いのちの学び158号(05.7月号)
157号
1項 表紙
   
   下段

今月の詩

 月もみて我はこの世をかしくかな

        千代女・辞世の句
 
  「かしく」は手紙文末尾のかしこと同じ意味です。人生を終わろうとする千代女の辞世の句です。
  「月もみて」とは、どんな思いを歌った言葉なのだろうか。「私が月も見て」 なのか。「私を月も見て」なのか、どう
 もその両者のようです。
  千代女は、普通の「私が」「私を」といった分別を超えた、自然と一つという今の感覚を詠んだものでしょう。

2項 

犬の幸せ・人の幸せ

二足歩行。レッサーパンダ風太からはじまって、1キロを二足歩行で歩くという3歳のトイプードル犬まで、最近の流行の話題です。人間の二足歩行は進化論で語られますが、犬が二足歩行を断念した選択を進化論風に書いてみましょう。

 人間のお産の時間は平均14時間、動物が原野でこんなに時間をかけると敵の餌食になります。また多くの動物は固体(一人)でお産をします。お産中に敵から襲われないためにも、お産は短時間に済まさなければなりません。 人間の難産の理由は二足歩行にあります。いつも背骨は直立しているので、子宮の入り口が下方にあります。そのため赤ちゃんの重力が直接子宮にかかりるので、妊娠中に落ちないように子宮の入り口をとても硬くしなければならないのです。

 犬は、この子宮口が容易に開かないという難題を避けるために二足歩行を断念しました。

 4本足で立つと子宮の入り口が横にあり、赤ちゃんの重力は下方に向かい子宮の入り口を圧迫しません。したがって、子宮の入り口は柔らかくても早産などの心配がなく、お産のときは簡単に開いてお産が楽に終了します。 まだ良いことに、脊椎がちょうど天秤棒の役目を果たし、子宮をぶら下げるので、人間のように腎臓が子宮と脊椎に挟まれて圧迫され、腎臓の働きが悪くなる高血圧症になったり、窮屈さのせいで赤ちゃんの発育が止まるという弊害も防げます。また赤ちゃんは小さくても頭と体は充分発育させ、しかも一匹だけでなく数匹同時に産むことも可能となりました。

 一方、二足方向を選択した人間は、その結果、手が自由になり道具を生み出し、脊髄全体で脳を支えるので脳を発達させました。そして道具を次々に発明し暮らしは大いに楽になっていきました。

 しかし弊害もありました。道具の発達は、貧富の差を生み出し、一人で生活することも可能となり、孤独や競争による敗北によっての自殺など、文明病ともいえる新しい問題も生まれてきました。

 二足歩行により脳を発達させ他の動物を支配するという道を取らなかった犬は、道具で楽になった人間に従属することによって、労働と孤独・貧困などの弊害を回避し、また孤独になった人間のペットに徹し、人間に心の癒しをもたらし、ペットのための病院やお墓、ペットフーズや座敷での生活を次々に手に入れていきました。

 以上は犬の進化論です。犬は犬の方法で、快適な暮らしを手に入れつつあります。快適な暮らしを幸せの基準にしたら、人間も犬も同じです。人間は、動物の中で何がすばらしいのか。仏教では、他の動物に比べて人間の優位性を、どのように示しているのかといえば、基本的には「一切衆生悉有仏性」で同等です。これは仏さまがご覧になった世界です。

 私の立場から言えば、すべてのいのちを同等と見て下さる、仏さまに会えることをもって人間のすばらしさを説きます。なぜ仏さまに会えることが、それほどすばらしいことなのかといえが、すべてのいのちを同等と見て下さる仏さまの眼差しの中に、私の一こま一こまを肯定できる考え方や価値観、心の領域がそこにあるからなのです。

3項

玄関でのマナー

Q 玄関とは仏教語だそうですが?
A 玄関とは、玄妙な道に入る関門、転じて、禅寺の方丈への入り口のことを言いました。

Q その玄関に入る前のマナーは
A 訪問者が、玄関のチャイムを続けて押すと、これは宅配業者と想像します。しかし一般の訪問者は、チャイムの連続押しはタブーです。玄関前でマフラーや帽子、手袋などは取っておきます。服装や髪の乱れなどを軽く整えてからブザーを鳴らします。30秒くらいしても返事がないようでしたら、もう一度鳴らします。

Q 玄関先でのマナー
A 玄関先で失礼する場合は、訪問のあいさつをし、玄関先で失礼する旨を伝え、用件を要領よく話して辞去します。部屋へあがる場合は、玄関では簡単なあいさつをし、部屋へ入ってから用件を話すようにします。部屋へあがるときには、「おあがりください」とすすめられてから、前向きのまま履物を脱いであがり、相手に背を向けないようにひざをついて、脱いだ履物の向きを変えます。後ろ向きになって履物を脱ぐことはしません。

ケースバイケースですが、コートや手荷物は、玄関の上がり口の隅に置き、部屋に持ち込むものは貴重品の入ったバックと手土産だけが基本です。冷凍が必要なお土産は、事情を言って玄関で早々に渡すようにします

Q 迎える側の心得は、
A ブザーが聞こえたら早く玄関に出て戸を開けて差し上げます。戸を開けながら1〜2歩後ろに下がり、通りやすいようにします。簡単なあいさつの後、中へ入っていただきます。
 訪問者がお招きした目上の方であれば、「どうぞそのままお上がりください」と、脱いだ靴は迎える側で調えてから、先にたち先導して部屋にご案内します。

 講演会などで、ご講師に気兼ねしながら前を歩く人がいますが、先導は重要な役割ですので、廊下の中心線をはずし、ご案内します。

4項 集い案内

下段

住職雑感
* 「やっとここにたどり着いた」。何のことかといえば、今月号のこの寺報原稿です。原稿を起こす寸前になって、何か話題はと探すのですが、苦労しました。ふだんから新聞に掲載されている話題を、自分なりに深めていれば「ここにたどり着く」というようなことにはならないのでしょうが。反省。

* 表紙の仏像は、奈良の十輪院に安置されている五劫思惟阿弥陀仏像です。五劫という途方もない時間を、髪の長さで表現しています。十輪院は、元興寺旧境内の南東隅に位置し、静かな町の中にあるお寺です。

* ある出版社に頼まれて「手紙の書き方」の本を監修しました。監修と言ってもほとんど私が書きました。この本は浄土真宗のお坊さん向けの手紙の書き方の本です。お坊さん向けの手紙は、「慈光照護のもと」とか「ご尊体ご自愛」とか、特別な言葉がありこの手の本が売れます。

 お詫び状や紹介等、色々な手紙を書いて、改めて感じたことは、私は手紙の書き方を知らなかったということです。その知らない私が、書き方の本を書くのですから、いい加減なものです。

 前号から「マナー」の話を書いていますが、これも私自身、遅まきながら改めて確認する必要を感じております。マナーに縛られることもありませんが、知っておくことは大切です。

*お盆はまだ先ですが、自宅にも出勤します。ただし8月13〜15日は8月に整理しますので、承っておき8月に詳細の時間をご連絡します