01年8月30日 大須賀発蔵先生によるカウンセリングセミナーより

出会いの体験 ―SK法―の学習を通して

     SK法―SKのSは、青年(Seinen)であり、Kは(Kyoiku)の略で、S42年文部省の要請による青年教育調査研究協議会において新しい社会教育の試みとして創られたグループアプローチで、一般の社会教育や産業教育の場面で活用されている。あるまままの自分として存在することを、他のメンバーが受け入れ、共感を共にし、自分をすなおに表現できる体験学習法。

01.8月30日、当日のセミナーは、「SK法・出会いの体験」と題した体験学習会でした。

この体験学習法のレポートです。

整然と並べられた机に、参加者約50名が、大須賀講師の話に耳を傾ける。「いま皆さんがさんが前を向いて座っている状態は、一番近くの隣や後ろ、前の人が見えていない状態です。それでいて集団となっている。これが今の社会かも知れません。お互いが感じあえるためにはどうしたらいいか。そんな心理的空間を作るためにはどうしたらいいか」そんな語りかけから講義が始まった。

まずこの学習法の概要をテキストから抜粋します。

1.        時間としては、1時間30分から3時間の範囲で完了すること。

2.        人員は、数人から150人ぐらいまで、とくに制限する必要のないこと。

3.        場所は、人員が収容できればよく、特に選ばなくてすむこと、椅子席でも、畳のへやでも、時には野外でもできること。

で、年齢や性別、職業の違いも支障とならず、安心して話せる雰囲気が維持され、全員がありのままを発言できること、知的なやりとりに終わることなく、こころのふれあいや、こころのつながりが実感できることを大切にする。

この学習で最後まで一貫しているのが、メンバーが安全を感じられるようなプロセスを経験すること。安全とは、あるがままの自分として存在することを、他のメンバーが受け容れていることを感じている状態のこと。

机を片づけ、全員が1つサークルとなり、これから進められる学習について、大須賀講師より説明がなされた。

全身をリラックスさせ、目を閉じ、両手を前に手のひらを外に向けて保ちます。目を閉じたまま、そのままゆっくりと前進する。やがて偶然の状態で手と手が触れ合ったら、相手の全人格を手を通して感じます。やがて手を離し、また同様に他者と手を重ね、手を通して相手を感じます。私が合図(講師)したら、その人とペアをつくります。

初めて体験する参加者は、手のひらを通して相手に感じるという体験を行いました。やがてペアができ、閉じていた目を開け、その方と10分間の心の交流を持ちます。やがてそのペアと、隣のペアが合流し4人のグループで交流を持ちます。1コマ1コマに大須賀講師から、なぜそうすることが大切なのかと言う失敗例やアドバイスが入り体験学習が進められていきました。この一連の学習概要をまたテキストから抜粋してみます。

SK法のすすめ方の実際

1.      オリエンテーション

(SK法の趣旨・方法のあらましを説明する)

(例)「これから行なうものは心のふれあいを深めることを目的としたものです。やりますことは、まず目を閉じて歩きまわり、触れた人とあいさつをしていただく。

つぎにペアを組んでおたがいに知り合うように話し合う。そのつぎには6人グループになって話し合いを行ない、最後に握手をしながら、メンバーがお互いに相手の印象を交換し合う。大体このようのことを行ないます。

椅子、机等を隅に片づけ、メンバーを円陣にして、その中で説明する。

2.        目を閉じて歩く

(例)「それでは、これから目を閉じて歩き、触れた人とあいさつするやり方を説明します。

まず、両手を胸まであげて、前に出してください。

その姿で目を閉じて歩き、手と手が触れたら、目を閉じたまま、声を出さないで、お互いに手を握り合ってあいさつをしてください。

あいさつが済んだら手を離し、また歩くというようにしえ、手と手が触れた人と次ぎ次ぎにあいさつをしてください。

できましたら、全員の人とあいさつするつもりでやっていただけたらと思います。

私が、『相手を見つけてください』といいましたら、相手のいる方はそのまま手を取り合って立ち止まってください。

さあ、どうぞ始めてください。」

3.        ペアをつくる

全体が動き始めて2〜3分過ぎたら「相手を見つけてください」と声をかけ、1分くらいのちに、

(例)「目を閉じたままで聞いてください。今、相手のいない人,手をあげてください。」

まだ相手のいない者同士をペアにし、全員がペアになったことを確かめてから「目をあけてください。」といいます。

4.        ペアで話し合う

(例)「今、偶然のペアができました。この偶然の縁を大切にする意味で、これからお互いに、自分のことを知ってもらい、相手のことをよく知る。お互いによい知り合いになるように話し合ってください。

時間は15分とりますから、どうぞ」

時間になったら手を打って合図する。

5.        6人グループを作る

(例)「これから6人グループでの話し合いに移りましょう。近くのペアに働きかけて、6人のグループをつくってください。」

通常、輪が大きすぎたり、ゆがんだ輪になったりしますので、リーダーは「ひざを一歩進ませて、小さく丸くなりましょう。」

と声をかけます。

6.        話し合いの説明

(例)「これから6人での話し合いに移りますが、この話し合いには、いくつかのルールがありますので、それを説明します。

トランプをするとき、親を決めますね。それと同じように、最初にメンバーの中からひとり親を決め、他のメンバーは子役になります。5人の子役は『親をよく知ろう』ということで、協力して親にいろいろ質問します。時計の針が回る順に交替して質問するようにします。

親はそれに答えてゆきますが、答えたくない質問には答えなくてもよいのです。

およそ10分間で、親は次のメンバーと交替します。親の左隣の人が今度は親になって、他の5人は子役で親に質問します。このようにして6人全員が親の役を一通り終わるまで、交替しながら続けます。

(例)「それでは質問の仕方のルールについてお伝えします。

イ)原則として親になった人について聞きたいことは、何でも質問することができますし、親はそれに率直に、できる限り手短かに答えるようにしてください。

但し、親の人格を傷つけたり、脅威を与えたりするような質問はできる限り、避けてください。

例えば、女性に年齢を聞いたり、最終学歴を聞いたり、あまりにもプライバシーに関することなどです。

親は答えにくい質問の場合には「答えにくいんですが。」と断ることができます。

イ)     また、あまり知的なもの、例えば、理論とか主義とか政治批評などの質問も避けます。

このような質門は答えるのに時間がかかりすぎます。ひとりの親の持ち時間は約10分、そのあいだに5人全員が質問し、親がそのつど答えるわけですから、1分程度で答えられる質問にしてください。

ルールはこれだけです。

7.        6人グループで話し合う

リーダーは10分過ぎたら手を打ち、「さあ、親は目印を左隣の人に渡して交替してください。」と合図し、メンバー全員が親の役割を果たすまで、合図を続けます。

8.        印象交換

9.        (例)「さあ、それではこれから、最初に親をやった人にメンバーはどんな感じを抱いたか、その人についての印象を、それぞれ順に手を握り合ったままで、親に伝えてあげてください。できるだけ率直にひとり30秒くらいの短いことばで伝えてください。

そして5人のメンバーから印象のプレゼントをいただいたら、親はそれについて、お礼のことば、感想を返してください。

次に、2番めの親に移って同じ要領で続けてください。なお、早くすんだグループは自由に話し合いをしていてください。

すべてのグループの印象交換が終わり、少し経ってから終了にします。

この学習法のねらいについて、「限られた時間のなかで、全員が参加し、最小限のルールにしたがいながら、お互いの気持ちや考えを理解し、心のふれあいを深めること」とテキストに示されているように、相手を評価するという関係ではなく、相手に関心を持ち、あるがままの自分として存在することを、他のメンバーが受け容れていることを感じていくという体験学習でした。最後に、用意されたコヒーをこの小グループの人たちと飲みながら、もし今日の体験学習がなかったら、この方と一生こころの触れ合いを持つことなく終わったであろうと言う感慨を持ちました。講義の最初に、大須賀講師が紹介された、上智大学の牧師さんの言葉「愛の反対は、無関心です」が、現代を象徴し、だからこそこうした学習の必要性があるのだという思いと共にセミナーが終わりました。(文責、西原)

引用テキスト SK法―心のふれあいをもとめてー

          財)日本産業カウンセラー協会・関東部会刊