1999.09.22.
キリンジ・TOUR 1999
★ 渋谷・CLUB QUATTRO★

・・・・・そふぃあさん

 今まで自分がキリンジを甘く見ていたことを、思い知らされた 初めての生キリンジでした。深く反省。昨年は忙しくて、どう考え ても物理的にライブには行けなかったのですが、「P.D.M.」を聞く 限りでは「這ってでもライブに行ってやる〜!」とまで思えなかっ たのも事実。今回もライブ前は割と落ち着いていて、カウンター席 空いていたら座ってゆっくり楽しみたいなあ、などと思っていた ら…。

 明かりが落ちて「V.I.P.」が流れる。泰行さんのシルエットが ステージに浮き上がって、オープニングは予想通り「Drive me crazy」。予想していなかったのは客の反応で、一気に後ろから詰 められて密度上昇!腕が、歓声が沸き上がる。その様子に心なしか 泰行さんも満足げで、ヴォーカルもリラックスして楽しそう。
「ニュータウン」では高樹さんが自分のヴォーカルパートをきっち りこなす。札幌でインストアライブを観た時は、「ひょっとして 高樹さんはコーラスをやりたくないのだろうか?」と思う様子が あったが、今回は各曲でちゃんとコーラスを担ってくれていた。 メドレーで「恋の祭典」につなぎ、オープニングから「野良の虹」 まで間を空けない演奏のスムーズな流れに、がっちりとライブに 引き込まれる。
「双子座グラフィティ」「BBQパーティー」「五月病」と泰行さんの 曲が続く。(「双子座」のHandclapは練習しておくべきでした。私 は思いっきり間違ってしまいました〜。Handclap部隊の皆様ゴメン ナサイ^^;;)印象的だったのは「BBQ」で、ギター、ベース、ドラム できちんと音が作れてシンプルでストレート。泰行さんの真摯な 姿勢に感動。

 そして「茜色したあの空は」が前半の山場。イントロでいきなり 高樹さんのギターvs.ともさんのパーカッションのバトル!高樹さ んのプログレ風に、ともさんパフォーマンスもアヴァンギャルドに 応戦!高樹さんのギターがこれほど引き出しが多いとは露知らず。 おみそれいたしました。m(_ _)mギター小僧風に見せつけるのと違 って、ちょっと照れながらの技の披露は「まさにディープなナイス ミドル」風(笑)。ギャルを悩殺か!?ともさんは派手なパフォーマン スに注目が集まるが、刻んでいるリズムの表情自体は非常に端正で ルーツにクラシック音楽を感じる。
 さて、まさかキリンジでタテノリするとは思っておらず、「茜色」 の驚きと興奮はしばしさめやらなかった。(以後私の記憶はかなり 曖昧…^^;;)そんな一度ピークに達した客側のテンションを配慮して か、「太陽の午後」「耳をうずめて」にかけてはゆったりモード。 そしてバンドは難関の一つ「牡牛座ラプソディ」に突入。歌詞は すっかり泰行さんの頭に入った模様。高樹さんのコーラスも安定。
 ライブの終盤、特に「冬のオルカ」からは、バンドが泰行さんを 盛り立て、泰行さんがリードしていく形がはっきり出たのでは。 「ダンボールの宮殿」で力を込めて「Ahhh〜」と歌い上げた時、 泰行さん自身一つ壁を越えた達成感を感じていたようで、観ていて 身震いした。続けて気合を入れてギターを弾く姿は文句無しにカッ コイイ!「S@S Tokyo Magazine」のインタビューで「人前ででき るだけ解放されてみたい」と答えていたその方向に、確実に進んで いると思う。ともかく泰行さんがノッテる「風を撃て」は季節を呼 び込む春の嵐のような、ゾクゾクする期待感でしびれた〜!
「銀砂子のピンボール」はまさに「楽しいから素直に手を叩くさ」 の歌詞通り、高く挙げたファンの手のHandclapが小気味よく響く。 プレイヤー、オーディエンス含めたハコ全体のこの一体感こそ、 「ライブ」と呼ばれるものなのかな。

 そしてアンコール。「唐変木のためのガイダンス」を聞かずに 今回は帰れないでしょう。泰「笑いませ」客(アタシも)、泰「急ぎませ」客(さあカレシも)、のかけ合いも自然にきまる。高樹さんの ギターがちゃんとカントリーテイストに聞こえるのはさすが。最後 は「口実」。泰行さん、高樹さん共にステージで踊るタイプではな さそうですし(笑)、いつも手にしているギターを置いて、2人だけ が照らし出される中、ただ「歌を聞かせる」というのはそれなりに 勇気のいることなのでは。泰行さんのヴォーカルは、細部も含めた 表現力という点で勿論この日最高のもの。高樹さんも非常に丁寧に 歌う(ちょっと緊張していた?)。ハーモニーは私の耳では一瞬2人 の区別がつかなくなってしまった(爆)。甘くなりすぎず、淡々とし てそれでいてどことなく厳かな雰囲気が漂って、心地よい緊張感が 締めくくってくれた。

 終演後、大きくため息をついてしまいました。本当に良いものを 観たなあという充実感。今だから言ってしまいますが、インストア で観た限りでは、期待と同じくらいの不安もあったのです(爆)。 演奏のレヴェルやらMCのテクニックどうこうより、そもそもライブ をやりたいのかよくわからない感じがしたので。(勿論CD販売の ためのキャンペーン回りと比較はできないのですが。)

 もともと「キリンジ」の中でライブの位置付けはそれほど意識さ れてなくて、そして「47’45”」で高樹さんはすでに高いレヴェル で完成された独自の世界を持っていることを見せてくれたわけです が、だからこそこれからのキリンジの動向のキーは泰行さんにある ように思います。その泰行さんがキリンジの中での自分の位置をラ イブに確立したのは、今後非常に重要なポイントになるのかしら。 貴重なものを観てしまったかも。
 さらに演出やMCでの掛け合いだけに頼らなくても、十分曲目の 構成とバンドとしての演奏でがっちり客を掴んで、ハコ全体の呼吸 がばっちり合っていったのは本当に素晴らしかった!まさにバンド を下から支えた立川さん&一徳さんはじめ、サポートメンバーの 皆様、本当に良かったです!

 個人的に選ぶベストプレイには、うーん、「風を撃て」とどちら を取るかさんざん迷いましたが、高樹さんの御右手に敬意を表して 「茜色したあの空は」を挙げさせて頂きます。来年はライブの本数 も会場も増えるようで嬉しい限りですが、いざ忙しくなってみてか ら、やっぱり「イヤだね〜」とか2人でハモらないでね(笑)。
 



・・・・・ヘンリーさん

どうしましょう。 困りますね、ここまでいいと。
昨年は昨年でかなりいいライブだと思っていたのに。 今年はそんなもんじゃないんですから。

オープニングは予想通りV.I.P。
前回ほどのドキドキはなかったものの、あの見えそで見えないカーテンが ストンと落ちた瞬間の歓声はスゴかった!
一気に興奮が高まりました。
とはいいつつも、1曲目ではいつも通り軽く緊張している私。
しかし2曲目では、ステージ全体が見渡せるようにと けっこう後ろの方にいたにもかかわらず、 すでにかなり心地よくのっている状態に。

今回やっぱり1番うれしかったことは、泰行氏がほんとに 嬉しそうに楽しそうにしていたことです。
そうはいってもまだまだ硬さは残っているのですが。 でも、それは回を増すごとに変わってきますよね。たぶん。
というか緊張するのは仕方ないことです。 でもほんとに今回は泰行氏の笑顔がたくさん見れました。

突然のセッションにはビックリ。でもうれしい!
茜色、汗染みでのともさんのはじけ具合は最高。
双子座のハンドクラップ、すごくいい!!(参加したかったなー。)
恋の祭典ではうっとり。
牡牛座、盛り上がりましたね!
そして口実での高樹氏は、ちょっとビックリするぐらい良かったのですよ。
まだまだいいたいことはたくさんですが、長くなりそうなので。

今回は前回よりぜんぜん演奏の完成度が高く、流れもスムーズ。
そして泰行氏の歌も、高樹氏のコーラス、ギターもかなり良かった。 でも、そんなことは別にいいんです。
心から楽しめたということが1番重要なのです。
でも、そのメンバーもお客さんも楽しめた理由というのはやっぱり 前に書いたようなことからくる、キリンジの自信と余裕からきてるんですよね。

なんか私書いてること硬いですね。

とにかく今は“幸せな時間をアリガトウ”ですよ。

最後になりましたが、これからも泰行氏にはどこか青臭く、 そして高樹氏にはクールなままでいつづけてほしいものです。

★来年のツアーにも期待大!!!★
 



・・・・・銀峰さん

「不在と遍在、永遠と刹那」

 君には恋人がいる。けれど事情があって二人はなかなか会うことが出来ない。 想いだけが募る。牽牛と織女のように? そう、そんな感じ。
 会う前の長く切ない時間。手紙を読み返したり、写真を眺めたり、けれどもその行為は「今、ここに、いない」という不在を確かめる作業に過ぎない。不在を確認し、その存在の大きさを思い、時として存在すら幻想だったのではと足下をすくわれる。 想い、千々に乱れるというやつだ。
 キリンジのLIVEのまえ、君はこんな風ではなかったのか?

 渋谷のPARCO Quattroの階段には、入場券を手に入れることが出来たラッキーガール&ボーイが長い長い列を作っていた。整理券番号の数字が大きくても、入場できるだけでも幸運、そんなことを嘆くのは罰当たりというもの。
筆者の番号はB300の近似値。階段の張り紙によるとBのまえにはAが150番あるらしいから、筆者の前には単純に計算しても450人近くいるというわけだ。時間通りに全員が来るわけじゃないから、と高をくくっていたら、入場した薄暗いClub Quattroはもう、立錐の余地なし。朝の埼京線か東海道線並のラッシュであった。買おうと思っていたバッファローTシャツ(長袖)も既に売り切れ。しょうがないのでドリンクチケットで発泡酒をもらって一息に飲み、フロアに降り立つ。いや、割り込む。

 ステージには紗幕がかかり、時折、小さなライトを持った人が内側を歩いているのが見える。蚊帳の中に蛍を放った風情で、これも演出のうちだとしたら、なかなか風雅な趣がある。
 フロアの天井には二つのミラーボールが鎮座ましましていて、『銀砂子のピンボール』を思い起こさせるが、出番は早々にやってきた。灯りが消えて『V.I.P.』が流れると、ライトを当てられたミラーボールが光の矢を放ち出したのだ。それとほぼ同時に、前方に人が動いた。その場に立っているだけでもう動けないと思っていたのに、つられて二歩ほどステージに近付く。もう、始まってしまうのだ。
紗幕が降りて、いよいよ待ちに待った、キリンジの登場である。

 一曲目は、ザクロの果汁がしたたらんばかりの『Drive me crazy』
 この瞬間を、待ち侘びていたような、始まらないで欲しいと願っていたような。
 始まる、ということは、終わるということだから。

「楽しい時間は今だけ」
 久し振りの恋人との逢瀬の最中に、こんな言葉が君の胸を掠める。
「楽しい時間もやがて終わる」「もう会えないかも知れない」

 渋谷公演の前日未明、台湾を大地震が襲った。束の間の逢瀬を愉しんで、手を振って別れてそれきりになった恋人達もいるのだろうと思うと、胸がふたぐ。だから4曲目『野良の虹』の「桃色のてのひらを振る恋人よ バイバイバイ、グッバァーイ」のところで手を振ったのだ。誰も気付かなかったと思うけれど。その時、「二度とないこの瞬間」を胸に刻みつけようと心に決めた。
 堀込泰行の歌声を、堀込高樹のギターテクを、山口ともの鳴り物を、繊細でエロティックな木管を、珠玉の時間を、二度と消えない刺青のように。

 確かなものなんて何もない。けれどこの一瞬の感動だけは本物。終わらないことは何もない。人生だってやがて終わるし、悲しみも長くは続かない。しかし、終わりは始まりだし、「今、ここにいない」ということは、世にあまねく存在しているということでもある。
 永遠と刹那は等価だ。
 アンコールに応えて再登場して、最後に『口実』を歌った、堀込高樹の上手い下手を超越した立ち姿の確かさだけが、この世界の全てだ。立ち現れては消えていく、世界の一面のそれも一瞬のことだったけれど。

 キリンジ・ツアー1999の名古屋、心斎橋、渋谷の全ステージを観たからといって、充分ということはなく、どこか一カ所しか観られなかったからといって不充分ということもない。矛盾した言い回しに聞こえるかも知れないが、それが実感である。
 ツアーは終わったけれど、キリンジはこれからも続く。一瞬ごと、1ステージごとに少しずつ変化し、成長しながら。
 キリンジのLIVEに立ち会ったことが幻想だったとしても構わない。血が滲むほど心に刻んだ残像だけは、誰も奪えない。
 喩えそれが死だとしても。
 
 

出演‥‥堀込泰行/vocal, guitars
    堀込高樹/electric guitar, chorus

    立川智也/bass
    嶋村一徳/drums
    山口とも/percussions
    松原 博/keyboads
    音川英二/sax, fl
    羽毛田耕士/tp,fr・・・・・・thanks to 一徳's Homepage

Play List
 ・V.I.P(登場時のBGM)
 1.Drive me crazy
 2.ニュータウン
 〜3.恋の祭典
 〜4.野良の虹
 5.双子座グラフィティ
 6.B.B.Q.パーティ
 〜7.五月病
 8.茜色したあの空は
 9.太陽の午後
 10.雨を見くびるな
 11.耳をうずめて
 12.牡牛座ラプソディ
 〜13.汗染みは淡いブルース
 14.冬のオルカ
 15.繁華街
 16.ダンボールの宮殿
 17.風を撃て
 18.銀砂子のピンボール
 -- encole --
 19.唐変木のためのガイダンス
 20.口実


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