Band Journal


これらの原稿は、音楽の友社の依頼により、書いたものです。


第44回全日本吹奏楽コンクール職場の部を聴いて

第47回全日本吹奏楽コンクール四国支部大会を聴いて


審査員の聞き所

 なぜ、私に「審査員の聴きどころ」というテーマで白羽の矢がたったのか解りませんが(今回の特集では、コンクールの審査員を豊富に経験されている先生方とありますが、私はそんなにたくさんお引き受けしていないのが現状)、これまでバンドジャーナル誌を通じて書いてきた私の吹奏楽コンクール審査に対する意見をまとめるのにも良い機会と思い、お引き受けしました。それとまず、私自身、音楽(演奏)を審査するというのに、かなりの抵抗があるということを最初に申し添えておきたいと思います。また、この文章は、まだまだ音楽経験の浅い中高生を対象に書いていますので、大学、一般、職場の部の方々には当てはまらない内容もあるかと思いますが、ご承知おき下さい。

【課題曲について】
 事前にスコアを頂戴しているので、実際の演奏が始まる前に、こちらで音楽をイメージすることは出来ます。ですから、スコアに明記してあること(すべての声部が聞こえる・表情記号・強弱記号・リズム・ハーモニー・アーティキュレーションなど)がきちんと守られているかどうかは、審査の重要なポイントです。最初の数小節で、そのバンドの大まかな力量は把握できると思います。きちんとした端正な演奏は好感が持てます。第一印象は重要でしょう。美しいサウンドは好印象です。楽曲の解釈の差については、はやり、譜面に書かれているかどうかが問題になります。曲解とも言えるような奇を衒ったものは余り良い印象を持たれないと思います。

【自由曲について】
 以前書かせていただいた記事の中でも申し上げたことですが、吹奏楽作品とオーケストラ作品のトランスクリプション作品を同時に審査するというのは、審査員としてはかなり厳しい要請です。編曲と割り切ってしまえば、かなりの変更は可能ですが、吹奏楽のために書かれた作品に手を入れるというのは好ましい傾向とは思えません。こういったことから、私としては吹奏楽作品を取り上げたバンドを評価したいのですが、私自身の不勉強もあり、吹奏楽作品すべてに精通しているわけではないので、その演奏がオリジナルに近いものかどうか判断できないという自己矛盾があります。結局はちゃんと演奏されているかどうかの細かなチェックは出来ませんので、全体から来る印象で採点することにならざるを得ません。可能な限り耳を白紙にして、「すべての曲を初めて聴く」というスタンスで臨むようにしています。

【公平な審査について】
 私自身、吹奏楽畑では殆ど仕事をしていないので、学校名や団体名も良く知りません。ですから団体名を聴いて左右されることはまずありません。また、そういう情報は、聴かないようにしています。
時折、指揮者と演奏とが合ってないような団体も見受けられますが、そういう場合は、指揮を見ないで音だけを聴くようにしています。吹奏楽コンクール(特に中学・高校の部に於いて)は、指揮者コンクールではないと思うからです。
審査表は技術的観点と芸術的観点に分けて審査するようになっていますが、5段階評価する上で、多少総合ポイントで調整します。私の場合、技術だけ、表現だけで評価することは余り無いです。それは、表現と技術は表裏一体と思うからです。
独奏部分は殆どの曲にあります。この部分を全体評価としてどう捉えるかということも意見の分かれるところではありますが、全体の一部と捉えて、過大評価しないように気を付けています。

【どの点を最も重視して採点するか】
 演奏される作品のあり方で随分変わってくると思います。私個人としては積極的な演奏が好きです。積極的というのは、表現にしっかりとした意図が感じられるということです。

【トランペット奏者たちへ】
 大きな音量と華やかな響きを持つトランペットは吹奏楽の花形です。バランス良くうまく吹けば、一躍注目を浴びるでしょう。周りを聴かないでしくじれば、その反対になります。tutti感覚が必要とされます。安定したハーモニーはピラミッド型が良いのです。そのメロディーはソロなのか、tuttiなのか確かめた上で、繊細かつ大胆に表現することを心がけましょう。

【最後に】
 皆さんの青春を賭けた熱い演奏を期待しています。練習は君たちを裏切りません。悔いのない夏を!!電子メールで皆さんのお便りをお待ちしています。

曽我部清典(トランペット奏者:ソリスト/上野の森ブラス)
電子メールアドレス:<ebakos@jade.dti.ne.jp> or <ebakos@mac.com>
ホームページ:http://www.jade.dti.ne.jp/~ebakos/


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