何の因果か「船の旅」
其の弐/台風をやり過ごした、やり手の船長。

   10月17日土曜。台風は九州を縦断し、瀬戸内海に接近しかけていました。
   大阪まで来たはいいけど、
   ひょっとしたら、帰りの便は欠航になるかもしれない……。
   心配になって、正午すぎ、関西汽船に電話をしました。
   すると、関西人バリバリのお兄さんが明るい声で言うのです。
   「出ますよー。何時に着くか分かりませんけど
   ほんまかいな。何時に着くか分かりませんって……どーゆこと?

   夕方、半信半疑でフェリーターミナルに到着。
   夕食のお弁当とともに、長丁場に備えて、朝食のパンも用意しました。
   船の中のメシは高いし、選択の幅が少ないじゃないですか。
   だから、いつも行きは私が弁当をつくっておき、
   帰りは相方が、阪急百貨店の地下か灘波の高島屋の地下で
   食料を調達してくるというシステムになっているのだ。
   腹が減っては戦ができぬ って言うじゃありませんか。

   さて、ほんとに、船は定刻に出発しました。
   船長M氏の朴訥なアナウンスが聞こえます。延々しゃべってます。
   「本日は関西汽船をご利用いただきありがとうございます」に始まって、
   「島陰に入って、台風を避けながら進みますので、
    到着時刻は大幅に遅れますが、ご了承下さい……(うんぬん)」
   ええ、了承していますとも。

   瀬戸内海はそもそも波が静かなことで知られていますが、
   神戸を過ぎてもまだ揺れは来ません。
   さくっと飯を喰い、さくっと風呂を浴び、
   なーんだ♪と油断しきった瞬間、「オーッ!」
   転びそうになりました。
   せっかくの大浴場も「危険」ということで、封鎖に。
   船酔いしては大変です。
   布団に潜り込んで、身体を船に任せる体勢に入りました。布団に入ると、
   「ただいま船が“動揺”しております。足元などにご注意ください」
   という船長のアナウンスがあり、
   こんな場合にも“動揺”という言葉が使えるのかと、感心しました。
   いやー、揺れる揺れる。
   揺れに身を任せている内に、
   いつの間にか眠りこんでしまいました。

   目が覚めると、別府港でした。なんと定刻通りに到着していました。
   四国行きの船が軒並み欠航する中、
  この船だけは定刻出発、定刻到着を
  成し遂げてしまったのです。
   いやーびっくり。

   以来、M船長のときは、まさに大船に乗った気持ちです。
   実際、大きな大きな船なんですけどね。

   (20,26.Nov.1998)


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