおそるという印象で、音楽にとけ込んではなかったように思います。しかし、自由曲では一人一人の線が活きていて良かったと思います。クリアに変化する事、速くなってもしっかり演奏する事が課題でしょうか?声も楽器を演奏するのと同じくらいな気持ちで出すようにしましょう。

創価学会札幌道央吹奏楽団
78名の演奏ということでバランスを考えた演奏だったように思います。すっきりしたサウンドに仕上がっていました。反面、ここぞ!という場所でのインパクトに欠けました。課題曲ではメロディと低音群のノリが合いませんでした。自由曲ではイタリア音楽の持つ闊達さは表現しきれていなかったという印象です。

北見吹奏楽団
流麗という言葉がぴったりくる素晴らしい演奏だったと思います。音色のブレンドは抜群で、歌う姿勢も飛び切り秀逸でした。ただ時々、木管群・ホルン群でメロディーの中心音(フレーズごとに一番盛り上がる音)への意識が希薄だったように思います。ほとんどの他の団体でも見られましたが、3連符が前につんのめってしまう欠点も見られました。

帯広吹奏楽団
Pを意識した演奏でしたが、それがかえってサウンドを薄くしてしまったような印象です。Cl+Flのブレンドは良かったと思いましたが、全体的にユニゾンが合いきれていません。ディミニュエンドもすぐに小さくなり過ぎで、尻切れとんぼのようになってしまいました。息遣いに注意して下さい。

岩見沢市民吹奏楽団
課題曲冒頭、重めのけだるい感じで始まりましたが、作品の解釈に疑問が残りました。自由曲は、ラグタイムとクラシック音楽との切り替えが難しく、フレーズの噛み合わせがずれました。打楽器群が2つに分かれていたのが難しかったかもしれません。大空への憧憬、期待感は出せていたように思います。

旭川市青少年吹奏楽団
切れ味の良い端正な演奏だったように思いますが、8分音符が2つ続いた時などに、リズムのクセが見られました。原曲の持つ「人間臭いどろどろとした感じ」は表現しきれていなかったように思います。 Ob+Flのピッチが合わないのも気になりました。

全体として辛口の内容になってしまいましたが、皆さんへの激励、私の音楽への愛情と受け取って下さって、参考にしていただければ幸いです。熱演をありがとう!(曽我部清典)



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Exclusive rights reserved. Last update 11/11/2005
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