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労基旬報は労務管理の専門紙です。

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〒161−0033  東京都新宿区下落合

 

韓国の非正規労働者 
柴田 武男 先生
 1952年東京生まれ
 東京大学大学院経済学研究科第二種博士課程満期退学。
 公益財団法人日本証券経済研究所主任研究員を経て、聖学院大学大学院政治政策学研究科教授を経て同大講師
 専門 企業経済論 
 近著『奨学金 借りる時・返す時に読む本』弘文堂

韓国の非正規労働者


1610万人のうち非正規837万人
 韓国の労働問題が深刻化したのは1997年の金融危機への対策としてIMF構造改革プログラムを受け入れたからです。 市場開放策、 規制緩和策の一環として1998年2月に派遣労働制が導入され、 非正規労働者が激増し、 同時に15%もの実質賃金の低下がありました。
 労働法制を緩くして、派遣労働で働く人の権利を弱くして賃金を下落させるという手法は日本でも採られています。 日本は1986年の労働者派遣法の成立から1999年の改正で原則自由化となり107万人から2008年のリーマンショック直前には399万人と増大しています。
 日本では何度かの法改正で派遣労働が拡大されてきましたが、 韓国はかなり急激な導入で働き方が一挙に大きく変わりました。 韓国非正規労働センターのシンポ資料にある図で確認すると、 韓国の非正規労働者問題が深刻なのはよく理解できます。
 2008年には52%と半数を超えています。 韓国の労働者約1610万人のうち約837万人が非正規労働者だったのです。 賃金格差も厳しいものがあります。
 2001年から17年の賃金格差の統計を確認すると、 正規に対して非正規の賃金水準は53・9%から46・8%まで上下して、 2017年では51%です。 正社員に比較して非正規労働者はほぼ半分の賃金水準となっています。 零
細事業非正規労働者は大企業の半分の賃金
 さらに特徴的なのが、企業別での割合の違いです。 2002年で1〜4名の零細事業では92・3%、 300人以上の従業員数の大企業では13・5%となってます。 韓国は零細事業者が多いことも特徴です。 経営力としても脆弱な零細事業主が雇用できるのが非正規労働者ということで、 大企業は正社員がほとんどで賃金が高く、 零細事業で働く非正規労働者はその半分の賃金で働くという超格差社会の構造が表れています。
 文在寅政権の目玉政策に最低賃金を上げるということがあります。 韓国の最低賃金は全国一律です。 18年7月の平均市場為替レートで828・5円です。 日本は都道府県別の最低賃金ですので、
都道府県別にみると韓国の最低賃金である828
・5円を上回る都道府県は13にすぎません。 それは東京、 神奈川、 大阪などで、 最低賃金が低い沖縄などは韓国の最低賃金より低い水準となります。
 こうみると、 韓国の最低賃金は日本のそれより低くないということになります。 この最賃の引上げが零細事業者が多いという韓国の社会構造と激突するわけです。 零細事業が多い 「サービス業では最低賃金によるコストアップを価格に転嫁できるところもあるだろう。 しかし、 コンビニエンスストアなどでは価格転嫁が難しく、 オーナーやその家族が働く時間を増やしパートタイムの従業員を雇わなくなる店も増えるだろう」 (同上)ということになります。 先述した、 非正規労働者は1〜4名の零細事業では92・3%という数字がこの問題を深刻化しているのです。
 最賃を上げると零細事業者の経営を直撃するという問題をどう回避して、 非正規労働者の賃金を向上させるのかという難しい問題があります。

零細事業者企業の経営対策が必要なのに今年10月にソウル市に視察してその質問をしたことがあります。 ソウル市の労働政策の担当官は、 最賃の引上げと同時に零細事業者への対策をしておくべきだったと語ってました。
 零細事業者の経営を厳しくしているのが高い家賃 (フランチャイズの契約料ロイヤリティ) それとクレジットカードの手数料です。 特に、 高い家賃がソウル市では問題だと指摘して、 何とか家賃を引き下げる方策を講じて、 あるいは家賃補助なども検討して、 そして最賃の上昇をすればこれほどの反発はなかったと言うことです。
 ソウル市だけでなく、これは韓国社会全体の問題でもありますから、 文在寅政権にも繋がる話です。
 図表を見ると、 それでも韓国社会の非正規労働者について改善の試みも読み取れます。 2002年から17年にかけて非正規労働者の割合はほぼ全ての企業別割合で低下しています。 1―9名の零細事業者においてはこの期間で約20%程度改善されています。 文在寅政権になってこの改善の動きは顕著です。
 最賃の引き上げもしました。 ところが、 それでも、 文在寅政権は何もしていないという批判が支持基盤の労働団体から出されるのですから厳しいものです。 期待が大きい分、 失望も大きいのです。

6月25日号  自分の会社を知る方法 第三者委員会
報告を検討する〜 A


 東芝の不正会計が露見したのは内部告発です。東芝では、 不正会計に象徴されるような無理矢理業績を誇大に報告させるパワハラ地獄が12年頃に頂点に達していたようです。 それに堪えられず、一人の社員が詳細な証拠書類を添えて、 証券取引等監視委員会に内部告発しました。 これを受けて「2015年2月12日、監視委が東芝に対して金融商品取引法に基づく「開示検査」 を行った」(小笠原啓 『東芝 粉飾の原点 内部告発が暴いた闇』 16年、 日経 BP 社) のが発端です。
 証券取引等監視委員会は東芝の不正会計を指摘します。 内部告発はその通りだったという公的機関のお墨付きです。 東芝は、 この指摘を受けて室町会長を委員長として内部関係者で特別調査委員会を立ち上げますが、そんな内部組織では誰も信用しません。 そこで、「特別調査委は東芝の不正の全容を調査しきれず、 5月に外部の弁護士や会計士からなる第三者委が立ち上がる。 第三者委は約2カ月かけて東芝社内を調査、 7月20日に調査報告書を提出した。
09年3月期以降の7年問で1500億円超の利益水増しがあったと指摘し、 経営トップの関与も認定した。 これを受け、西田厚聰と佐々木則夫、田中久雄の歴代3社長と、 関与した経営陣が辞任に追い込まれた」 (前掲、 小笠原著) ということで、 それがここで検討している第三者委員会報告書です。
 この問題を早期から追求してきた 『日経ビジネス』 編集部では、 内部関係者から情報提供を募ったら、 800人以上が応じたということです。 不正会計を当事者として知っている東芝関係者が見つめる中で、 いくら東芝から依頼されたとしてもいい加減な報告書は出せないわけです。 第三者委員会は、 著名な弁護士などから構成されていますから、 彼らとしても東芝に義理立てしていい加減な報告で無能と罵られれば立場がないわけです。だから東芝の第三者委員会報告書には一定の役割があり、 役に立つのです。

 ところが、 実際に読むと、 何かもどかしく本質に迫っていないという印象も否定できません。 そこで、 やはり第三者委員会報告は当てにならないという批判が出てきます。 では、 第三者委員会報告書の問題点は何なのか、 それをどう見抜くのかということになります。 この第三者委員会報告書の問題点を見抜く、
とっておきの手段があります。 今回は、 その秘訣を披露します。
その秘訣とは、 第三者委員会報告書格付け委員会を利用することです。そのホームページ http://www.rating-tpcr.net/)によると、 「第三者委員会等の調査報告書を 「格付け」 して公表することにより、 調査に規律をもたらし、 第三者委員会及びその報告書に対する社会的信用を高めることを目的」 とした委員会です。 この委員会は具体的に格付けをしています。「委員会での議論に基づき、 各委員が、 A、 B、C、 Dの4段階で評価します。 なお、 内容が著しく劣り、 評価に値しない報告書についてはF (不合格) とします。」 という厳しい内容です。
 Fは 「不合格」 と言うことですから、 弁護士の仲間内の報告書に本当にFなんかつけるのかという疑問も最もなので、 東芝の第三者委員会報告書の評価を確認してみましょう。 C4名、 D1名、
F3名という厳しい評価です。 3名の評価委員が不合格という厳しい評価です。 A、 Bは一人もいません。 評価の基準は日本弁護士会連合会による「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」 (http://www.rating-tpcr.net/wp-content/uploads/guide_line.pdf) で
す。 日弁連は色んなガイドラインを作成していますから、 弁護士が関わるであろう業務に関してこうしたガイドラインを作成しても不思議はありません。
 それでは、 第三者委員会報告書格付け委員会とは何でしょうか。 委員の顔ぶれをみると、 委員長の久保利英明弁護士を始めとして、 錚々たるメンバーです。 注目すべきは「本ウェブサイトの運営費用を含めた当委員会の運営に要する費用は、 その全てを委員による寄附で賄うこととします。」 ということで、 ボランティア活動どころか持ち出しです。 そこまでして格付け委員会を立ち上げて、 第三者委員会報告をチェックするという作業を続けているのは、 これが弁護士の業務として欠かせない収入源になるという期待もあります。 それには、 社会から高い評価を得る必要がありますから厳しい採点となります。
 評価の理由は詳細に記されていて、 「いかなる要素を重視して評価を行うかについては各委員の裁量に任される」 としています。 つまり、 各委員の見識が問われると言うことになります。 委員長の久保利さんは東芝の報告書についてF不合格です。 その理由として 「東芝のためだけに作成され、 第三者に依拠されることを予定せず、 責任も負わない」 「株主、 投資家、 証券市場、 ユーザー、 取引相手を視野に入れない報告書」 であるから、 そもそも第三者委員会報告とは言えないという判断です。 形式だけでなく内容についても、
「不適切」 と 「不適正」
の違いを重視して 「不適正」 とは 「違法若しくは故意による不正」 を意味する。 経営判断が違法の認識の下になされたのであれば、 経営者の法的責任は免れない」 という理解から、 「不適切な会計処理」 をしたとする東芝の報告書では、 「トップの認識の有無も、 故意の存否も調査・認定していない」 と徹底的に批判しています。   (続)
働き方改革 最前線
3月25日 掲載予告 続きは本紙をごらんください。

第2回 東芝の不調を労務管理から

自由な社風で開発した フラッシュメモリーだったが・・・
 
 東芝の不調を労務管理から 東芝の凋落は不正会計問題からと理解されていますが、そうではありません。その根源は、労務管理の問題だという話をします。
 東芝の経営危機をひとまず救ったのは東芝メモリーの2兆円の売却です。この虎の子の東芝メモリーは、フラッシュメモリーという技術が根幹となります。それを創造した天才エンジニアが東芝にいました。舛岡富士雄氏です。
 彼は同時に評価されない不遇なエンジニアとしても知られています。東芝が彼を評価していたら日本は半導体事業で圧倒的な勝利を収めていたとさえ言われています。勝利を収めたのは、それを正しく評価して改良し、低価格で販売できたライバル企業のインテルでした。

 1971年に東芝に入社し、数々の特許を取るという抜群の業績を上げながら舛岡富士雄氏は評価されませんでした。偉大な発明をしながら、なぜ東芝で評価されなかったのでしょうか。NHKの異色番組に「ブレイブ 勇敢なる者」があります。昨年11月23日の「 勇敢なる者「硬骨エンジニア」」という番組が舛岡富士雄氏を主人公にしています。出社は気まぐれ、来れば寝てばかり、なんと昼間から大部屋のオフィスで飲み始めて部屋中が酒臭いという有様です。舛岡富士雄氏の率いる部下たちも個性の塊でした。その彼らが当時の常識からかけ離れていたフラッシュメモリーを発明して、新型メモリーを開発していきます。半導体の開発の最先端では、常識にとらわれない発想が必要です。舛岡富士雄氏のチームは東芝でももっとも自由闊達でしたが、当時の東芝はそれが許される自由な社風がありました。舛岡富士雄氏は会議に出ない、部下はそういえば舛岡さんは何をしていたのか自問自答する有様ですが、不思議なことに圧倒的な成果は出していたのです。

 当時の東芝はDRAMで莫大な利益を上げていて、舛岡の発明の凄さは東芝に理解されませんでした。皮肉なことに、それを理解したのがライバル企業だったのです。番組に登場するインテルのフラッシュメモリーの開発責任者は、フラッシュメモリー事業部を立ち上げ莫大な利益を自社にもたらし、シリコンバレーに豪邸を構えていて、アメリカンドリームを実現しました。東芝が発明したフラッシュメモリーを改良して量産化して低価格で販売して成功を収めたのはインテルでした。発明した東芝を追い抜いて、インテルはフラッシュメモリーのトップシェアを獲得します。方や東北大定年後、舛岡富士雄氏は仙台のオフィスビルに一人で事務所にいます。日本の企業からどこも声が掛からなかったのです。
 やっと新型フラッシュメモリーが量産化され利益を生み出すとき、1994年にチームを外されて舛岡さんは東芝を辞めて東北大学教授に就任します。皮肉なことに、辞めてから新型フラッシュメモリーは東芝に巨額な利益をもたらします。
 
 東芝退職後に、舛岡さんはフラッシュメモリーの発明の対価として10億円の支払を求める裁判を東芝に起こします。裁判は06年に東芝が舛岡さんに8700万円支払って和解します。舛岡さんはお金が問題ではない、評価が欲しかったと番組で述べています。彼を評価せず、裁判にまで追い込んだ東芝に対して、舛岡さんは感謝している、東芝にずーといたかったとまで言い切ってます。感謝しているという東芝に舛岡さんは裁判を起こします。舛岡さんが変わったのか、それとも東芝が変わったのでしょうか。舛岡さんは変わりません。変人のままです。東芝が変わってしまったのです。
 和解金を払っただけでなく優秀な技術者を失った東芝は、インテルにその牙城を奪われます。(3月25日号へ)

第1回 ビジネスの原点は問題解決能力 2月25日号から抜粋

 障がいを持つ方に作業工程を合わせる 日本理化学工業

 ビジネスを初めて、成功するには、この三つの要素、問題発見能力、社会参加意識、そして問題解決能力が求められるのです。 このお手本という企業が、日本理化学工業です。同社のホームページ(http://www.rikagaku.co.jp/handicapped/index.php)によれば全社員81名中60名、全体の70%以上が知的障がいのある社員だというのです。福祉施設ではありません。れっきとした売上高6億3000万円(14年)という株式会社です。昭和35年知的障がいのある2人を雇用したのがスタートで現在に至っています。近くの養護学校からせめて職業体験をと求められて始めたのがきっかけです。二人の女子学生のあまりに勤勉な働きぶりに採用を決めましたが、そこから難題続出です。拡大する業務に知的障がいの従業員はなかなか対応出来ません。そこを解決していくのです。チョークを製造する会社ですから、原料を計量して混ぜ合わせるという作業工程がありますが、知的障がいがあると計量という作業ができないのです。そこで、原料毎に色分けして、錘もその色に合わせて計量しやすくして、作業工程を知的しょうがい者に合わせたのです。結果的に、作業工程は効率化されます。それは、健常者にとっても効率的で便利なことです。知的障がい者に作業工程を合わせることは、全体の作業を効率化することにもなるのです。
 この障がいを持つ方に作業工程を合わせるという工夫は、これからの高齢社会にも必要なことです。身体能力が衰える高齢者にも働き続けられる労働環境が可能となります。なにも、障がい者にだけ特化した仕組みではないのです。障がい者が働けると言うことは、働く人、全てに優しい労働環境が実現できるのです。

 ここでもビジネスの原点が発揮されています。障がい者の働く場所がないという問題にに気がつく、そして、その問題を引き受ける。さらに、障がい者を雇用することで生ずる問題を解決していく、それでビジネスを継続していけるということです。それにしても、日本理化学工業の工夫は徹底しています。それは能力だけの問題ではないのです。目の前にいる障がい者が困っている、何とかしなければという強い使命感が工夫を生み出しているのです。使命感はその世話っている問題から生じます。ただ、自分の利益だけを考えたら出来ることではありません。働きたいと一生懸命な障がい者の姿と、障がい者にも働きがいを、生き甲斐を与えたいという強い意識が支えとなってます。その最初の一歩が、障がい者に働く場所がない、という問題を発見したことです。

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