真宗手紙講座ー依頼状の書き方ー
依頼状の書き方
寺院の教化活動では、この依頼状を出すことが多くあります。法要の法話依頼や、落語会や祝辞のお願いから、地域の関係団役員としての依頼状など、お願いする相手もさまざまです。また寄付の依頼などを含めると、依頼状の持つ重要さが際立ってきます。
依頼状には、寄付や講演など、当方に利益になる事柄と、新規取引、調査など相手に利益が還元される場合とがあります。前者は純粋に相手の好意に訴え、後者は助力を仰ぐという姿勢が望まれます。
いずれも相手には義務のないことを頼む以上、できるる限り礼を尽く丁寧な文面に心がけます。頭語、結語は必ず入れることが原則です。また講演、原稿依頼では、宗は外の方にお願いする場合は、諸礼も明記します。場合によっては切手、封筒などの返信のためのハガキや封筒も配慮します。
以前、講演会にキリスト教の牧師にお願いし、まずは電話で了承を取り、手紙で内容を書き出状し、さて講演会の折、待てどもご講師の到着はなく、教会に電話を入れると、電話も受話器にそた方がおでになり、事情を伝え、幸い近くであったので、時間遅れの開催で済んだことがあります。手紙を出しっぱなしではなく、間じかに電話を入れること、また出講するほうは、手紙を受け取ったら、了解の確認の意味でハガキでもよいので出しておくと、双方齟齬なくことが運びます。
寄付のお願いは、趣旨を書き、具体的な内容は、記書きで、募金目標額、申し込み方法、入金方法、締め切りなどを記します。
■どのような場合に書くか
親交のある相手にごく軽い頼み事をする場合は、何しろ、依頼である以上、こちらの利益の問題であって、相手にはこちらの意向に従う義務はないのだから。
また、相手の時間を長く拘束する依頼の場合、が常識である。当方の都合ばかりを主張する性急な依頼は、依頼の目的を達成できないばかりか、相手の心証を害することになる。依頼は、相手の好意だけがよりどころであることをくれぐれも忘れずに。
■どのように書くか
・
■何に注意するか
・子会社や下請会社に依頼する場合も、相手にもメリットのある内容だからといって、高圧的な書き方をしたり、慇懃無礼にならないよう注意したい。
・ 返信を求める場合は、返信用切手と封筒を同封する。費用を要する場合は、請求してもらうよう頼むなど、相手の負担にならないよう十分な配慮が必要だ。
原稿執筆の依頼
拝啓 さわやかな初秋の候、先生にはますますご健勝の二利ご双行のこととお慶び申し上げます。
さて、突然のお願いでまことに恐れ入りますが、当寺寺報第○号に「○○○○」のテーマでご寄稿賜りたくお願い申し上げます。
先生が雑誌などに発表されておられますご法話を拝見いたし、このたびの○寺○○○記念号に先生の玉稿をいただきたく、門徒・役員一同熱望いたしております。(2)
ご多用の中、恐縮でございますが、下記のとおり原稿ご執筆お願い申し上げます。
なお、ご諾否のお返事を、同様の葉書にて、ご一報いただきますれば幸いにございます。
まずは略儀ながら書面をもってお願い申し上げます。
敬具
記
一、テーマ 「○○○○」
一、原稿締切 ○月○日
一、
原稿枚数 四○○字詰原稿用紙一○枚
一、発行部数と配布先 2000部 当寺関係門信徒
以上
ポイント
*
原稿や講演の依頼は、寺院など公的な立場なので、私的な感情を交えないで書く。
*
相手が職業的な文筆家である場合は特に、依頼理由を書く。
*
テーマ・原稿枚数・締め切りは明確に書く。
*
依頼状は送ったまま放置せず折をみて相手の承諾を確かめる。
言い換え
(1)常日頃からご高著を拝読し、いつかは玉稿を頂きたいと念じておりました。このたび当寺〇着年号を発刊するにあたり、門徒一同ぜひ先生にと熱望しております。
(2)お伺いしてお願いすべきところではございますが、とりあえず書面にてご協力のほどをお願い申し上げます。
報恩講講師への依頼状
(ポイント)
何度か依頼している相手なら、毎回好評なのでまたお願いする、といったニュアンスで作成する。
拝啓 慈光のもと 先生にはますますご清栄にて教法流通のこととお慶び申しあげます。(1)
平素より格別のご教導を賜わり、厚くお礼申しあげます。
さて、先般、お電話にて当山報恩講のご出向をご承諾いただきましたこと、まことにありがとうございました。門信徒一同、先生の法味あふれる有益なお話を楽しみに致しております。(2)
つきましては、詳細は左記の通りでございますので、まだ日にちもございますが、何とぞよろしくお願い申し上げます。
敬具
記
1. 日時
2. 場所
3. 依頼内容 二日間、一日目午後のみ2席、二日目午前・午後の2席づつ
4. 衣体 白衣・黒衣・輪袈裟
5. 宿泊場所 〇〇旅館 住所 電話番号
当日は、昼食をご用意してございますので、恐れ入りますが 午後12時半頃までにご到着くださいますようお願い申し上げます。電車の場合は、お時間が確定しておりましたら、〇〇駅にお迎えに参りまので、その旨をお伝えくださいませ。
以上
ポイント
*
簡潔に書く。
*
手間や時間をとらせる用向きを依頼する場合は、電話ではなく依頼状の形をとる。
*
相応の時間的余裕をもって発信する。
* 「○○についてのお願い」「○○ご依頼の件」など、文頭に件名を簡潔に記してもよい。。
* 用件が二つ以上の場合や内容が複雑な場合は、主文で依頼の目的、趣旨を関単に述べた上で、詳細は、別記または別紙に箇条書きにまとめる。
*
主文では、依頼するに至った経緯や理由、目的を記す。
書き換え
(1)
* 秋晴れの空の広さに、み仏のお慈悲の広さを思う昨今、先生には、ご健勝にてお念仏ご相続のこととお慶び申し上げます。
*
慈光照護のもの、うるわしいうご法義ご相続のこととお慶び申し上げます。
(2)
門徒一同、法義深厚の法味豊かなお話を拝聴できることを、今から楽しみにしております。
*
門徒一同、先生の大悲信順のご説法を、今から楽しみにしております。
原稿締め切り延期の依頼
拝啓 慈光のもと、ますますご清栄のことと存じます。さて、さっそく勝手なお願いとなりますが、先般お引き受けした原稿の件、恐縮ですが、締め切りを〇月〇日まで、延期していただけないでしょうか。
実は、当初考えていた構想にもう一章加えて書くこととなりました。(1)ようやくめどが立ちましたので、〇日までご猶予をいただけましたら、確実に仕上げることができると存じます。
ご迷惑をお掛けして大変もうしわけわりませんが、何とぞご配慮くださいますよう、まずは取り急ぎ書中にてお願い申し上げます。
敬具
ポイント
* 遅れた理由を書く。
* 丁重、かつ低姿勢で相手の理解を得る文面で。
* 原稿提出の日時を明かにする。
言い換え
(1)
一応の完成はできているのですが、少し手を加えよりよいものを仕上げるために
*
親類に不幸があり、急遽、郷里に帰り原稿執筆の機会を失い
(2)
* 当方の事情をお察し頂き、恐縮に存じますが、何とぞご猶予を下さいますようお願い申し上げます。
媒酌人の依頼
拝啓
○○の候、いよいよ御健勝にて二利満足のこととお慶び申し上げます。日頃はなにかとご教導頂き誠に有り難うございます。
さて、突然のお願いで恐縮ですが、この度、愚息の婚約がようやく調いまして、6月18日に結婚式という運びになりました。お相手は、〇〇〇〇と申しまして、〇とは一昨年から交際しておりまして、昨秋結婚の決心を聞かされました。
つきましては、〇の結婚のお仲人を〇〇寺様にお引き受け頂きたく謹んでお願い申し上げます。御媒酌をお願いする方については、本人とも相談を致し、山田家からもぜひにとのことですので、両名のことを最もよく知っていて下さる〇〇寺様にお願い致したいのでございます。(1)
御多繁中誠にお手数をおかけ致しますが、なにとぞよろしくお願い申し上げます。また、今後いろいろと人生上のご指導も賜りたく存じます。いずれ御都合をお伺いしたうえで、親子そろってお願いに参上致しますが、まずは、書面をもちましてお願い申し上げる次第です。(2)
敬具
ポイント
*
親から送る場合は、本人も強く希望し、相手の親も承諾していることを書き添える。
*
新婦を知らない場合は具体的に相手の紹介もする。
言い換え
(1)
両名はじめ両家とも、ぜひ恩師である〇〇先生ご夫妻にご媒酌の労をおとりいただけないかと存じましてお願いする所存でございます。
* 両家とも、先生をおいて他にご依頼すべき筋はございません。○○校長としてご多繁な毎日をお過ごしのこととは存じますが、何卒ご厚情を賜りますようお願い申し上げます。
*
つきましては、ご経験の豊富な〇〇様にぜひともご媒酌人をお願いいたしたく筆を取りました。
(2)
いずれあらためまして二人でお願いにあがりますが、何とぞお聞き届け下さいますよう‥
*
近いうちに参上して正式にお願いしたいとは存じますが‥
* まずは略儀ですが、書面にてご媒酌人のお願いまで申し上げます。
本人から
拝啓
うららかな春の日ざしに心なごむこの頃、先生にはいよいよ御清祥のことと大慶に存じます。平素より格別の御指導を賜り誠に有り難うございます。
さて、たいへん不躾なお願いで恐縮ですが、この度、私の婚約がようやく調い、○月には結婚式という運びになりました。相手は、○○○○と申し、現在は〇幼稚園に勤務し私とは二年前から交際しておりました。千葉県にお住まいの○○家の三女でございます。
つきましては、私共の結婚のお仲人を○○様にお引き受け頂きたく謹んでお願い申し上げます。御媒酌をお願いする方については、二人で相談を致し、また両家の了解も得まして、私のことを最もよく知っていて下さる○○様にぜひお願い致したいのでございます。
御多繁中誠にお手数をおかけ致しますが、なにとぞよろしくお願い申し上げます。(1)また、今後いろいろと人生上のご指導も賜りたく存じます。いずれ御都合をお伺いしたうえで、二人でごあいさつに参上致しますが、まずは、書面をもちましてお願い申し上げる次第です。
敬具
ポイント
*
両家の親も承諾していることを書き添える。
*
新婦を知らない場合は相手の紹介もする。
*
今後のご指導をあわせてお願いする。
書き換え
(1)
まことに御厄介をおかけ致しますが、両名の新生活の第一歩にもお導きを賜りたく存じます
(2)
ご多繁な先生を煩わせるのも申し訳なく存じますが
(2)いずれ日を改めまして、二人でごあいさつに参上致しますが
*
無理を承知でお願い申し上げますが、
*
近いうちに参上して正式にお願いしたいと思いますが、
縁談の依頼
親から
拝啓 慈光のもと、ご一門の皆様にはいよいよご清祥のこととお慶び申し上げます。平素より何かとご教導賜りますこと感謝申し上げます。
さて本日は、○○寺様に折り入ってお願いしたいことがあり、お手紙を差し上げます。じつは、○○別院に勤めております当寺次男○○のことです。今年○○歳になりますが、未だに独身です。わたくしどもの周りには数年前より本人に申しておりますが、縁任せてと急ぐ様子はございませんでした。ところがこのところ、本人も不安になるらしく、そろそろ重い腰を上げかかっております。別院は男性ばかりで、なかなかよいお相手が見つかりません。(2)
そこで、ご交友の広い、また多くのご良縁をおまとめになっている○○寺様に、どなたかよい方を紹介していただければと思い(3)、謹んでご依頼申し上げる次第です。
本人は、明朗快活で子供が好きな人であればと申しております。
後日改めまして履歴書と写真をお持ちいたしたいと思いますので、この件お心に留めておいていただければ幸いです。
敬具
ポイント
*
相手に希望する条件があれば書く。
*
人物紹介は欠点や短所も隠さず書く。その場合、長所を述べ「しかしながら」と短所を述べる
*
履歴書同封で依頼もよいが、本来的には相手の受諾を受けてから渡す。
言い換え(1)さて、本日は長男〇〇の縁談につきお願い申し上げたく筆を取りました。
*
本日は、長男〇〇のことでぜひお力になっていただきたく、お手紙をさし上げました。
(2)*仕事も落ち着き、ようやく結婚を考え始めたようです。
*
これまでは仕事仕事の毎日でしたが、ようやく結婚を考える余裕も出てきたようでございます。
(3)ご交際の広い〇〇様のお力添えで、よい方をお引き合わせいただければと
*
大学で教鞭をとられ、色々な女性とも面識がおありかと思い
本人から
拝啓
慈光のもと、陽春のみぎり、先生にはいよいよ御清祥にてお過ごしのこととお慶び申し上げます。
さて、本日は折り入って、お願いがございます。(1)実は、私こと、今秋から三年間の予定で米国教団に開教使として赴任することが内定しております。ご存じのとおりまだ独身ですが、赴任の折にはぜひ、パートナーを得てと考えております。誠に厚かましいお願いではございますが、先生のご存知の方でどなたかご紹介願えればと(2)、ぶしつけなお手紙を差し上げる次第です。日を改めまして、履歴者などを持参いたします。いつも願い事ばかりで勝手をもうしますお許しください。何とぞよろしくお願い申し上げます。
敬具
ポイント
*
相手に希望する条件があれば書く。
*
履歴書同封で依頼もよいが、本来的には相手の受諾を受けてから渡す。
言い換え
(1)
さて本日は、誠に厚かましいお願いを申し上げます。
* さて、たいへん不躾なお願いがございます。
(2)先生のお力をお借りできればと思い、突飛なお願いで恐縮でございますが
* まことにご迷惑とは存じますが、お心当たりの方がおられましたら
* ご交際の広い先生の、お力を仰ぎたく