1998.10.08.
★「NHKライブビート公開録音」★

渋谷NHK放送センター 505スタジオ

 ●Play List

 1.双子座グラフィティ
 2.雨を見くびるな
 3.水とテクノクラート
 4.太陽の午後
 5.野良の虹
 6.繁華街
 7.五月病
 8.ニュータウン
 9.冬のオルカ
 10.かどわかされて
 11.風を撃て
 12.茜色したあの空は
 13.さよならデイジーチェイン

文/みやもり

 往復ハガキ応募制の公開ライブということもあるのか、制服姿の女子高校生も 目立つ、全体に若い客層。6時半までに来るのは、社会人にとってはかなり苦しい ものはある。
 505スタジオは天井が高く、かなり奥行きのある低いステージが常設されていた。 広さはクアトロ程度はあるのか‥‥でもその1/3はステージ、といった具合。 床はカーペット張り、壁は反響を考慮された木組で落ち着いた雰囲気。 入場時に、ガラス越しのミキシングルームに本日のメンバー発見!泰行氏と、長身のベース立川氏の姿を確認。

 4列目くらいでやや左寄り、一目で堀込兄弟が目に入る好位置をキープ。 すでにセッティング済みのステージに、譜面台がいくつか目立つ。中央にも置かれて いるのを見たのは初めて。泰行さん用?
 時間が近づくにつれ、後ろのほうには業界風の方々が目立ってきた。 思ったより観客も多め、200人近いのでは。

 6時半過ぎ、インストゥルメンタル曲「P.D.M.」が流れ、照明が徐々に落とされる。 ほどなく、左手からバックのメンバー、高樹氏、泰行氏の順で登場。
 兄はかせきさいだぁの「SKYNUTS」のVCで着ていたような、いくつもエンブレムの付いたベージュのアーミー調のシャツ。 下にのぞくオレンジ色はもしかしてキリンジTシャツ?弟は砂色のシャツ&白T、二人ともジーンズは濃いインディゴ。兄のキッチリ分けたヘアスタイルが気になる〜!

 予想通り「双子座グラフィティ」が一曲目。
 スタジオということもあって、音がかなりいい。各パートがよく聞こえてくる。 トランペットとサックスのホーン隊も力強い。演奏がまとまっているのもだけど、 なによりも二人ともよく声が出ている。「ライブに向けて、猛練習中」と聞いていたが、 その成果がすぐに感じられ嬉しくなる。
 安心して曲に身をまかせられるのは、キリンジのライブでは失礼ながら初めてだった かもしれない。耳馴染んだ曲というのもあって、リズムに乗って楽しんだ。
 続いての「雨を見くびるな」は、フルートの導入部が印象的。CDではストリングス だったフレーズ。ただ、個人的には6月のフレーズの方が素敵だと思う。 兄のコーラスがかなり高音なのにきちんと着いていて感動。

 2曲終了したところで、ほとんど挨拶だけのMC。
泰行氏は、一曲ごとに妙に疲れた表情を見せていて、気になった。緊張のため? 歌い出すとそうでもないのだが。また、合間合間に「あああ」と発声していた。 観客から声がかかってもマイペースをくずさず、淡々と進めていくところがなんだか 妙におかしかった。
 3曲目「水とテクノクラート」。前回入っていたイントロのホーンがなく、よりCDに 忠実なアレンジに。しっかりとした演奏で安定感がある。タイトな音にグっと来る仕上がり。 しかし、この曲のサビはやはり危険‥‥このあたりからじわじわとみぞおちに来始める。
 次の「太陽の午後」は、初めて耳にする曲。午後の暖かな陽差しのような、 さわやかで気持ちの良いメロディ、そして美しいハーモニーにうっとりしてしまう。 あっさり終わってしまうのがもったいないくらい。

 続いての「野良の虹」でも安定感がうれしい。以前は二人ともヴォーカルがなんだか あやうくて、ハラハラしながら観たような記憶が。
 「繁華街」は弟の曲?ハードボイルドな夜の街が歌われていて異色なナンバー。 聴いているとなんだかアルコールのように酔わされてしまう。 アルバムには入らないようだが、これも名曲なので、いずれなにかとのカップリングで でもぜひ音源化してほしいもの。

 一息ついてまず兄が、そして弟からもMC。放送日には発売されているはずのアルバムと、 ライブツアーについて。
 「次は、アルバムに入る曲です」と「五月病」。Gのアルペジオが軽やかで心地よい。 歌詞がかなり早口なのだが、きれいにうたわれていて安心感があった。
 五月雨のようなピアノで始まる「ニュータウン」でもコーラスバッチリで嬉しくなる。 二人で歌い継いでいくフレーズも見事にきまって、頼もしい。 ただ、何度目かのサビのリフで弟が歌に入りそびれるアクシデントが。もったいなかったな。
 続けざまに「冬のオルカ」。半音高いKeyにこちらもすっかり慣れた。 どうどうと歌い切れていて満足。Vo.のキメにディレイかけるのは止めたようで、やはりこのほうがいい。

 兄にうながされて泰行氏からメンバー紹介。二人ともやっと余裕が出てきたようだ。ライブもすっかり後半だろうけど。
 「次は『かどわかされて』という曲です」うひゃー、タイトルだけでやられそう‥‥。
 悩ましいエレピのフレーズにみちびかれた新曲は、みぞおち直撃だった。全面降伏。 すっかりやられてしまった・・・。立っているのもやっと、という体たらく。それだけ演奏もみごとだったと思う。なんてすごい曲なんだろう。おそらく、本日初演の一曲。 このときだけ泰行氏が譜面を見て歌っていた。そのための譜面台だったのね。

 間を置かずして「風を撃て」。うーん、意識がすぐには付いて行けない。 とは言いつつもホーンが華やかでスケールの大きな演奏に、次第に気持ちが切り替わって来る。やはり馴染んだ曲は演奏していてもちがうんだろうな。
 続いての「茜色したあの空は」、今日は自然なテンポで落ち着いた演奏だ。とはいえ、 はずむような曲調もあって、会場の空気も自然に熱くなってくるようだった。 ピアニシモからフォルテシモへの曲の流れがすばらしくて、こちらも盛り上がって来る。 ラストもカッコ良くキメてくれて満足。

 ここまででバンドとしてのパートは終了。もっと演奏を、とねだるファンの女の子に、 「あと一曲やります」と、あくまでもマイペースな泰行氏(笑)。
 二人のGと、ピアニカ、パーカッションのみというアコースティックセットにチェンジ。 弟がイスに座ってしまったので、兄が「後ろの人、見えないかな・・・?」と配慮を 見せたものの、「そこまでして見るもんじゃないし・・・。」とそれをやんわり無にする 弟(笑)。相変わらずのコンビネーション、いいですなあ。

 「さよならデイジーチェイン」では、泰行さんがひときわやさしく歌っていたのが印象的 だった。もちろん高樹さんもジェントルにコーラス。まるで恋人にささやきかけるように? なんだか、こちらもせつなくなるようだった。

 この日は続けて別のバンドのライブの収録があったためか、そのままあわただしく終了。 ギターをおいてさっさと退場する弟にくらべ、高樹さんがぺこりとおじぎをしていたのが 印象的だった。
 泰行氏がアコギの他に1曲だけ白のテレキャスに持ち替えていたのはキリンジでは珍しい んじゃないかな?どの曲だったか、覚えていなくて残念。

 全体に以前よりCDのアレンジに忠実なライブアレンジだったように思う。 あれだけ完成度の高い音盤を聴いてしまうと、ファンとしてはライブにもそれを求めて しまうもの、そのほうが個人的にはうれしい。その上で、ライブでの演奏のグルーヴ、 ダイナミックさ、そして生コーラスが加わってくれば最高、もう無敵でしょう。

 アルバムと11月のツアーが本当に楽しみだ。


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