L&A探偵物語

<CHAPTER 4-1>

巷は修学旅行シーズンとなり、アンジェの通うスモルニィ学院もこの時期に修学旅行が予定されていた。そんな中、アンジェはなかなかに恐ろしい台詞をレヴィアスに残して、修学旅行に出かけて行った。
「私が見張ってないからって、あまりアリオスを苛めないで下さいね。」
「面白い娘だ。」
レヴィアスはアンジェが出ていくのを見送りながら目を丸くした後、しばらくして感心したような呆れたような様子でボソッと呟いた。どうやらアンジェは、自分がいる時の方がそれをネタにアリオスがより一層レヴィアスに遊ばれている、という事実に気付いていないらしい。
「面白いからって、言われた通りに俺に優しくする気なんかねぇんだろ?」
「ある訳なかろう。」
急に夕食のメニューを変更させられて台所で孤軍奮闘しながら聞くアリオスに、レヴィアスは即答した。
それを聞いて、アリオスは何故かホッとしていた。
これから5日間、アンジェと会えなくなるのだ。アンジェと出会う前の生活環境に戻るだけではあるが、毎日のように事務所に顔を見せていたアンジェが来なくなると思うと、何だか寂しい気がしてならなかった。それなら、いっそのことレヴィアスの我が侭でやたらと忙しくなっている方が気がまぎれようというものだ。
「あの娘が手伝ってくれないからと言って、手抜きをすることなど許さぬ。」
「へいへい。」
レヴィアスの大変ありがたいお言葉に、アリオスは苦笑しながら応えたのだった。

修学旅行初日。宿に入ったアンジェ達は、消灯までの自由時間をお喋りをしながら過ごした。
そして話題はいつの間にか好みの男性のこととなっていた。結局、普段教室で顔を寄せあっている時と大して変わらないのだが、普段より内容が深く聞き方が執拗になって来る。恋人がいるならどんな人なのか、フリーの場合はどんなタイプが好きなのかなどを根掘り葉掘り聞かれるのだ。
「アンジェは付き合ってる人居るんだよね?」
他の子が話しているのを他人事のように聞いていたアンジェに、突然話が振られて泡を食った。
「え~っ、いつの間に~? ねぇねぇ、どんな人? どこで知り合ったの?」
先生達の目を盗んで男性と付き合うのは簡単なことではない。知り合えるチャンス自体限られている。アンジェのように寮に入っているとなると、それは更に限定されて来る。
「街でナンパされたとか?」
思い返すとそれに近いかも知れない状態だったが、アンジェは正直にアリオスとの出会い方について告白した。但し、養女云々の下りだけはレイチェルがうまく誤魔化してくれる。
「へ~、大変だったんだね。」
「でも、おかげで彼氏ゲットか。」
ルームメート達は、楽しそうに笑った。
「で、どこまでいってるの?」
「えっ、どこって…、商店街までかな? 一緒に買い出しに出かけたりして。でも、大抵は私が放課後に家事をお手伝いしに行って、あちらでお茶飲んで帰って来るだけよ。」
間違ってはいない。そんな付き合い方だからこそ、後見人になっている叔父も公認の仲なのだ。だが、それは彼女達に大いなる誤解を与えた。
「それって、彼女って言うより家政婦じゃない?」
「そうそう。そんな奴とは別れた方がいいよ。便利にこき使われて捨てられるのがオチよ。」
そう言って詰め寄られてオロオロするアンジェに、レイチェルが助け舟を出した。
「あはは…。そんなんじゃないから大丈夫だヨ。ただ、ちょっと相手の家庭の事情で普通のデートが出来ないだけだから。それに、いざって時には凄く頼りになるしね。」
まさか、レヴィアスの目の届かないところでのデートが禁止されているからとは言えまい。あの時アンジェに無理矢理ついて行ったレイチェルは、アンジェが気付いていない様々な裏事情まで精通してしまったのだった。
「ふ~ん。レイチェルが認めた相手なら、大丈夫かな。」
「いざって時に頼りになるなんて、やっぱり年上の彼氏ならでは、ってやつ?」
プラス生活環境と背後関係なのだろうが、レイチェルもアンジェも細かいことは黙っておいた。そうこうしているうちに話の中心は移っていく。
「ところで、レイチェル自身はどうなのかなぁ?」
こうして女の子達のお喋りは延々と続いたのだった。

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