The Relms of Trumpet

for all composers loving trumpet

Kiyonoro Sokabe


□歴史

 バロック以前には最も高い地位にあったトランペットであるが、主役の座を弦楽器やピアノに奪われて大凡500年になろうとしている。高い地位についた大きな原因は、宗教的な意味合いも含めて、その音色が神の威厳を表現するものであったことに由来する。バッハの頃まで高らかに鳴り響くトランペットは神そのものであり、神の啓示をもたらしたのである。強く動かし難いものを表現するときに、この楽器の持つカリスマ性は大きな武器となった。

 ではなぜ、いつ、主役として使われなくなったのか?

 これは私の独断だが、12音による平均律が確立された頃ではないか?御存知のように平均律はすべての調性に対応することは出来るが、そのいづれも正しいハーモニーを形成する音程(自然倍音)ではない。ここでこの問題にこれ以上言及することは避けるが、12の調にはそれぞれ美しく響きあう12の半音階があるのである。その時代のトランペットは、自然倍音だけで音程を作っていた。(もちろん、12音全てを出すことが出来たわけではない)そんな経緯で、トランペットの持つ自然倍音は、鍵盤楽器と調和しなくなった。また、音楽の構造が複雑になったため、当時出せる音程が限られたトランペットは、少しづつ作曲家に疎んじられたのではないかと想像する。

 しかし19世紀の終わりに、ピストンを採用したトランペット(正確にはコルネットアピストン)が開発され、半音階が苦もなく演奏できるようになり、私の記憶では、ベルリオーズが真っ先にオーケストラ作品の中で用いている。その後、リヒャルト・シュトラウス、マーラー、ストラヴィンスキ−そのほか多くの作曲家達が、この楽器のために多くの作品を残してくれている。

 では日本ではどうだろうか?日本では古来より、多くの楽器が使われてきたが、その多くは笛や太鼓、鐘などである。詳しく調べたわけではないのだが、金管楽器は使われていない。ということは日本人の感性に金管楽器の音楽はないのか?という疑問も生ずる。しかし、私は逆に、未だ書き尽くされていないと思っている。目の前に真っ白なキャンバスが用意されているように思えるのだ。

 また私の開発したゼフュロスというスライド付きの新しい楽器は多くの可能性を秘めている。作曲家各位殿と私との共同作業で新しい音楽の世界を切り開いてゆければ、これに勝る喜びはありません。このページを機会に、新しい作品が、この世にたくさん産まれますように。

曽我部清典


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