興隆県教育状況

孫(興隆県教育局長)さんの講演

1999.8.17 於:興隆県政府招待所 

 

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孫さん

 

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概況

 興隆県は、燕山山脈の主峰標高2118メートルの霧霊山の麓にあります。河北省の最高峰は興隆県にあります。興隆県は、北京・天津市の隣接の県で山地地域です。北京から150キロメートルの距離にあり、昨晩私たちはこの道を通ってきました。車では2時間半です。
 興隆県の多くの地域は山地にあり、山は高く、道は険しい所が多いのです。住民はそれぞれの川の流域に点在して生活しており、地理条件の制限もあって、学校も点在しています。教育局の下には20の郷・鎮中心学校を管轄しており、また7校の県の直轄校があります。
 興隆県では、普通高校(全日制の高校)は2ケ所あり、在籍学生1953人です。職業教育センターは1ケ所で在校生は1078人です。教員の研修学校は1ケ所で、毎年訓練を受ける人数は2000人余りです。全日制中学校は36ケ所あり、在校学生は1818人です。小学校は287校あり、在校学生は30269人です。県の直轄幼稚園は1ケ所、小学校入学前のクラスは267あり、幼児在籍者は6978人です。県全体の学校在籍者は6万3000人余りです。教職員は4000人余りです。かなり高いレベルの教員集団もかかえております。  県全体で学齢に達した子供の入学率と中学校の入学率は100%に達しています。維持率は小学校は100%で、中学校は98.4%になっています。以上は県の教育の基本的な状況です。  

興隆県の教育の発展

 改革開放以来、興隆県の教育は大きな発展を遂げてきました。県では基礎教育・職業教育・社会教育も含めた、かなり整備された教育のシステムが形成されてきています。1997年には、省政府の9年制義務教育の管轄権限も通りましたので、我が県の教育はまたもう一段高いレベルにあると言えます。
 小学校の前の段階の教育も大きく発展しました。県全体では19ケ所の幼稚園が作られ、学齢前児童の入学率は98.7%となっています。かつて国連の児童基金会教育部、中央教育研究所、河北省内12ケ所の省と市の教育視察団の視察を受けました。幼児教育は省全体の中でもかなりレベルの高いものとなっています。
 社会教育と職業教育の発展も大きなものです。県内の各郷・鎮の中学校は農村教育の全体的改革を行い、また農村教育の発展を促進し、農村教育のさまざまな機構を固める為に、さまざまな事業に取り組んできました。現在9年制義務教育の実現により、小学校の卒業生のほとんどが中学校に入学できます。但し、我が県においては30%しか高校へ入れません。70%は農業生産に従事することとなります。私たちの今の義務教育は9年制になっており、高校の段階は義務教育の範疇には入っていません。
 こうした状況に従って私たちは中学校の教育では、さまざまな進路のパターンに基づく指導の工夫をしなければなりません。と言うのは、中学校の4年生を重点として教材や教育のプロジェクトを現状に従ってうちたてて、必要に応じて教育をすすめ、学校の指導、親の賛成、学生の希望等を尊重する原則に立って、中学校4年生の学生たちを進学と就職の2つのパターンの進路まで導くことが私たちの仕事です。一部の学生は進学という道をとり、もう一段階高いレベルの学校に進学することになります。高校の進学、さらに大学の進学のルートを用意するわけです。進学の希望のない場合や進学したいけれど学業の状況が遅れをとっている場合は、就職の希望を達成するために職業訓練クラスに編入されることになります。故郷のためにも家庭のためにも、一つの確実な力を身につけるための教育を行うわけです。

職業教育センター

 以上は中学校の教育ですが、それ以外には、先程申し上げたように職業教育センターがあります。職業教育センターというのは、農村経済の発展に従って、また農民の経済建設の状況に応じた農村の発展と教育・科学技術の結合をこのセンターの仕事を通して模索していくのです。農村の状況に応じられる人材を育てる一方、学校の教育と文化のよい条件を生かして、興隆県のエネルギーの状況と、県のさまざまな産業の発展の可能性をふまえ、これからの発展プロジェクトの模索と、その発展のために力を注ぎます。県内の各学校はキャンバス内の経済を促進することにもなります。キャンバス内の経済促進を通して、学生たちの労働の観念を高め、労働意識を踏まえた上に一定の職業技能を育てることになります。併せて中学校の学生たちに実践の場を提供することにもなります。こうしたことを通して普通教育の職業教育、成人教育つまり社会教育との交流を深め、学校の収益をはかります。また学校の発展のエネルギーの土台を作り上げ、科学技術の進展を押し進め、農村生産のモデルを提示します。また農民たちへのサービスを提供するための基地としても、その機能を果たしていきたいと思います。職業教育センターは、さまざまなものを導入・実験するモデルの提示、技術の普及、新しい品種の開発のために力を果たし、県内の農村地域発展の力となりました。以上県の教育について簡単に紹介しました。とりわけ三つの教育、普通教育・職業教育・社会教育の共通発展、共通模索の状況を申し上げました。

 基礎教育については、現在中国では、素質教育(日本語でいうと資質教育)を高めています。中国全体でもこの素質教育を進めていますが、我が県でも素質教育を進めていきたいと思っております。先ほど教員研修学校のことをご紹介しましたが、学生たちの資質を高めるためには、まず教員の質を高めなければならないと考えたからです。
 現在では、興隆県ではすでに9年制義務教育はほぼ実現されていますので、これから更なる発展を図っていかなければなりません。中学校教育の普及を終えて今我が県の直面している課題は高等中学校、高校の普及の事業となります。
 以上が私の紹介する内容ですが、皆様から是非さまざまな質問意見をいただければうれしいと思います。さらには皆様から日本の教育状況・日本教育のすぐれた経験を私たちに話していただけたら大変うれしく思います。

質疑
  • 3つ教えて下さい。
    1. 義務教育はどこまで無償になっているのか
    2. 校長の権限は
    3. 教える内容は全く自由か 答え
  • 孫さんの回答
    1. 中国の義務教育は2つの特徴を持っております。 第1点目は 普及性 7歳に達している子供たちは全て入学するようにと考えているからです。入学率は100%を求めています。 2番目の義務教育の活動は強制制にあります。この子供の両親、あるいは身元の保証人は2つのことを守らなければならないということです。義務教育法の中では就学させないのは違法だということになっています。ですから私達の考えている義務教育というのは必要なことで、費用の無償は考えていないです。
    2. 校長の権限  責任制 行政に対する責任 教員、親に責任  権限の関しては、まず人事権、それから学校管轄権を持っています。人事権というのは一部校長によって担っていますが全部ではないです。  校長の財政権というのは政府からの教育費、それは政府からの支出となりますが、その他の場合は校長の学校経営による収益があるとすれば、それは校長の権限内で財政の管轄をすることができます。
    3. それから教育の内容ですけれども、私達の教育内容は中国の国全体の中で作られている「教学大綱」に従って教学の内容を準備することとなります。それぞれの地域に於いては、一部その地域の風土に合った内容も作られています。それから校長は教材以外のものとして、副読本としてのものを様々な視点から選び出すことができます。

 

  • 義務教育はどこまで無償になっているのですか?
  • 孫さんの回答

    「費用の無償は考えていないです。 支出負担は2つから。

    国から用意:校舎、教具、器械など

    学生の負担:書籍、教科書、教材、雑費など

    小学校 1学期40元 1年間で80元(2学期制)

  • 中学校 1学期60元 1年間で120元(同上)」

  • 小学校の1クラスは何人ですか?
  • 孫さんの回答

    「都市部40〜50名。(制度上は40名だが、人数オーバーも認められている。) 農村部20名〜30名。50人まで。(山地部 住民が点在しているので、小人数。平原部40〜50名。) 上海市は条件が整備されて、小人数(20名)編成になっている。」