L&A探偵物語

<CHAPTER 4-4>

レヴィアスの一声で、アルヴィースの者達は最善の策を打ち立てて動き始めた。
即座に輸送ヘリが飛び、必要な人材や機材が次々と現地に送り込まれ、上層部から手が回って現場にいる余計な人間達が遠ざけられた。もちろん、野次馬もあっさりと追い散らされる。
現場についたアリオスは、ショナの指示に従って特殊液剤を土砂に染み込ませ、示されたポイントに電気コード付きのナイフを打ち込んで行った。
「始めるよ。」
ショナはボソッと呟くように言うと、土砂に電気を流し込んだ。それにより、土砂が固まっていく。トンネルの反対側でも、ルノーとカーフェイが同様の事をしていた。
「これで、穴を開けても崩れないよ。」
再びセンサーで土砂の具合を確認したショナの保証を受けて、ウォルターとゲルハルトが土砂の真ん中に穴を開けていく。
「おっ、もうちょいだぜ。」
「慎重に、ってか?」
「意味わかって言ってんのかよ。」
「いや、全然わかんねぇ。ガハハ…。」
そこで、彼等の役目は終わった。最後の詰めは、慎重にやらないと中の者達が危険である。
彼等が使っていた掘削機より威力の弱い機材を渡されて、アリオスは薄く残った土砂を掘り抜いて小さなトンネルを開通させた。

土砂から離れているように指示されたアンジェ達は、外からの声が聞こえる方向をずっと見遣って救助の手を待っていた。
そして、ついに光が差し込んで来た。太陽かと見間違う程の光。それは作業用のライトだったが、それに照らされてアリオスのシルエットがアンジェの目にハッキリと飛込んで来た。
「ここから外へ。落ち着いて、1人ずつだ。」
アリオスの誘導とレイチェルの仕切りで、まずは友人達が次々と外へ出て、続いて運転手が脱出する。そして最後にアンジェとレイチェルが脱出した。
「ワタシ達がさっさと脱出したら、後の人が助けてもらえなくなっちゃうかも知れないものネ。」
アリオスは、レイチェルの言葉を否定し切れなかった。それでもアンジェを自分より先に逃がすあたり、レイチェルはアンジェの事を本当に大切に思っているのだろう。アンジェはレイチェルを先に逃がそうとしたのだが、「アナタが逃げるまでワタシは動かないヨ。」と言い張るレイチェルに、彼女を早く脱出させるためにも残りが自分達だけになったところで急いで外へ飛び出した。
「アリオス~。ヒック、ヒック…。」
助かって、ホッとして気が抜けた途端、アンジェは泣き出してしまった。
「ずっと、気を張ってたんだな。」
アリオスは、ペタンと座り込んで泣いているアンジェの元へ屈み込むと、抱き寄せて背中や頭を優しく撫でた。もう大丈夫だからと安心させるように抱き締められて、アンジェはゆっくりと泣き止んでいった。
それを待っていたかのように、レヴィアスが2人の元へ歩み寄って来た。
「どうやら、無事なようだな。」
「レヴィアスさん…。」
アンジェは顔を上げると、慌てて残った涙をゴシゴシと拭って立ち上がった。
「助けていただいて、ありがとうございました。」
そう言って深々と頭を下げてから、アンジェはレヴィアスに問いかけた。
「どうしてここまでして下さったんですか?」
「アリオスが泣いて頼むのでな。」
楽しそうに答えるレヴィアスに、アリオスは即座に反論した。
「誰が泣いたって? 俺は、見返りが必要だってんなら望みを言え、って言っただけだ。」
それを受けて、レヴィアスは思い出したように言った。
「では、泣け。」
「……は?」
「何でもする、と言ったではないか。ならば、今ここで泣け。」
面白い出し物でも始まるかのような顔で言われて、アリオスはグッと言葉に詰まった後、再び反論した。
「こいつに興味が湧いたからって、自分の意志で助けたんじゃなかったのかよ?」
「ああ。そうだったな。」
そう言うとレヴィアスは、アンジェをアリオスの手から奪い取った。
「それでは、もっと間近で観察させてもらうとしよう。」
アンジェを巡るアリオスとレヴィアスの新たな戦いがここに始まったのであった。

-CHAPTER 4 了-

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