METAL ART MUSEUM HIKARINOTANI

1997年
11月1日〜23日

11月の企画展

塚 越 裕 子 展

「痕 跡」

会 期

 1997年11月1日(土)〜11月23日(日)

作家名

 塚越 裕子 (つかごし ひろこ)

作家紹介

 大学時代に日本画を専攻し,「水で描く」仕事である日本画制作を学んでいくうちに,絵の具が跳ねたり,溜まったりする形に魅力を感じ,自分なりの表現を探した結果,現在の制作に至っている。水が自然のままに描き出す形は,ヒトの記憶の中の水そのものの感情・概念(源泉,流転,生の許容,安息,死…)と緩やかに響きあい,私自身にも不思議な感情を与え続けている。そして,それがここ5年間の制作の動機となっている。

作 品

 作品の素材は,綿布・鉄等を使い,鉄錆を布上に発生させている。

制作意図

 鉄錆を布に写しとる制作を続けながら,思った事がある。写しとられた一枚一枚の鉄錆色をした水の跡は様々な表情をしており,それぞれ別個のようであるが,それでも全く同じもの「水跡」を見ているという,ごくシンプルな事実。
 制作過程で,水は鉄を溶かし抱え込んで布に放ち,その流れの痕跡を鉄錆として残していく。その痕跡の形は偶然性に頼るところが多く,それぞれが無二の表情をもつ。しかし,たとえ作品が無数にあったとしても,その無数で複雑な痕跡の中には,共有された「原点」が確実に存在する。どれだけ多数の表現を見せる「水跡」であっても,根源的に差異はなく,また認識する側にとっても,個々の表情の違いを意識する以前に,何らかの「発生源を同じくするかたち」であると,とっくに理解されている。「水跡」にまつわる「原点」は,物理的に存在すると同時に,認識をするヒトのうちにも存在している。
 今回の作品では,物理的な「原点」である鉄の板と,そこから表出した多数の水の痕跡である布を展示することによって,まず認識する立場から,それを単数と見るか複数と見るか意識の違い,そして多数で存在しながらも,同時に原理・根源はひとつであるという事実の提案を意図している。

略 歴

 1969/11 群馬県生まれ
 1991/7 群馬青年ビエンナ−レ'91 入選 (以後毎回 '93優秀賞)
 1992/3 筑波大学芸術専門学群日本画コ−ス卒業
 1993/9 個展「共鳴するラティメリア」(NTT高崎 YOU HALL)
 1994/3 筑波大学大学院修士課程芸術研究科修了
 1994/4 グル−プ展「場所・群馬」 (北関東造形美術館)
 1994/10 近代化遺産保存活用キャンペ−ン関連イベント
 「場所・群馬 他者のまなざし展」 (群馬県指定文化財・臨江閣)
 1995/2 個展 (銀座・ギャラリィK)
 1996/5 個展 (銀座・ギャラリィK)
 1996/7 個展 (富士吉田市・ギャラリ−野ばら)
 1996/12 個展 (日本橋・同和火災ギャラリ−)
 1997/5 個展 (銀座・ギャラリィK)
 1997/11 個展 METAL ART MUSEUM HIKARINOTA
         (千葉県印旛沼湖畔)