
何の因果か「船の旅」
其の五/裸のおつきあい。
いやー、風呂の話ばっかりしてますが、まだ続きます。すみません。
この船に乗る団体さんは、日本人ばかりではありません。
「アメリカツアー」とか、アルファベットの記号+数字のツアー名の
中国からとおぼしき団体さんも結構一緒になります。
関西国際空港から日本に戻ってきたらしく、
「KIX」の札の付いたトランクなど、大きな荷物を持っているのが特徴です。
彼らがなぜ、大阪からわざわざ別府を経由して帰国するのかは、
今のところ、事情を知りません。そのうち判明したら、また書きましょう。
大浴場で、その一行の人たちと一緒になると、ちょっとした異文化体験です。
例えば、あるときの、ある人。
洗い場で石鹸をとろうとしてぶつかってしまったので、
私が「すみません」と言ったら、
まったくの無言+無表情でこっちを向いてきた。
ここで、「あ、中国の団体さんの人だ!」と初めて気づいた私。
「うわー、これって話に聞く、本場中国の対応っぽいわあ」と感動しました。
(私は中国にも香港にも行ったことがないので)
この人は、終始無言で、湯舟にもゆっくり浸かって、
“資生堂公司”とかなんとか漢字ばかり書かれたビニール袋に
お風呂道具を詰めて、去って行きました。
例えば、別のあるときの、別のある人。
いきなり、ブラジャーとパンツを着けたまま入ってきました。
入り口の引き戸を閉めてくれなかったので、私が閉めました。
彼女は洗い場に立つと、すぐに下着を脱ぎ始め、
脱いだ下着を、ゴミを入れる三角コーナーに突っ込みました。
え・え・え・え〜? 硬直する私。
彼女の方を見ないようにしていたのですが、あれ?
……呼ばれたようです。
……ああ、カランのお湯が止まらない、と。
はいはい、止めますよ。
Thank you. と言葉が返ってきました。
ついでに、「下げるとカラン、上げるとシャワー、真ん中で止まるよ」と説明しようとしたら、
頭の中がドイツ語漬けで(まだ初級だけど)、すっかり英語が怪しくなっていて、
unter …… おっとっとunder だべ、uber (uの上にウムラウト)ちがった up たい と、
訳がわからないことをしゃべってしまいました。恥ずかし。
(冷静になって考えてみれば、UPとDOWNだけで事は足りるっちゅーの。トホホ)
彼女は、湯舟に浸かることなく、というか湯舟に目もくれず、
あっと言う間に身体を洗って出て行ってしまいました。
話は変わって、次は日本人、それも赤んぼ。
母親にだっこされて湯舟に浸かっていた赤ちゃん、
愛らしいので、みんなの注目を浴びています。
それを知ってか知らずか、おいしそうに湯舟のお湯を飲んじゃってます。
母親は横を向いていて気付いていないようでした。
それを見ていた、私の隣で湯舟に浸かってたオバチャンが
「赤ちゃんって、よくお風呂のお湯を飲んじゃうのよね。ね?」
とワタシに同意を求めてきました。
し、しりませんってば。
そういうもんなんですか、みなさん?
(この件の後日談は、こちらへ)
冷静になってみると、子持ちに見える歳なんでした、俺も。しみじみ。
(26,29.Nov.1998)
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