L&A探偵物語

<CHAPTER OF BIRTHDAY SPECIAL-2>

アンジェがお茶を、アリオスが花瓶を持って戻って来た。
すかさず、オスカーがアリオスに細長い箱を差出す。
「何だ、これ?」
開けてみたアリオスは、中から出てきた高そうなネックレスに目を丸くした。
「どっかの女に贈るものを間違えて持ってきたんじゃねぇか?」
「いや。これは正真正銘、俺の女神様宛てのプレゼントだ。」
「……だから、誰がお前の女神様だ、って。」
箱を握り締めて小刻みに震えているアリオスに、オスカーは微笑みを浮かべて人差し指を向ける。
しばらくそのまま言葉も出ずに震えていたアリオスだったが、ふと何かを思い付いて、自席でお茶を飲んでいるレヴィアスの元へ寄っていった。
「なぁ、これって真珠か?」
いきなり目の前にネックレスを突き付けられたレヴィアスは、面倒くさそうにそれを見つめると、カップを置いてアリオスの手から箱ごとそれを取り上げた。
当たる光の方向を変えたりしながらネックレスを観察したレヴィアスは、それをアリオスの手に返すと答えた。
「本物の真珠だな。色も粒も揃っているし、30万は下らないだろう。」
その金額に、当事者とセイランを除く者達は目を丸くして自慢気に笑みを浮かべているオスカーを見た。
「フッ、女神様に贈る品となればそれなりの物を用意しなくてはな。」
そんなオスカーの様子に目もくれず、アリオスはレヴィアスに念を押した。
「本当に、高いんだな?」
レヴィアスはしっかりと頷く。それを見て、アリオスは営業用スマイルを浮かべてオスカーの方を振り返った。
「サンキュ。ありがたく貰っておいてやるよ。」
いきなり態度が変わったアリオスに戸惑いを覚えながらも、オスカーはそれを押し隠してウインクを返した。アリオスは内心「やめろ~」と思いながらも、表面上は営業用スマイルを保持する。
「どういう風の吹き回しだい?」
横からセイランが代表して質問を口に乗せた。その顔は「高いものなら何でもいいのかい?」と語っている。
「こういうのは換金しやすいからな。」
貰ったものはどうしようと勝手だろ、と言わんばかりの態度に、オスカーの笑顔が曇った。
「そりゃないだろう?」
肩を落とすオスカーにアリオスの態度は冷たかった。大体、彼は招かれざる客なのだ。すぐにも追い出したかったのに、レヴィアスが面白がって引き止めたのをいいことに居座られた所為で受けた精神的苦痛の慰謝料の一部として換金させてもらっても罰は当たらないだろう。
「クスクス。やっぱり、贈り物は相手を見て選定しなくちゃいけないってことだね。」
セイランはがっかりするオスカーを見ながら、心の中で「予算半分で『お米券』とかを大量に贈った方が喜ばれたんじゃないかな」と呟いた。
すると、セイランの言葉にアンジェが表情を曇らせた。
「どうかしたか?」
不安そうな顔をするアンジェをアリオスがそっと覗き込んだ。
「あの、これ。気に入ってもらえるか解らないけど…。」
アンジェはおずおずと抱えていた包みを差出した。セイランの言葉に、アリオスに気に入ってもらえないんじゃないかと不安になってしまったのだ。
「えぇっと、その…、お誕生日おめでとう。」
「サンキュ。」
作り物ではない笑みを浮かべてアリオスは大切そうに包みを受け取り、丁寧に包装を解いた。
「…ママさんエプロン?」
「今使ってるの、だいぶ痛んできてたみたいだったからちょうどいいかと思ったんだけど…。」
やっぱり気に入らなかった? と顔に書かれたアンジェに、アリオスは内心溜息をつきながら、それでもその気遣いと目の付け所に感心した。見てないようで結構見てるんだな、と。
「有り難く使わせてもらう。」
そう言って早速その場で新しいエプロンに着替えたアリオスに、レヴィアスとセイランはその胸元のイラスト見て笑い声を上げた。
「ネギ…。」
その盛れ聞こえた言葉の意味が解った者は、本人達以外ではアリオスだけだったらしい。

-CHAPTER OF BIRTHDAY SPECIAL 了-

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