おまつりとは ご仏壇に供物をささげ、御本尊、亡き人、ご先祖様にご供養申し上げることです。
しかし、それだけを意味しているのではありません。
そういう行為を通して、より平安な生活、豊かな人生、を送るための心のありようを修養する事にあると思います。そういう意味で、ここに「おまつりの仕方の巻」を記したいと思います。

目 次

1.おまつりの多種多様

2.おまつりの意味

3.おまつりの仕方
その一、お仏壇
その二、お盆
その三、お墓
その四、お彼岸
その五、お葬式(枕経・お通夜・お葬式・初七日四十九日)
その六、祥月命日
その七、お正月


4.これはいけないのか!

1.おまつりの多種多様

 最初に念頭においておかないといけない事は、これが本当の祭り方だ、というのはない、ということです。 例えば、他宗教を見てみると、創価学会の人には、位牌はありませんが、その人たちは不幸な暮らしをしてるでしょうか。キリスト教の人は、あまりお供え物をしませんが、故人は、あの世でひもじい思いをしているといえるのでしょうか。儒教の方は、お供えに豚肉、魚肉を使いますが、生臭ものですからいけないのでしょうか。神道も、弔いに鯛をお供えしますよね。
では、同じ真言宗で見てみると、仏壇ではほぼ全国同様の仕様ですが、葬式になりますと、まちまちです。お遺骨は、必ず大きな骨瓶と小さな骨瓶との二つにとって祭るところや、火葬場からすぐ墓に行って納骨する祭り方の地方があったり、家に戻る前にお寺でお経をあげるところがあったり、家に戻ってお遺骨を小さな布団の上に祭るところがあったりで枚挙にいとまがありません。
時代で言えば、戦前頃までお盆には、ご仏壇に三度三度のお霊具膳を差し上げてた、と聞きます。私が、福岡に来たころは、お葬式が終わってその日に初七日をする事などはありませんでした。大都会では、時流が早いように思えます。
こういうことからしても、宗教宗派、その地、その時で祭り方が違う事があるのです。
ところが、あなたは間違った祭り方をしている、とか、霊能者からこういう祭りをしないといけないといわれた、とか、いわれることで、悩んだあげく、法外なお金で仏像を買ったり、している人も少なくありません。
なんかおかしいと思います。どんな祭り方にしろ、いわれた方が喜び、平安であるならいいのですが、悩ませたり、恐怖をあおることは、おかしなことです。
このように、いろいろな祭り方がある事を知っておきたいものです。
宗教は、真理を説きます。それは唯一絶対のものなのですが、それがために、戦争が行われている事を忘れてはいけません。自分が正しい、と、思う事は構いませんが、思う事で他の人、他のものが馬鹿に見えてくるようではその真理の理解度は怪しいものです。自分の都合のいいようにしか理解してないのでしょう。お釈迦さんは、誰もが幸福を求めている者同士なのだ、という大きな気持ちが必要だよ、と説きなさいます。
ですから、真理を説く宗教である以上、正しい祭り方は一つのはずで、それ以外は、迷信、風習、で必要ないと早合点されても困ります。私は、人が幸せを求める数だけ祭り方もある、と考えるのです。
ところが逆に、寄らば大樹の影でというように、決められたように祭っておけば間違いない、不幸が降りかかってこない、と考えてしまい、形式だけで終わらして心がこもらない祭りになることも恐い気がしますね。

2.おまつりの意味

 おまつりは、供養の意味があります。その供養は、何か供物をささげたりする事と、精神的なものを ささげる事との二通りがあります。他宗派の解釈はわかりませんので、真言宗の事でお話しましょう。
真言宗は、別名「曼荼羅宗」ということもあると昔の本にあります。
曼荼羅とは、仏の世界を幾何学模様で図示した絵画であります。ご覧になった方もいらっしゃると思います。この絵画は、仏の姿を描いたというだけでなく、仏教の教えを視覚に表してもいるのです。あの仏とこの仏は適当な配置で書かれているのではなく、教理にしたがって描かれているのです。
つまり、仏の教えを絵で解き明かしているのです。
その教えの中で、金剛界曼荼羅の中心である成身会(じょうじんね)といわれる部分では、仏と仏の配置が、
相互供養・相互礼拝 という理念によって描かれているのです。
この絵・曼荼羅の中の仏たちは仏同士を供養しあい尊敬しあい、上下関係もなく支え会うことで自らを成り立たせているのです。私たちの世界、人間世界も本来のこの精神に立ち返る事でこの世を仏の国・浄土にできると説くのです。この相互供養・相互礼拝の精神に、私たちの供養の在り方を考える鍵があると思えます。
おまつりと申しましても、私たちの気持ちの持ち方が大切です。それは、相互供養・相互礼拝の気持ちでいいのです。私たちは、仏様、ご先祖様にご供養いたします。すると、仏様や、ご先祖様も私たちを供養下さっているのです。後先の問題ではありません。仏様、ご先祖様から、私たちは供養を受けているのです。平たく言えば、守られている、御利益をいただいている、ということです。
「拝まないものも拝まれている」という事を忘れてはいけません。
ですから、御利益をもらうためのご供養ではありませんし、恐ろしいからする供養でしてやっているというわけでもありません。誠心誠意供養する事に、祭る事に、あれこれと打算する事はありません。できる事を、心からさせて頂く、感謝の念をもってすればいいと思います。打算であったり、恐怖感であるよりはよっぽどいいと思います。そういう供養は、喉元過ぎれば忘れてしまう事で、元の木阿弥だからです。
そして、物質(花・食物など)だけでなく、精神でも立派な供養に成るのです。
坊さんの修行にも、観念で行う精神的な供養と、物質的な供養の二種類があるのです。
私たちにとっては、心と物質の両面が整ういいあんばいの供養、おまつりを自分のレベルで見つけるといいですね。自分できついと感じる供養や、けち臭い了見ではない心が安心するレベルなのです。
精神的なものは、後で述べましょう。
以上がお祭りする意味です。
3.おまつりの仕方

 以上述べてまいりました事から、「じゃあ、どう祭ればいいの、わからんものはどうしていいのかわからん」と、思われるでしょう。そこでですが、このような仏事ごとは、師資相伝と申しまして、私からあなたへ、伝授みたいなものです。ですから、南福寺に縁があれば、檀家さんは、その時の住職の伝を習うという事になります。以下に述べる祭り方は、全国に通用するとは言い難いですが、間違いではありません。南福寺流なわけです。
次に、私の伝からすれば、そのお家に伝わる祭り方があるならば、是非とも継承してやっていく事の方が、私の伝より大切だと思ってます。伝統は大切です。しっかりと先祖のやり方を学びましょう。
次に、そういった先祖のやり方もわからない人は、私の伝を参考にして下さい。でも、心情的にこうしたいというのであれば、それでいいのです。心を大切に、形式に流されないようにしましょう。

その一、お仏壇
要点を書いていきます。

1.お仏壇は、お寺の出張所です。お寺参りの代わりに家で拝むのです。

2.お仏壇の主は、本尊です。真言宗は大日如来ですが、曼荼羅の教えからすれば、本尊は何様(阿弥陀 様、十三仏様など)でもいいのです。三体置いてもいいですし、一体でもいいです。
 やはり、ご仏壇には本尊を安置いたしましょう。お寺なのですから。確かに、お位牌だけのお宅も多い です。信仰の導き手として仏を崇める事をお勧めします。逆に、お位牌はなくとも本尊様だけお祭りし ていっこうに差し支えなく、信仰に励むいい事だと思います。

3.先祖祭りとしてもっとも大切なのがお位牌です。

4.お位牌は、3種類あり好みで選びます。
 塗り位牌―――先祖代々や一人の戒名を書いてます。二人の夫婦位牌もあります。また、生前戒名は、 戒名部分が朱色です。
 繰り位牌―――木の板が数枚入っている位牌です。命日にその方の板を一番上にします。普段は先祖代 々か一番新しい仏が上にきます。多くて10人まで。
 過去帳位牌―――過去帳というノートが入っています。だいぶ多くの人が納められます。
 これらの位牌は、先祖代々が一番大きくそれよりも後の位牌は超さないようにするというのが習わしで す
 五十年を過ぎた位牌は、別に過去帳に納め、仏壇から取り出し焼供養いたします。過去帳位牌でなく五 十回忌を過ぎた人を書く過去帳は、仏壇の引き出しになおしてもらって結構です。祭る事はありません 。
 一人の戒名の位牌だけでなく、先祖代々の位牌を共に祭る方が丁寧です。その場合、向かって右が先祖 の位牌、左が故人の位牌、となります。

5.供物は、新鮮なものです。ご飯は、湯気が出るもの、お茶も湯気があがるものです。腐ったものはあ げてはいけません。生臭ものでも、故人が好きなのであればいいです。ご飯は炊いた時でいいですから 、自分よりも先にお供えして召し上がってもらいます。時刻はとらわれなくていいでしょう。

6.線香は三本です。(二本でもいいですが)身と口と心を仏にお供えするのです。だから三本です。線香 は立てます。線香立ての中にマッチのかすは捨てないようにしましょう。

7.花は、何でもいいのですが、刺のあるもの(ばら)毒のあるものは止めます。

8.仏壇のそうじは時にはしましょう。本尊や位牌を手にしても構いません。
9.これらの祭る位置
三段とは限らず、四段や五段もあります。
お茶お水ご飯は、位牌の棚に祭る事もありますし、お花も仏壇以外にしか入らないものもあります。
お茶・お水・ご飯・はそれぞれ一つずつにして一組だけを祭ります。
三体の仏、それぞれの位牌にご飯やお茶をすれば超した事はありませんが、一組でもいいのです。
精神的意味
お水――親切な心   
ご飯――落ち着いた心
お花――笑顔、忍耐
灯明――智恵
線香――たゆまない努力

※このような精神的な意味を知った上で
ものを供養するだけでなく、実生活に
この精神を活かしたいものです。
10.お花、線香立て、ローソク立ての基本
 これには、三具足(みつぐそく)と、五具足(ごぐそく)の仕方があります。どちらの仕方でも構いません。
 お花は、季節によっては、生き花ではなく造花でも仕方ないと思います。
でも、ずーと造花や、カリ フラワーではなく、時には生き花をして下さい。
 ローソクが危ないと思うなら、電気の豆灯ろうでもいいでしょう。

11.お霊具膳(おりょうぐぜん)
 このお膳は、ままごとのような小さなお膳です。
 亡くなった故人にはこの「お霊具膳」をします。食物に火を通して料理したものを言います。
 もう一つに、「精進具(しょうじんぐ)」というのがあり、これは、本尊様などの仏様に捧げるものです。これは、火を通さずに生物です。
 お仏壇には、「お霊具膳」をお供えします。


 本尊ご先祖に箸が向き食べて頂くようにする
煮物の一例
       高野豆腐
       椎茸
       にんじん
       たけのこ
       鞘隠元

もちろん野菜もので作り、肉、魚は使わない。
地方で作り方、メニューが随分違うので注意。

* このお霊具膳の使うのは、法事、お盆、彼岸、などです。
その二、お盆

お盆は、8月13、14、15日です。この間にご先祖様を迎えます。

1.迎え火を13日夜にします。庭、玄関でガラを燃やし迎え火をし
(ガラは、コモといっしょに売ってます)、それを線香か、ローソクにとって
、仏壇、精霊棚にお供えします。

2.精霊棚――初盆にはこの棚を作ります。本式には、毎年作ります。
図は一例ですが、今は、この精霊棚も葬儀やさんのレンタルが多くなっています。自分で作ってもいいのですよ。

コモ――これは、お盆近くになると花やさんで売り始めます。この、コモを広げ、両端を結わえて船の形を作り、その中に、供物を入れます。これは、なまのやさいとか、夏のもの(にがうり、ながまめ、うり、すいか、など)、くだもの、菓子、そうめん、らくがん、ほおずき、などなどです。精霊棚は、初盆だけですが、このコモは、毎年お盆に仏壇にするお供えです。コモには、ガラを箸としてつけます。
3.庭、玄関で送り火を15日の夜にします。その時、町内で決まった場所に、コモの供物を流します。市政だよりをみましょう。

4.提灯を祭ります。かど提灯といって、玄関に、家紋の入った提灯をつりまして、御霊を迎えます 。
5.室内には、あんどん、住吉提灯、博多提灯を祭りますが、これら提灯は、親戚などからお供えし てもらう事もあります。
その三、お墓

お墓は、それぞれの霊園管理になっているため一概に言えません。
通例、常識程度を記します。
1.花、水、線香、ローソク、供物を供える。
2.これらは、たいがい持って帰る事が多いと思います。
3.法事の後で行く時には、塔婆を墓の後ろに立てもします。
4.お盆、彼岸には参りましょう。

その四、お彼岸

常の仏壇のお供えでもいいのですが、お中日(春分の日、秋分の日)は、お霊具膳をします。昔は、毎日三回かえたとも言います。彼岸には、お墓参りもいたしましょう。
彼岸は、お寺参りが本義でもあります。お盆のように御霊祭りだけではありません。



その五、お葬式(枕経)

先ず、ご不幸があったら、何時でもいいですからお寺に知らせて下さい。
住職が行くまで、棺桶に入れないで下さい。布団のまんまにしておいて下さい。枕経をあげるからです。
大体、葬儀自体は、葬儀屋さんによって進められていますので、おまつりにそれほど心配しなくてもいいのですが、ある程度かきます。

1.一輪ざしの花瓶と花
2.ご飯てんこもり、に割り箸をいったん割って、またあわせ、ご飯に突き刺す。
3.お茶。常に熱いものを備え、さめないようにする。
4.水。
5.線香。一本だけ供える。焼骨してから後は、3本になる。常に、線香をたき切らさないようにする。
6.ローソク。これも、消さないように注意する。
7.あとは、葬儀やさん、住職との打ち合わせで進めて行く。
8.納棺する故人の好きなもの、めがね、本、着物、などを決めておきます。

お葬式(お通夜)

枕経とほぼ同じ。ただ、棺桶に入れられ、祭壇ができあがっている。
1.ご飯は、炊いたら熱いのと代えましょう。古いご飯は、半紙で包んで棺に入れます。
2.団子を作ります。数不定。(49とか48とか6とか)
3.線香、ローソクを切らさないようにお通夜します。

お葬式(お葬式)

これは、告別式とか、本葬とかいわれます。これも別に変わった事はありません。
現代はとても簡略され準備するものがなくなりました。

お葬式(初七日四十九日)

現在は、火葬場から帰ってくるとすぐに、初七日をしてます。

1.この時には、お霊具膳がいります。
2.新しいお茶、水にいれなおしましょう。
3.七日、七日の法事、そして、最後の四十九日の法事にも、お霊具膳を供えます。
4.この四十九日間は、精霊棚に祭られてます。四十九日後に、仏壇に入ります。
5.四十九日に、白木の位牌から、塗りの位牌に代えますので、それまでに仏壇屋さんで買い求めます。
6.四十九日後に納骨しますから、墓のあるところは、墓碑銘の記入など墓地霊園と連絡を取ります。
7.四十九日後も遺骨があるなら、仏壇にまつっておけばいいです。

その六、祥月命日

年に一度のご命日は、お霊具をお供えしたり好物を整えます。

その七、お正月

お正月は、お祝いですが、そもそも、正月自体が先祖祭りであったということを覚えていて下さい。注連飾りも本来祖霊を招くものだと言われます。

1.お餅
2.正月花
3.正月にふさわしいもの


4.これはいけないのか!

お祭の仕方には、人の言い伝え、霊能者の意見で、いろいろな禁忌(タブー)があります。
そして、これを実行するしないは、個人の判断に委ねる事が多いのですが、一応、住職の見解を載せておきます。


1.仏壇の中に違う家系の位牌を祭ってはいけないのか。

私は、構わないと思います。例えば、奥さんの実家に位牌を祭ると嫁ぎ先の仏壇だから、肩身の狭い思いをすると申します。今は、そういう事も言えなくなってます。昔は家督相続(長男が全財産を受け継ぎ、仏壇もその家系のものを預かっていた)だったからそういってたと思いますよ。本尊様によくお願いして、共に救われる事が肝要です。

2.家の中に仏壇が2つあると不幸になるのか。

これは、家相学からいわれる事です。仏壇は、北向き以外だったら大体良いです。また、一階に祭るのなら、二階がある場合、足に踏まれないような場所(押し入れなど)の下が良いです。その場合でも、仏壇の上に「天」「空」などの紙を貼る事があります。そして、家に2つあるとなぜ行けないかというと、家族がバラバラになるからというのです。そこの点、昔の人の忠告を注意しましょう。

3.法事を遅らせるといけないか

普通いけないといいます。あの世の故人が怒るというのです。その真偽は別として、早いぶんには良いといいますね。
その外いろいろあると思います。今日の事を参考にして、さらに充実した「仏事秘伝帳」に改正していきます。
また、このおまつりの仕方の巻以外にも、お葬式の巻、お勤めの巻、真言宗の巻、など作りたいと思います。







この伝は、南福寺の伝であり門外不出、口外無用、伝授受けざるもの越三昧の罪に落ちん。
くれぐれも、忘失せざることなかれ。


記 平成十年 秋彼岸 中日法要にて伝授
南福寺住職 弘敦 無徳を省みずここに記す。 合掌
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