Band Journal


これらの原稿は、音楽の友社の依頼により、書いたものです。


第44回全日本吹奏楽コンクール職場の部を聴いて

審査員の聞き所


第47回全日本吹奏楽コンクール四国支部大会を聴いて


 第47回全日本吹奏楽コンクール四国支部大会は8月21日、22日の両日、松山市民会館大ホールにおいて開催されました。当日の審査員は金田康孝、竹森正貢、新妻寛、野崎剛史と私(曽我部清典)の5名でした。
 私にとっては、夢の大会(出身地の大会で中学・高校時代は弱小バンドに在籍していた)であり、30年の時を隔ててどのくらい演奏水準が上がっているのか、また、先輩達・友人達・後輩達が育てたバンドがどのような演奏を披露してくれるのか、大きな期待を胸に会場に向かいました。特に、私の出身中学が四国大会初出場ということで、大きな期待とともに、ちゃんと演奏できるのだろうか?自分自身もちゃんと採点できるのだろうかという不安もありました。多少厳しく見すぎたきらいはあるかもしれませんが、無事、冷静に勤めを果たすことが出来て、ほっとしています。
 さて、中学生の演奏を聴かせていただいた上での印象ですが、十人十色と言いますか、それぞれのバンドによって、随分、取り組み方が違うものだなあと思いました。先生と生徒、基礎練習と作品練習、練習と本番、課題曲と自由曲など。その指揮ぶりや演奏ぶりに、それぞれ個性が感じられて、興味深く拝見(拝聴)致しました。中学生は特に「楽器の手ほどき」から指導する場合が多いので、指導者の方の影響が色濃く出るのだと思います。どれが良いというのではなく、どんなバンドにも個性が出るものだなあと感心させられました。楽器の技術に関しては、まだまだ未熟な点が多く、特に弱奏や遅い部分の演奏にイントネーションの不安を感じるバンドが多かったように思います。また、課題曲のマーチで、シンコペーションや後打ちのリズムが転んでしまうバンドが殆どでした。全国大会に選ばれた学校も飛び抜けた実力を発揮したわけではありません。お互いが切磋琢磨して、更に高い境地に登っていって欲しいと思います。県ごとの特徴としまして極々大まかに言わせて頂ければ、演奏技術の高い高知県、きちんとまとめあげる香川県、金管と木管のブレンドの良い爽やかなサウンドの徳島県、よく歌い集中力のある愛媛県という印象を受けました。


中学校B部門/全体評


 四国各県から2団体ずつ選ばれた8校での演奏でした。少子化が取りざたされる昨今ですが、フル編成のバンドが組めない学校が増えてくるのかもしれません。2校での合同演奏で参加して下さったバンドもあり、指導者の方々のご苦労が偲ばれました。先ほど申し上げましたが、バンドの個性が一番感じられたのは、この部門でした。また、四国支部企画として【アイデア賞】が設定され、演奏面及び演奏以外の面で+αの工夫が感じられるバンドを表彰することになっており、「見せる」ということを意識した団体も、余り意識してない団体もありました。それもまた個性なのでしょう。
 【最優秀】と【アイデア賞】に輝いた愛媛・内子町立大瀬中学校は木管楽器奏者13名での演奏でした。一人一人がそのパートの特色をきちんと捉えた演奏で、説得力がありました。室内楽的な美しさに溢れた演奏でしたが、ハーモニーの理解や音楽のテンションへの対応には、まだまだ上達の余地があるように思いました。そして、その楽曲解釈においても、まだまだ大編成のイメージを引きずっているような印象を受けました。少ない編成でやる長所は「小回りが利く」ことでしょうから、場面の転換にあわせた表情の変化にもっと敏感な演奏を心がけていただきたいと思います。
 【アイデア賞】を受賞した徳島・八万中学校は、グレンミラーのメドレーを聴かせてくれました。衣装や振り付け、各声部のバランス、そして何より演奏中の表情がとても良かったです。ただこういしたスィングジャズを演奏する場合、「しゃべり方(アーティキュレーション)」をジャズのそれにする必要があります。スィングのリズムが阿波踊りのチャンチキのように聴こえました。それはそれで楽しかったのですが・・・
  受賞は逃しましたが、香川・白鳥中学校の大阪俗謡による幻想曲は、メロディの性格が的確に表現されていて、私個人としては好きな演奏でした。同時にいくつかのメロディーがなる部分の整理をしていただきたいのと、伸びた音の緊張感が余り意識されてないのが残念だったと思います。

中学校A部門

香川・香我美
まだまだ発展途上のバンドだと思います。打楽器による雰囲気作りには成功していたように思いますが、トゥッティ感覚の欠如(響き合わない)やテンポのコントロールもままならない部分がかなりあったように思います。更なる練習を!!
徳島・南部
このバンドをはじめ、徳島のバンドにほぼ共通して言えるのは、瑞々しいサウンドとそのバランス感覚の良さでした。ただ、フレーズの作り方や、休符の意味、さらに曲の構成などについての工夫が足りないように感じました。コルネットのソロは柔らかくとても綺麗でした。
高知・三里
「歌心」を感じさせてくれるバンドでした。オーボエのソロ、良かったです。ただ、トゥッティ感覚・リズム感覚が乏しいように思いました。また、低音域セクションが弱いのでハーモニーが不安定になってしまいました。
香川・三木
全体のサウンド作りはしっかりしているなという印象です。ただ、リズムが先走ってしまうので、不安定な演奏になってしまいました。クラリネットが内側を向きすぎて、金管とのバランスが悪かったように思います。ゆったりした部分のイントネーションにも気を付けましょう。
徳島・城東
パート毎のsoliはとても綺麗に響いていました。フレーズの性格をもっと出せるように、フレーズの終わりまでしっかりイメージするように。同じ音符が続く所では、テンポが走ってしまいました。もう一息で金賞という演奏でした。
高知・越知

どっしりとした豊かなサウンドでした。チューバ、良い音でした。ただ、演奏者と指揮者の呼吸が今一息合わなかったような印象です。もっとたっぷりメロディーを歌っていただきたい。そして、音楽の変化は決然と!!自由曲では鍵盤楽器と管楽器のピッチの差が気になりました。
愛媛・椿
柔らかで豊かなサウンドです。木管楽器の跳躍もレガートで綺麗でした。低音楽器のイントネーションとバランスを改善して、ソロ楽器を浮き立たせるようにすれば、もっと素晴らしくなると思います。全国大会での演奏に期待します。
徳島・松茂
きびきびした演奏で、良く整備されていると思いました。イントネーションの不安は、殆ど見られませんでした。ですが、もっと豊かな響きや表現のためには、個々の技術や音楽性の充実が必要です。頑張りましょう!
香川・龍雲
音楽の流れはとても良いと感じました。その反面、細かなリズムや表現に対して、余り注意が払われていないので、リズムの乱れや荒っぽさが目立ちました。もう少し、丁寧にスコアを読み、表現するよう、心がけて下さい。
愛媛・港南
フレーズの意図を良くつかんだ演奏だったように思います。ただ、そうする余り、音楽の流れが切れてしまうようでした。インテンポで歌う難しさを感じて、更なる上の境地の表現を目指しましょう。自由曲は曲のイメージが貧困だったような印象です。
徳島・国府
明るく軽いサウンドで、気持ちよかったです。その反面、しっかり伸ばして欲しい音もありますし、きちんとリズムを刻んで欲しいフレーズもあります。概してリズムが不正確なので、暴れているように聴こえてしまいました。
香川・国分寺
サウンドの豊かさなど技術には高いものを感じましたが、行進曲の場面、例えば、立ち止まった感じの部分や歩いている部分の表現などについての配慮は感じられませんでした。音楽を読みとろうとするパートとそうじゃないパートのギャップが大きいように思いました。
香川・丸亀南
のびやかなサウンドで、気持ち良かったです。ただ、リズムに説得力がなく、スタッカートの音価が音符の音価に比例してないように思いました。伸びた音のイントネーションにも不安がありました。
香川・光洋
雰囲気を持ったバンドですね。ただ、それが「癖っぽく」なってしまう危険性があります。きちんとした基礎力の上に、そのバンドの特性が活かされるよう、技術・感性とも磨いていって欲しいと思います。
高知・鏡野
技術的にはかなり高い水準のバンドだと思いました。ただ、表現力の点で、物足りなさを感じてしまいます。低音楽器は「ノリ」を作ることが出来ませんし、フレーズもぷつぷつ切れてしまうような印象を持ちました。何気ないフレーズにも気持ちを込めて演奏して下さい。
香川・綾歌
メロディーには表現力もあり、弱奏の部分も比較的綺麗に演奏できたと思います。サキソフォンのソロも綺麗に演奏できていました。ただ、それが、伴奏部に回ると、別人になったように表現がどこかに行ってしまうように感じました。基礎的な技術の弱さも見受けられました。
愛媛・土居
実に堂々とした演奏でした。ゆったりとした歌い出しはとても素晴らしい。ですが、変なところでのブレスが気になりました。緊張のせいかもしれませんが、リードミスも目立ちました。低音楽器のバランスをもう少したっぷりすることで、弱奏のユニゾンが合いやすくなるのでは?
徳島・鳴門一
フレーズの最後まできちんと歌ってくれました。もう一息、イントネーションを合わせましょう。ラテン民族の明るく闊達な音楽を表現するのはとても難しいです。サキソフォンとクラリネットの歌い方を合わせるようにしましょう。
愛媛・松山南
端正なきちんとした演奏でした。自由曲も、皆さんの集中力が強く感じられ、良くまとまった熱い演奏だったと思います。中低音域の更なる充実を図って下さい。全国大会での更なる飛躍を期待します。
高知・土佐女子
女性だけとは思えない素晴らしく豊かな響きを持ったバンドですね。ただ、表現が大雑把と言うか、聴いていて心躍る場面が少ないと感じました。リズムや音楽の場面転換にシャープさが欲しいです。
愛媛・松山西
まとまってはいるのですが、フレーズの途中で弛んでしまって、訴えかけてくるものがありません。メロディーやその繰り返しにも何かしら意味を感じて、演奏するように心がけて下さい。メロディーは受け渡すようにしましょう。
愛媛・三津浜
トゥッティが安定感もあり、素晴らしいバンドでした。ですが、長い音の処理の仕方とか、メロディーの歌わせ方に、もう少し神経が行き届いて欲しいなと思います。はっとさせる何かが欲しいと思います。


以上講評【曽我部清典/トランペット奏者・上野の森ブラス】


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