第4回 炭からわかる旧石器時代の三芳 |
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遺跡からは、土器や石器などのほかにも、太古の昔に暮らした人々の様々な痕跡が見つかります。木や草が燃えて残った炭もそのひとつです。炭を科学分析にかけることで、当時の暮らしの様子や自然環境が詳しく分かります。 先月お伝えした藤久保東遺跡でも、火を燃やしたと考えられる場所が見つかり、そこから細かな炭が大量に見つかりました。
それはいつ使われたのか まず、この火はいつ燃やされたものなのでしょうか。その疑問を解決するために、炭の年代を測定できる「放射性炭素年代測定」という自然科学分析を行いました。結果、この炭は約3万年前のものである、つまりこの場所で火を燃やしたのは約3万年前だということが分かりました。 炭からよみがえる当時の風景 では、この炭はなにを燃やして出来たものでしょうか。自然科学分析では、炭の断面を顕微鏡で観察することで、その種類を推定することができます。結果、炭の多くはコナラ属コナラ節の木材であることが明らかになりました。 遺跡から見つかった炭を細かく分析することで、約3万年前、藤久保東遺跡周辺にはコナラなどの木々が育ち、人々はそれらを燃料に火を起こして暮らしていたことが分かりました。 こうした発掘現場で得られる様々な調査結果をひとつずつ積み重ねることで、太古の三芳の姿が少しずつよみがってくるのです。 |
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~~~~~~~~~~ 深掘り解説 ~~~~~~~~~~ |
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当時の風景をよみがえらせるカギのひとつ、自然科学分析 町内の発掘調査では、炭の放射性炭素年代測定・樹種同定以外にも、地層の年代を推定したり、当時の植生や環境などを復元するため、現場で採取した土を試料として様々な自然科学分析を行い、その結果を発掘調査報告書の中にまとめています。 1.火山灰分析・・・・・・地層の中には、富士、箱根、浅間、榛名など関東地方とその周辺の火山、中部地方や中国地方さらには九州地方などの火山に由来する火山灰が多く含まれています。その中には噴出年代が明らかになっているものがあり、その火山灰が発掘現場で採取した土に見られるかを分析・測定し、地層などの年代を推定します。 2.花粉分析・・・・・・・・土の中に分解されずに残っている花粉を顕微鏡で見つけ、分析することで当時の植生や環境を復元します。 3.植物珪酸体分析・・植物珪酸体は、植物の細胞内に珪酸が蓄積したもので、植物が枯れた後もガラス質の小さな化石となって土の中に半永久的に残っています。植物珪酸体分析は、この小さな化石を発掘現場の土などから見つけて分析するもので、イネ科植物の同定や、当時の植生や環境を推定することができます。 黒曜石の来た道 黒曜石は、その加工しやすさや切れ味の鋭さなどから、石器の材料としてよく使われた石です。しかし、どこでも採れる石ではなく、採取できる場所(原産地)が限られています。また、同じ黒曜石でも原産地によってその構成成分が異なるため、その特徴を活かし、それぞれの原産地の黒曜石と発掘現場で見つかった黒曜石で作られた石器を蛍光X線法という方法で測定・分析することで、その黒曜石はどこから来たのか、当時の人やモノの動きを推定することができます。 町内の発掘調査でも黒曜石で作られた石器がたくさん見つかっており、黒曜石の原産地推定分析も数多く行っています。これまでの分析からわかってきたことについては「みよし文化財だより」にまとめましたので、あわせてご覧ください。 「黒曜石の石器が見つかった! Part.2」(『みよし文化財だより』令和2年3月号) |
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(『広報みよし』令和2年7月号掲載分を加筆修正) |