6. 結論

 

  我々はトランペットのような楽器の最も単純なモデルからはじめた。この単純化にも関わらず、シミュレーションの結果は金管楽器の特徴となる動作をとらえていた。さらに[RV96]で、この振動の条件と特性を分析的に導いた。モデルの物理的な機能付けとリアルタイム制御の両方について、最新の改良方法を明らかにした。減損のない、真っ直ぐな管内の反射関数を、計測した反射関数で置き換えた。スライドを組み込み、そして、シミュレーションをリアルタイム性に保つために、反射関数の簡略化を提案した。このモデルの動作を簡略化する一連の成果について研究した。最初のインピーダンスピークが低く計算される結果を、補正する解決方法を提案した。低く計算されたピークを、目立ったコンピュータ負荷を増やすことなく、強くすることが可能であった。そして、簡単にヴァルブが組み込めることを示した。この方法をスライドトランペットにも拡張した。最後に、閉まった唇のモデルについても組み込み、よりモデルの精度を上げた。

  最終のモデルは金管楽器に似た反応を示した。その音楽品質を強調するために、モデルの動きをリアルタイムに感じられる演奏インターフェースを用意した。結果は、音質だけでなく、奏者と仮想トランペットの強い相互関係とその理由を検討する上からも、興味深いものであった。安定した結果は、ホッフの理論が依然と有効であることを保証している。

  より良いモデルを開発するためには、唇周辺で起きている、気体音響的な現象についてのより正確に理解することが必要である。我々は唇のラテックスモデルを作ることを選択した。このモデルが、リアルな音を広い音域で発声できることを示した。唇の動きと空気の流れの非線形性をより理解するために、唇の振動の測定と映像をとった。

  さらに、これからの開発では、人工の口に関する計測が大きな課題である。ヴァルブが閉じる時や、ある倍音から他の倍音に跳躍する時に起きる過渡状態の現象についても研究したい。管内での非線形な伝播効果([JG96]と[TMDD97])についても明確にして、我々のモデルの伝播についても非線形性を組み込んでみたい。もう一つ別の方向の検討課題は、プロのトランペット奏者による音楽演奏の録音に、モデルを合わせるためにパラメータ値を自動的に最適化することである。この方法は、この楽器の可能性と限界を明確なものにすると思われる。物理モデルのパラメータの自動計算は、音楽的な応用のために素晴らしい音の可能性を開くことになると思われる。

謝辞

 

  人工口における非常に価値のある成果を上げたB.GovignonとA.Terrier、そして、インピーダンス計測のために援助してくれたR.Causse'とN.Misdariisに感謝する。

文献

 [CS96] D.C.Copley and W.J.Strong.トロンボーンにおける唇の振動についてのストロボ研究 JACOS, 99(2):1219-1226, Feb 1996

 [DT96] P.Depalle and S.Tassart. ラグランジュ補間法を用いた微小遅延線 In Proceeding ICMC'96. ICMC, 1996 Hong-Kong

 [GGA95] B.Gazengel, J.Gilbert, and N.Amir 合成信号への入力インピーダンスの測定より、単リード木管楽器の時間空間シミュレーション。どこに罠があるか? ACTA, 1995

 [Gov97] B.Govignon 実トランペットに組み合わされた、ラテックス製唇を伴う人工口の作成 修士論文, DEA ATIAM, 1997, To appear.

 [JG96] J.F.Petiot, J.Gilbert. Nonlinerrites dans les instrumets de type cuivre: resultats experimentaux. In Actes de Colloques du quatrieme Congres Francais d'Acoustique, Marseille, 1996

 [Jor95] D.Jorno Etude theorique et experimentale de l'auto-oscillation des levres en presence d'un couplage acoustique. application aux instruments a anches lippales. 修士論文, パリ大学 6, DEA ATIAM, ICP, 1995

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 [RV96] X.Rodet and C.Vergez. トランペット族楽器の物理モデル 詳細動作とモデルの改良 In ICMC96 proceedings, Hong-Kong, Aug. 1996, ICMC

 [Stu95] MIDI Reference Manual for Viosion and Studio Vision Pro,opcode system edition, 1995

 [TMDD97]S.Tassart, R.Msallam, Ph. Depalle, and S.Dequidt. 微細遅延の応用:導波管内の伝播速度の時間の変更 In proceedings of ICMC97, 1997


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