あめりか屋出品住宅
赤い屋根が端正なこの住まいはあめりか屋の出品住宅です。明治42年創業のあめりか屋はその名の通りアメリカの住宅を理想として我が国に洋風の住宅を紹介し、広く普及に努めた住宅専門会社であり、住宅を商品として扱った今日で言う住宅産業の草分けです。このあめりか屋は、「住宅改良会」を組織して一般国民の住宅・生活改良に努め、その啓蒙活動とあめりか屋での実践を通して日本の住宅の近代化の中心的な役割を果たしました。明治期、洋館は上流階級のステータスシンボルであり、執務・接客空間として生活部分である和館とは明快に分離して建てられていましたが、あめりか屋は一般の人々の住生活の改善を目指し、中流住宅での椅子式の生活=洋風化を進めます。同時に、それまでの封建的な考えを捨て、科学的・合理的な視点に立ち、接客重視の住まいから家族本位の住まい、そして主婦の立場に立った住まい作りを進めるなど画期的な活動を展開しました。そして、住宅近代化の試行錯誤の過程の中で、完全な洋風の外観と日本的な室内意匠および工法と、椅子式生活の融合した「あめりか屋式」と呼ばれる独自の様式を生み出していったのでした。
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