4. システムの構築と演奏インターフェース

  全てのシステムは、3台のデスクトップ・ワークステーション上に分散し、幾つかの部分から構成されている。この構成は開発を容易にし、リアルタイム使用に必要とされる各ワークステーションのCPU負荷を、小さくすることが出来るなど、有利である。数値モデルそのものは、SGI Indigo2 R10000 ワークステーションで計算される。グラフィック・インターフェースとMIDIインターフェースはSGI Indy R4400 ワークステーションで動作する。パラメータの数値はイーサーネットを通じて、Indyから IndigoにUDPメッセージとして送られる。MIDIメッセージは、Macintosh Power PCにシーケンサーに録音するために送られ、Indy には解析されるために、送られる。シーケンサーからシーケンスを返した場合、MIDIメッセージはMacintosh からIndy に直接送られる。

  物理的なモデル作りで、最も興味あることは、どれだけ制御可能であるかということである。我々がインターフェースを開発する場合、そのモデルをどのような方法で直観的に演奏することができるかを知るために、パラメータを変化させることで異なった動きを示すように試みた。グラフィックインターフェースとMIDIインターフェースを組み合わせて、同時に使えるように作成した。グラフィックインターフェースはボタン群、スライド群、そして音波とスペクトルの表示から出来ている。演奏者はパラメータを変更するために、マウスを使うことができる。MIDIインターフェースは、電子キーボード、YAMAHAのMIDIサックスWX7、3つのフットペダル、そして Opcode StudioVision Pro MIDI シーケンサー([Stu95]) からのMIDIメッセージを解釈する。

  MIDIコントローラを使うことで、奏者はリアルタイムに、ヴァルブポジションと同じように、口からの圧力、唇の弾性、粘性制動を変更することが出来る。トロンボーンモードではペダルを使って、スライドの長さを操作できる。MIDI機器から送られてきたパラメータ値を展開させて、シーケンサーに録音することが出来る。このことによって、同じパラメータ値を送ればシーケンサーに再生させることが可能となる。さらに、StudioVisionでパラメータ値を、思うままに編集したり変更することができる。

  どちらの可能性もシミュレーションモデルをテストしたり、研究したりする時には、非常に有用である。例えば、実トランペットに、シミュレーションモデルが、どれだけ近づくことができるのかを検証するために、最良の条件で、実際のプロトランペット奏者が演奏したトランペットのフレーズを再現しようと計画した。さらに、MIDI機器のメッセージと音楽センテンスのフレーズを研究するために、MIDIシーケンサーを、グラフィックな補助手段として使うことが出来る。

  この演奏インターフェースを使うことで、画期的な操作が可能となり、我々のモデルの音楽的な品質を強調することができる。まるでアコースティック楽器のように反応し、音質の繊細な動きや大きな動きを許容するため、IRCAMで働く作曲家たちが、このモデルに対して大きな興味を示した。研究する場合にも、リアルタイム制御は非常に重要である。開発の初期段階で、シミュレーションプログラムの新しい改良を、簡単に、早くテストできる手段となる。パラメータ空間を自由に探索することで楽器の可能性と限界の全てを、うまく見きわめることができる。


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