ある非日常・5

公私邸へ向かう途中の道で、リュミエールはヴィクトールに呼び止められた。
またしても、誕生日のプレゼントである。日頃世話になってる礼も兼ねている、とのことで、リュミエールの方は特に世話した覚えは無いけれど、さほど不思議には思わなかった。
「その、いろいろお世話になって居ながら、こういうきっかけでも無いとなかなか照れ臭くて礼も言えませんので・・・。」
そう言って差し出されたものは、ハーブクッキーの詰め合わせだった。
お茶の時間も近いので、リュミエールは私邸で一緒にお茶を飲もうかと誘ってみた。一緒に私邸に向かうのであれば、この抱え込んだプレゼント達を少しは持ってもらえるかもしれない、という思惑もあったのだが、ヴィクトールはジュリアスに呼ばれていたので断られてしまった。

大量の、というか、持ちにくいプレゼントの数々を抱えて、リュミエールは私邸まで戻って来た。
手がふさがってて呼び鈴が鳴らせず、かと言って大声で人を呼ぶなどリュミエールにはちょっと出来なかったので、庭の方から回ることにした。すると、テラスではオリヴィエとルヴァが待っていた。
「は~い、お邪魔してるわよ。って、ちょっとリュミちゃん、大丈夫?」
オリヴィエは、プレゼントを抱えてヨタヨタと歩いて来るリュミエールの姿を見て、急いで近よって荷物をあらかた持ってくれた。
「ああ、オリヴィエ、助かりました。」
「もう、誰よ?こんなにプレゼント持たせたのは。」
「あの・・・それが・・・いろいろな方から戴いてしまって。」
「まったく、渡し方に配慮ってもんが足りないわ。」
そういうオリヴィエはプレゼントを渡しに私邸まで来たらしい。テーブルの上に、プレゼントと思しき包みが乗っていた。ルヴァも同類のようである。
オリヴィエはとりあえず、鉢植えとライトアップセットを近くにあった台の上に置き、クッキーと「われもの」の箱をテーブルの上に乗せた。楽譜も取り上げようとしたが、これはリュミエールが大切そうに、かつ、しっかりと抱えていたのでそのままになった。
リュミエールが椅子に掛けると、二人はプレゼントを差し出した。
「はい、リュミちゃんにぴったりのシャンプーだよ。」
「あ~、私からはですね~、紅茶の葉です。とても良い香りなんですよ~。」
「ありがとうございます。早速、この紅茶とクッキーでお茶にいたしましょう。」
リュミエールのその言葉を聞いて、それまで近くで固まっていたメイドが我に返って、素早くお茶の支度を行った。その間にティムカからのプレゼントを開けてみると、箱にはティーカップが入っていた。白地に濃淡の青で控えめに柄の入っている、なかなか奇麗な一品であった。早速、そのカップを使うことにして、オリヴィエがメイドに追加指示を出した。
そして、楽しいお茶会が始まった。

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