いのちの学び寺報 「いのちの学び」は

                   2月・4月6月7月9月10月12月発行です。
                        執筆者は、西原祐治です

NO128 平成12年12月1日号
 1項 表紙

 2項 ミニ説法

 当寺の本堂仏前に、前卓があります。その上にお花やローソク立てがおかれています。この前卓を「六鳥型」といいます。なぜ六鳥というのかといえば、卓の全面に六羽の鳥が刻まれているからです。
 この六羽の鳥は、「阿弥陀経」に出てくる鳥たちです。阿弥陀如来のお浄土では、様々な鳥たちが、仏法を讃えて鳴いているのだとのこと。そして具体的に「百鵠(びょこう)・孔雀(くじゃく)・鸚鵡(おうむ)・舎利(しゃり)・迦陵頻伽(かりょうびんが)・共命(ぐみょう)」の六鳥が説かれています。その鳥が正面向かって右側からこの順に刻まれているので、六鳥型といいます。
 この中の、迦陵頻伽(かりょうびんが)と共命(ぐみょう)は、空想の鳥です。
 共命という鳥は、同体一つに頭が二つある鳥です。お経には、この鳥について次のように示されていると伺ったことがあります。
 昔、ヒマラヤの森の中に共命鳥は住んでいました。この鳥は同体が一つで、頭と心がそれぞれ独立していたので、考えることも、食べる好みも違っていました。それぞれが好きなことをするので争いが絶えません。飛ぶ方向も、片方が右と言えば片方は左という。また片方が寝たいと言えば片方は散歩したいと言い、一方が山の実を食べたいと言えば、一方は川で水を飲みたいという。
 ケンカばかりの毎日。ある時一方が、「こいつさえいなければ」と思い、「おいしい草だよ」と言って毒草を食べさせた。毒草を食べた一方は、「苦しくなってきたが、おまえ何を食べさせたのだ」と、恨みを抱きながら倒れました。そのとき、食べさせた側も、苦しくなり倒れそうになりながら、初めて気づいたのだそうです。「頭は二つあっても、同体は一つ。相手を殺すことは自分を殺すことだったのだ」と。
 味わい深い話です。現代の公害問題や国家間の戦争、近くでは夫婦や人間関係などにも当てはまります。
 しかしお経の核心は、この共命という身勝手は心を否定し排除するのではなく、包んで、抱き取っていくところに
あります。共命鳥は、他人事ではなく、私の心の姿を言い当てているようにも思われます。

 3項  今月の詩



ふみはずしましたが 気がつけば ここも仏の道でございました
          
                                                 榎本栄一

 ある座談会での質問でした。「浄土真宗の、すべての人が救われていく教えであるということが、ピントこない」。ご質問のように、すべての人の中に、私も入っているという理解では、何か他人事のようです。
 私は、「すべての人が救われていく」とは、「すべての人が救われていく慈しみでなかれば、救われようのない私である」ということですとお答えしました。
阿弥陀如来の慈しみは、行き渡らないところがない。これも他人事ではありません。私という存在は、条件によって、どのような生き方でもするという阿弥陀如来の人間理解です。しかしどこにあっても、阿弥陀如来のいらっしゃらないところはないと思うと、先のことは先に任せて、今を大切にできます。


 3項下段 仏事アラカルト

宗名について

Q  浄土真宗にも、お西とお東があると聞きましたが。

A お尋ねのように、確かに、浄土真宗にはお西とお東があります。しかし正式には、真宗十派といい、10のグループに分かれています。

Q 門徒宗とは、一向宗とか聞きますが、10の中にそうした宗派もあるのですか。

A 少し整理してお話しします。西方寺が所属している宗派は、通称お西、正式には「浄土真宗本願寺派」といいます。しかし浄土真宗と公称したのは明治五年からです。江戸時代は浄土真宗のことを、「一向宗」「門徒宗」「本願寺宗」などと呼び、名称が一様ではありませんでした。 安永三年(1775)、浄土真宗に統一すべく幕府に許可を得たのですが、浄土宗(増上寺)と宗名論争となり許可されませんでした。

Q では、一向宗、門徒宗とは、浄土真宗のことなのですね。

A そうです。その浄土真宗も10のグループに分かれているといいましたが、その中で一番寺院数の多い宗派が、お西、浄土真宗本願寺派です。お東は、真宗大谷派といい、他に真宗高田派、真宗興正派などといい、真宗○○派と名乗ります。

*資料 宗教年鑑(平成11年度版)

浄土真宗本願寺派10.476
真宗大谷派      8.694
真宗高田派      638
真宗興正派      486
真宗仏光寺派    384
真宗三門徒派    37
真宗出雲路派    64
真宗山元派      21
真宗誠照寺派    71
真宗浄興寺派    14

他に昭和に入り、戦後設立された宗派があります。
真宗長生派29・真宗北本願寺派5・浄土真宗同朋教団6・浄土真宗浄光寺派2・弘願真宗35


4項 集い案内(略)

4項下段 通信

●過日、浄土真宗のご門徒の方と話をしていたら、朝のお勤めの話となりました。その方は、毎朝、仏壇に向かい、「お父さんおはよう」と言って、お経をセットしてあるラジカセを「ガチャ」と押すのだそうです。そうするとお経のテープが流れ、その時間、仏壇を掃除をしたり、お花の水を換えたりするのだそうです。忙しい朝のことです。ありそうな話です。
 そこで忙しい方のために住職からのアドバイス。本当に忙しいときは、口に「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」と、2呼吸(息を出しながら念仏を称える、そ2回)ぐらい称えます。もう少し時間があるときは「願似此功徳 平等施一切 同発菩提心 往生安楽国」(ガンニシクドク ビョウドウセイッサイ ドウホツボダイシン オウジョウアンラッコク)と称え念仏をします。もう少し時間があれば、「重誓偈」か「讃仏偈」をお勤めします。もう少し時間があるときは「正信偈」をお勤めします。正しいのは正信偈をお勤めすることですが、カセット頼みオンリーはだめです。