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「みんなのうんち展」のおもしろさ
展示企画顧問 岡田節人 (JT生命誌研究館館長・京都大学名誉教授・元岡崎国立共同研究機構長)
私は子どもの時からムシが大好きだ。
これまでいろいろなムシを追いかけてきたが、なかでも動物のフンをエサにしている糞虫の一種、
センチコガネの美しさはいまでも私を魅了してやまない。
京都近郊のウシなどを飼っている農家や公衆便所に、このセンチコガネムシをさがしにでかけたものである。
京都の北のものは紫色に近い。京都の南のものは真緑で、奈良あたりまで行くとそれがルリ色のものになり、
とくに真緑のものは美しく、しかもなかなかいない。
最近は、家畜を飼う農家もめっきり減り、公衆便所も水洗化されて、この美しいムシもずいぶんと減ってしまった。
さて、センチコガネのように息を呑むほど美しいムシが、「うんち」を食べなければ生きていけないムシなのである。
そうするとこのムシはいったい「きれいなムシ」といっていいのか、それとも「きたないムシ」なのか。
「うんち」を食べるか食べないかは別にして、生き物はみな「うんち」をしなければ生きてはいけない。
「うんち」をきたないというのであれば、すべての生きものはきたないのだろうか。
そうではないよ、と言っているのがこの「みんなのうんち展」である。常識的にみてこの「みんなのうんち展」はきたない話である。
しかしきたない話は総じて滑稽である。
だからこの展覧会は子どもだけではなく、おとなにとってもおもしろい。
でもおもしろいだけではだめだと思う。勉強や科学をおもしろくしようというのが昨今の流れだけれど、
もっとそれを突き抜けて勉強や科学は滑稽で、抱腹絶倒でなければいけないと思う。
とくに科学する心とは、人間の感受性や精神の豊かさと深くつながっている。
人はうんちの中にセンチコガネをさがしに行く生きものなのだから。
私は「みんなのうんち展」にそのようなことを期待している。
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http://www.jade.dti.ne.jp/~cdi/u/suisen.html
from 20010722 CDI, last update 20010723 1350 makita@CDI