砂糖菓子

「今日は何処へ行きたいんだ?」
「えっと…太陽の公園。」
「そこでいいんだな。」
アリオスは、アンジェを連れて太陽の公園へと向った。
花壇に咲き誇る花々を眺めながら精霊の苑をゆっくりと回り、お喋りを楽しみながら2人はカフェテリアへと足を伸ばした。
「ねえ、アリオス。今日は、あのお店に寄って行きましょう。」
アンジェは奥の建物を指差すと、アリオスの腕を取ってグイグイと引っ張った。
「ああ、わかった。わかったから、そんなに引っ張るな。」
アリオスは、やけに興奮しているアンジェに呆れたような表情を浮かべると、彼女に引かれるままにカフェの扉をくぐった。

「俺は……ロイヤルミルクティーのプレーン。お前は? 何でも好きなもん注文していいぜ。ケーキ全種類とか、な。」
ショーケースに20種類はあっただろうケーキを思い浮かべながら、アリオスはアンジェに注文を促した。
「アリオスったら、そんなにからかうことないでしょ!!」
アンジェは天使の広場でのデート以来、何かとケーキのことでからかわれてプ~っと頬を膨らました。それから、手元のメニューを再確認して注文を告げる。
「ビックマウンテンパフェ下さい。」
「かしこまりました。ロイヤルミルクティーのプレーンがお一つ、ビックマウンテンパフェがお一つ。御注文は以上でよろしいでしょうか?」
2人が頷くのを確認して、店員はメニューを回収して去って行った。
それから間もなく、2人の注文品が一緒に運ばれて来た。間違いなく持って来られたそれを見て、しかしアリオスは目を丸くした。
「お前、その特大チョコパフェ、1人で食うつもりか?」
ホールケーキを丸ごと食べるくらいだから、軽く2人前はあるだろうパフェもペロリと平らげてもおかしくはない。だが、こんな冷たいものを大量に食べて、本当にアンジェは大丈夫なのか、一抹の不安を覚えるアリオスだった。
しかし、アンジェの答えにアリオスは更に冷や汗をかいた。
「あら、2人よ。」
「2人?」
「そう。2人で1つのパフェを食べるの。」
「おい、それってまさか…。」
「つきあってくれる、って言ってたわよね?」
そう言うと、アンジェはアイスを一匙掬って、アリオスの方へとスプーンを差出した。
「お、おい…ちょっと待て。」
「待てないわよ。早くしないと、アイスが落ちちゃうでしょ。」
早く食べて、と差出されたスプーンに、アリオスは観念して食い付いた。
「美味しい?」
「…冷たい。」
アリオスの拗ねたような返事に、アンジェは笑った。そして、今度は空のスプーンをアリオスに握らせる。
「生クリームのところ頂戴ね。そこは私が責任持って食べるから。」
「ああ。」
アリオスは、生クリームを掬ってはアンジェの口へとせっせと運んだ。
そして、生クリームが片付いたのを見るとアンジェはスプーンを取りかえし、きっちり嘗めて綺麗にしてから、またアリオスの口へとアイスを運んだ。
「ふふふ、楽しい♪」
アンジェは楽しそうだったが、アリオスは内心「だんだん、餌付けされてるペットの気分になって来たぜ」などと考えていた。それでも、アンジェの笑顔を壊したくなくて、せっせと運ばれるアイスを黙って口で受け止め続けた。
交代で食べさせ合ってパフェを完食すると、2人は店を後にした。アリオスは、紅茶で口直ししたものの、甘ったるいパフェを大量に食した余韻がまだ口の中に残っている気がした。おまけに、何だか周りの視線が気になって仕方がない。
しかし、アンジェは上機嫌だった。
「楽しかった~。また、一緒に来ましょうね、アリオス。」
「ああ。だが…頼むから、あのパフェの食わせ合いだけは勘弁してくれ。恥ずかしすぎて……二度とごめんだ。」
アンジェの感性を甘く見たことを思い知らされたアリオスは、口は災いの元であることをその身にヒシヒシと感じ深く後悔したのだった。

-了-

《あとがき》
うちのアリオスは生クリームが苦手です。(理由は「君のいる場所4」参照)
そういう設定でキャラのイメージが固まった後に、トロワであの会話を見てしまってLUNAは焦りました。
「しょーがねぇ。相手が見つからなかったら俺に言えよ。つきあってやるからさ」!?
……つきあってもらいました。つきあう勇気は持ち合わせてるので…。
そして、生クリーム嫌いを貫くためにそれは全てアンジェの口へ。アイスは大丈夫なので、そっちを中心に食べてもらいました。
でも、1度だけです。まぁ、アンジェも1度付き合ってもらえば、無理強いはしないでしょう(笑)

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