3.3 IgGの固定化

W/O/Wエマルションを、DDSに用いるために、腫瘍細胞と親和性のある、タンパク質リガンドを、エマルションの表面に固定化し、その機能について検討した。

 IgGは多くの腫瘍細胞と特異的親和性を有しており、IgGを腫癖細胞に対するリガンドとして利用することを着想した。また、腫瘍細胞の表面では糖脂質が増加すると言われており、糖脂質と特異的親和性を有するCon Aにも着目した。こうして、IgGおよぴCon Aをリガンドに選択して、それらをエマルション表面に固定化して、それらの表面修飾エマルションについて、その固定化量や機能について検討した。

 IgGの固定化には、固定化の媒介剤として、IgGのFcフラグメントと特異的親和性があることで知られている、ブロテインAを、まずエマルション膜表面に二次乳化法で固定化した。その後、IgGをそのプロテインA固定化工エマルション懸濁液中に投入して、そのエマルション表面のプロテインAとIgGの特異的親和力によってIgGを結合させる、インキュペート法によった。固定化するプロテインAは、産生する黄色ブドウ球菌の紬胞壁に付着したままの、不溶性のもの(パウダー状)を使用した。これは、

(1)水不溶性のものを用いることによって、脂質膜中への取り込みが容易になること、あるいは

(2)黄色プドウ球菌の紬胞壁脂質と、エマルション表面の脂質層の柏互作用により、敢り込みが容易になることを考慮したためである。

こうして、上記の不溶性プロテインAパウダ一を使用することにより、エマルションの表面に固定化されるIgGを、抗原と特異的親和性があるように、Fabフラグメントを外側に向けて固定化することが可能になる(図6参照)。また、この固定化法は、IgGに疎水基を結合させるなどの修飾を必要としないため、結合時の抗体活性の低下を防げるといった利点がある。

図6 ブロテインAを介してIgGを固定化したエマルションの模型図

 ゲルフイルトレーションの測定結果、W/O/Wエマルション1gあたり1.0mgのプロテインA、およぴ、0.5mgのIgGが固定化できることが分かった。また表3に示すように、プロテインAを媒介としない合はIgGは固定化できない。しかし、IgGの固定量は、プロテインAの固定化量を増すことにより(ブロテインAパウダー濃度を高くすれぱ、その固定化量は増す)、増加させられることも分かった。

図7 プロテインAを固定化した超微粒子型エマルションのゲルクトマトグラム:(●)超微粒子型エマルション系:(○均相水溶液系):peak (a) エマルションに固定化されたプロテインA:peak(b)外水相中に遊離したプロテインA

*)二次乳化法によって聞定化すろブロテインAの仕込1:**)インキュベート法によって聞定化すろ18Cの仕込1との聞定化卒

図8 ANSでラベルしたCon Aの固定化を示す蛍光位相差顕微鏡写真

表3


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