Band People


この原稿は、バンドピープル社の依頼により、書いたものです。


 バンドピープル読者の皆さん、こんにちは。曽我部清典です。この曲について考える前に、コンサートマスターの立場から、どんな曲をやる時でも重要な事柄を、抜き書きしてみましょう。


1 作品について知ること
2 音楽のイメージをメンバーに伝えよう
3 ハーモニーはバランス感覚で
4 クラシックでも「ノリ」は大切
5 暴君になるな!


 では、まず、作品について・・・


Giles Farnaby(英)1565-1640 

 エリザベス朝時代のヴァージナル曲、マドリガルの作曲家。「空想・夢・おもちゃ」は、フィッツウイリアム・ヴァージナル曲集の中から、6曲選び出されています。この作品集はGiles Farnabyがピアノの前身のヴァージナルという鍵盤楽器のために作曲して、Elgar Howarthが、金管五重奏用に書き直したもの。このElgar Howarthという人は、イギリス人で、フィリップジョーンズブラスアンサンブルでも活躍した素晴らしいトランペット奏者でした。今は、指揮者として活躍しています。
注意点の2以下に関しては、実際の譜面を元に考えてゆくことにしましょう。


The Old Spagnoletta(古いスパニオレッタ)Lively

 この曲のメロディーはレスピーギが自作の古代舞曲に引用したことでも有名です。スパニオレッタというのは舞曲の名前です(多分、サフーも)。覚えやすいメロディーですから、何度も口ずさんでみて下さい。初めはトランペットの1番だけで出ます。Lively(生き生きと)6/4拍子/mfです。音の上昇エネルギーを感じて、3小節目の1拍目までクレッシェンドしましょう。fではなく、mfにも注意して下さい。また、他のメンバーにテンポ、音量、ニュアンスを伝えるのも、コンサートマスターの役割です。ブレスのタイミングに気を付けましょう。第一印象というのはとても大事ですね?気持ちを最初のタタターンに集中して下さい。また、この曲の基本的な「ノリ」は、ターンタターンタです。1拍目と4拍目の2分音符と、3拍目と6拍目のスタカートの長さをきちんとそろえて、生き生きとした感じが出せるようにしましょう。5小節のアウフタクトから、メロディーが2番トランペットに移ります。3度上でしかもpでメロディーとうまくハーモニーを合わせるのは大変難しいです。普段からのトレーニングが大切です。このあとも、メロディーが二人のトランペット奏者の間を行ったり来たりします。そのステレオ効果のおもしろさを感じて演奏しましょう。二人のニュアンスを合わせることも大切です。
この曲集はすべて、最後の所に全員で和音を吹くようになっています。この際には、和音のバランスに気を付けて、大きくなりすぎないようにしましょう。ハーモニーはピラミッド型が一番綺麗に響くのです。また、自分が和声上の何の音を吹いているのか、理解しましょう。


His Rest(休息)Slow

 この曲もトランペット一人で出るようになっています。しかもそれが伸ばしの音なので、ホルンの出るタイミングが取りにくいと思います。テンポ感を合わすように心がけて下さい。また最初の実音dの音は、通常何も押さえない指使いですが、12の指使いでやって、少し低めに吹いてみるのも、倍音を合わす上で、有効でしょう。二人のトランペット奏者の技量に差がなければ、この曲はフレーズ毎に交代で吹くのも良いでしょう。


Tell mee Daphne(話してダフネ)Flowing

 この曲は大きく3つの部分に分けられます。最初の8小節は2番トランペットのメロディーに対するオブリガードになります。2小節毎の最初の音がユニゾンになっています。まず、この音を正確に合わせるようにしましょう。次の8小節は、2番トランペット、ホルンと絡み合います。後半ではトロンボーン、チューバも加わってきます。これらの線が1本の糸のように繋がって聴こえるように、良く聴き合いましょう。音量は決してメロディーより大きくなってはいけません。最後の8小節は、1番トランペットがメロディを吹きます。少し遅めのテンポで、意味ありげにしかし淡々と、遠くから聴こえてくるようなイメージを持つと良いかもしれません。


A Toye(おもちゃ)Jauntily

 Jauntily(陽気に)と書かれているようにこの曲は、ターンタターンタのリズムに乗って軽快に演奏して下さい。全員が裏拍をきちんと感じることがリズムに乗る上での基本です。8小節毎の音楽の変化を感じるようにしましょう。25小節からはトロンボーンと掛け合いになります。このリズムをきちんと合わせるようにしましょう。音が高くてきついところは、音楽的にも一番良いところです。そこを頑張らないといけません。ですが、丁寧さ・冷静さを失わないように、最後のハーモニーを、綺麗に合わせましょう。


His Dreame(夢)Relaxed

 この曲も出来れば交代で吹くのがよいと思います。5小節目の転調が美しいです。呼吸を合わせて、pで丁寧に吹きましょう。12小節目、低い音をpでタンギングするのは、なかなか難しいです。唇を柔らかく保って、少ない息でも反応するように、普段から心がけましょう。


The New Sa-hoo(新しいサフー)Brisk

 Brisk(活発に)とあるこの曲は躍動感あふれるフレーズで出来ています。音が上昇するときに、音量も、そして気持ちも昇ってゆきましょう。しかし、体の重心が浮いてしまっては、しっかりとしたクレッシェンドは出来ません。また、この曲にはダブルタンギングが有効です。12小節目は、ターカタカターンと発音すると、易しくなります。


【まとめ】 
 ここまでくどくどと私の感想を書いてきましたが、参考にはしても、鵜呑みにしてはいけません。アンサンブルはあくまで、君たちが主体だからです。君たちが実際演奏してみて、肌で感じた感覚を大切にして下さい。それから、音楽は一人でつくる物ではありません。意見の食い違いがあるから良いのです。決して誰かが暴君になってはいけません。演奏する喜びを大切に!!


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