L&A探偵物語

<CHAPTER 4-3>

アンジェとの電話の後、アリオスはニュース速報でレヴィアスがアンジェに知らせたのと同程度の情報を確認した。レヴィアスが言ったように、救助には時間が掛かりそうだ。
「ったく、これだからお役所ってのはっ!!」
とりあえず、匿名でアンジェ達の状況を知らせてはおいたが、あまり役には立たなかったらしい。方針とやらを話し合ってばかりで、全然動きが見られない。
「レヴィアス。」
何か思いつめたような顔で声をかけたアリオスに、レヴィアスは先を促すような表情を向けた。
「アルヴィースの総力を結集したら、アンジェ達をすぐに救出出来るか?」
「総力など結集せずとも、容易いことだ。」
涼しい顔で、レヴィアスは頷いた。国の機関やら報道関係の上層部に手を回して邪魔者を追い払い自由に動ける環境を作り上げ、数名の部下と必要な機材を現地に送り込むだけで事足りるだろう。
「だが、そこまでする義理は無いな。」
確かにアンジェは知り合いではあるが、彼女がどうにかなったところで財閥には何のデメリットも無い。レヴィアス個人としても、そこまでして彼女を助けることに大したメリットがあるとは思えなかった。
「我等は慈善事業をやっている訳では無い。」
「動くからには見返りが必要って訳か?」
「そういうことだ。」
平然と言ってのけたレヴィアスは、アリオスが唇を引き結んで拳を握りしめている様子を見ても表情一つ変えなかった。どれほど吠えたところでたかが小娘1人のためにアルヴィースの力を使ってやる気になどなるものか、と冷ややかにアリオスを眺めていた。
だが、しばしの沈黙の後にアリオスの口から出た言葉に、レヴィアスは僅かながらも驚きの表情を浮かべた。
「何が…望みだ?」
アリオスは、押し殺したような声で確かにそう言った。
「言えよ、レヴィアス。何が望みだ?」
「アリオス?」
驚くレヴィアスに、アリオスはデスクに手を叩き付けて詰め寄るようにして続けた。
「俺が持ってるものなら何だってくれてやる! 出来ることなら何でもするぜ!!」
「お前…。」
「それで確実にあいつを助けられるって言うのなら、俺は悪魔に魂を売り飛ばすことだって厭わない。」
そこまで言い切られたレヴィアスは、しばし面喰らったような表情を浮かべた後、突然笑い出した。
「何が可笑しい!?」
憤慨するアリオスに、それでもしばらくレヴィアスは笑い続けた。
「まさか、お前があの小娘のためにそこまで言うとはな。どこがそんなに気に入っているのやら。」
「そんなのお前の知ったことかっ!!」
レヴィアスは、笑いを押さえ込むようにしながらアリオスに向き直った。
「本気で言っているのか?」
「冗談でこんなこと言えるかよ。」
アリオスは、レヴィアスを睨みつけた。
「さぁ、言え。何が欲しい? 俺に何をさせたい?」
アリオスはレヴィアスを睨んだままそう言った後、軽く目を伏せて声を絞り出すように続けた。
「どうすればお前はあいつを助けるのに力を貸してくれるんだ?」
そんなアリオスの様子に、レヴィアスは笑うのを完全にやめてしばらく観察するような目で彼を見つめた後、ボソッと呟いた。
「なるほどな。どうやら本気らしい。」
それから、レヴィアスは秘宝でも見つけたような表情を浮かべてアリオスに告げた。
「あの娘に興味が湧いた。」
「……はぁ?」
「我の意志により、アルヴィースはその持てる力でアンジェリーク・コレットを救出する。」

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