1.3 半導体による論理回路


1.2節ではリレーを使った機械式論理回路を紹介しました。しかし、実際に使用するとなると、リレーはサイズが大きい、価格が高い、機械だから寿命が短い、などいろいろ問題があって、不向きです。そこで、半導体を使ってリレーの代わりをさせることを考えます。


半導体って、なーに?

うみゅ。ほえーっ。。と、いうわけで、ここで詳細説明をするのは私にはちょっときついのでして、その手のことを詳しく知りたい場合は大学で専門の先生に聞いてみてほしいので、ここでは使用する時に必要なところだけまとめてみましょう。

(ちなみに導体は電気をよく通すもの、絶縁体は全く通さないもの、半導体はその中間、と、言う意味で、伝導率は不安定で、温度、ちょっとした電圧を加えたりすることで電気をよく通したり通さなかったりします。ちなみにダイヤモンドなんかも室温では絶縁体ですが超高温中では半導体として振舞います)

ダイオード

ダイオードは電流を一方方向しか流さない半導体素子です。
右図−> ダイオードの例。
ダイオードの種類、用途はいろいろありますが、一番一般的なのは整流作用を使用した交流の直流化回路でしょうか(上から4番目の図)
こういった用途に用いられる時のダイオードを、整流用ダイオードと呼びます。ダイオードには、流せる最大電流、両端にかけられる最大電圧類がダイオード毎に決まっていますので、定格オーバーにならないように用途に合わせてダイオードを選択します。整流用ダイオードで一番代表的なのは10D1でしょうか、これは100V1Aまで耐えられ、値段は1本20円くらいです。

そのほか、ダイオードはAM信号の復調回路に使われたり、また回路のそこそこでいろいろな目的に使用されます。)


右図−>
ではダイオードの整流作用を利用して、AD-DC変換をしています。


ちょっと危険な香りのする回路です。
商用電源に触れるのは安全ため、少し慣れてからにしましょう。
だいたいなんでDC141Vなの?という問題もあります




ところで、回路記号というものをご存知でしょうか。ダイオードの形状は一番上の図のようなものですが、回路図を書く時にいちいちデッサンして書けませんから、対応する図記号があります。(右図)

なお、ダイオードへ電流が流れ込む方の端子をアノード、流れ出すようの端子をカソードと言います。図記号では、カソードの方に縦線を入れます。また、たいていのダイオードに実物には、パッケージの、カソードの方に線を印刷して識別しています。

なお、ダイオードに電流を流すと、端子間で必ず一定電圧の電圧降下を生じます。これは、抵抗に電流を流した時、発生する電圧降下が電流に比例するのに対して、ダイオードではほぼ一定です。(厳密には違うが。)
この電圧は、一般的なシリコンダイオードでは0.7V前後、ショットキーバリアダイオードで0.3V前後、今となっては懐かしいゲルマニウムダイオードで0.2V前後です。(順方向電圧、という)

右−>1N60超拡大写真


ダイオードで論理回路を作る

前置きが長くなりましたが、ダイオードで論理回路を作ってみましょう。ダイオードで論理回路、というとイレギュラーな感じもしますが、数世代前の論理回路はDTL(ダイオード-トランジスタ-ロジック)というものが使われいたのですから、由緒正しき論理回路です。


右図はダイオードを使用した論理積回路(AND回路)です。ここではスイッチを入力として、出力電圧Vが、論理的に関連付けられています。スイッチが両方とも5V側に入れられていれば、出力電圧Vは、両方のダイオードに電流が流れず、つまり抵抗にも全く電流が流れませんので、抵抗による電圧降下(V=RI)がなく、電源電圧と同じ、5Vとなります。
ただスイッチのうち1つでもGND側(*1)に入っている場合を考えると、ダイオードを通して抵抗に電流が流れますから、ダイオードの電圧降下を考えても、出力電圧は0.7V程度まで降下します。

(*1)GND
グランド、と呼びます。意味は基準電圧であり、=0Vと考えてください。回路記号は図のような3本線です。特に、接地(アース)しろという意味ではありません。回路中で複数この記号が表れる場合も全て0Vへつながっています。

右図はダイオードを使用した論理和回路(OR回路)です。スイッチがどちらか一方でも5V側に入っていれば、出力電圧が現れます。

発光ダイオード:LED(Light Emitting Diode)

LED(エルイーディ)は半導体発光素子です。右図の様に多種の品種があり、家電製品などに広く使われています。発光原理は一般の電球とは大きく異なり、基本的にはE=hν式に対応する半導体内のエネルギーギャップから求められる波長の光が発生します。(高校物理の水素原子の話で、電子が軌道をまたいで遷移するとき光が出るといったことを覚えている方もいるかもしれませんがそれと同様のものです)
 LEDはリモコンなどに用いられる、目には見えない赤外線発光ダイオードから、赤のもの、山吹色のもの、黄緑のものなどが一般的にあります。LEDは赤色の白熱電球などのように、光学的フィルターを通して色を出しているものではありませんので、半導体として作りにくいもの、色があります。青色のものはなかなか作りづらかったようですが、最近では一般的になりつつあります。ただ、普通のLED(赤とか)が1つ20円くらいなのに対して、青では200円以上しますのでまだまだ高所得者向けデバイスです。
このほかの色では、青色LED+蛍光体を使用した白色LEDなどもありますが、高価です。

 LEDの特徴としては、電球より電流が少なくてよいこと、寿命が半永久的であることなどがあげられます。使用するときのポイントとしては、

1.電源電圧が最低2V以上必要(赤LEDの場合)

一般のダイオードでは順方向電圧は0.7V程度であると述べましたが、LED(赤)では約2V程度あります。ここで、電源電圧が2V以下ですと全く電流が流れず、点灯しません。


2.電流制限用抵抗が必要である

2V以上なら点灯するからといって、LEDを直接5V電源などにつないではいけません。半導体一般の特性ですが、順方向電圧付近を境に、流れる電流が急激に変化します。(図参照)このため、抵抗を直列につないで電流を調整します。



3.電流は一般的には10mA流せば充分

ここで抵抗の値の選択ですが、LEDは必ず2Vの電圧降下があるとして、

R[Ω]=(電源電圧[V]-2[V])/設計電流[I] 

のようにして求めることができます。さて抵抗は抵抗値だけ決めれば良いでしょうか?ここでは抵抗の最大定格を考えてみます。電子素子には流せる電流、電圧などが最大定格として決まっています。それを守らないと火が出たりするわけですが、(またそのリアクションがあることがソフトと違って面白いところではあります)抵抗ではまず問題となるのは最大電力です。ここの場合、抵抗で消費する電力は

電力P[W]=I^2*R

となります。 ここで電流が6.4mAで、470Ωの抵抗を使った場合は、P=0.0064*0.0064*470=0.019[W]となりますので 1/4W(0.25W)程度の抵抗を使用すると十分でしょう。(電子工作ではこの1/4W抵抗は一番良く使われます。電力を食う回路であることがわかっている時以外は、たいてい1/4Wを使用します)



7セグメントLEDをダイオード論理回路で点灯させる


7セグメントLEDは、7つのLEDを数字の形に並べたものです。適当なLEDを点灯させることにより数字を表示させますが、通常7つのLEDはカソードまたはアノードが共通端子として設定されています。

*A-com(アノードコモン)K-com(カソードコモン)と言います


さて数字を表示させようとした場合、7つのスイッチが必要になります。しかし、どのLEDを点灯させるかは数字によってまちまちですので、スイッチ操作はかなり面倒になります。そこで、10個のスイッチを用意し、どれか1つスイッチを押せば、望みの数字が表示されるような回路を考えてみます。
右図の解法ではダイオード論理和回路をたくさん使っています。回路は都合上"1"から"3"まで表示させる分しかついていません。ここで回路を見てみましょう。"1"を表示させるためには、7セグメントLEDの、
bとcのLEDを点灯させれば良く、"2"を表示するには
a,b,d,e,gを点灯させます。また、"3"を表示させるには、
a,b,c,d,gを点灯させます。
ここで入力(スイッチ)と出力(LED)の関係は、
LED-aはスイッチ2とスイッチ3がとれか一方でもONであれば点灯、
LED-bはスイッチ1,2,3どれかONで点灯、
LED-cはスイッチ1,3どれかONで点灯
LED-dはスイッチ2,3どれかONで点灯
LED-eはスイッチ2がONで点灯
LED-fは常に消灯
LED-gはスイッチ2,3どれかONで点灯

ということになります。”どれか〜"というのは論理和回路で実現できますから、右図の様に作ることができます。

本当にこうやって作る??

さて、上記の回路では1から3までしか表示できませんが、永遠とスイッチ10まで作りこめば、スイッチポンできちんと数字を表示する回路が作れます。ところが実際は、これはあまり良い実現例とは言えません。なぜかというと、もっとスマートに作る方法があるからです。これらのことを簡単にできてしまうICがあるからです。

次の章ではこれらを市販の"標準ロジックIC"を用いて一発でやってしまう方法を紹介します。


*これは絶対に使わない、というもんでもないです。やはり無人島にでも行ったら虫でもなんでも食べるように、超困難な状況に陥った場合、伝家の宝刀的にひょろろっと使う場合があります。というだれかさんはかなり人目のつく場所に置いていたデモ製品にこれを使っいました。・・・具体的にはBCDto7セグメントデーコーダーの 、7447がどうしてもその状況では使えず、ただダイオードはふんだんにあったのでC-MOSデーコードカウンタとダイオード100本弱で超大型7セグメントLEDのデモボードを作ったのでした。その時、”こんなこと,どこまで論理圧縮したらできるの?”という質問が出ましたがそういうもんじゃないんです。

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