読み物 
 
法要に際して、ご伝記や門主の消息が読まれるのが、真宗勤行の特徴である。

御文章の拝読

拝読点
 ・大切(オオギリ) 大切では少し低く(半音程度)読み終わって、息を継いでから次を読む。
 ・中切(ナカギリ) 中切では、2字または3字前からしだいに低く下がり(2音半)、息を切らずに次を読む。
 ・高切(タカギリ) 高切点では、声を高めに止めて、息を切らずに次を読む。
    *御伝抄に 他に持切(もちぎり)という声を引いて次を読む読み方があります。

 ・各章末尾の「引」印が、2字間に付してあるものは、2字とも延ばして読む  が、2字目をやや延ばして語尾を少し下げ気味で読む。

御文章拝読の作法

 別院においては、本堂の向かって左余間壇上右側に御文章が置いてあります。拝読の場合はその前に至って一捐の後、中啓を襟に差し、御文章箱を奉持し、右回りに下陣に向き、下陣に進み出て、ご代前前一畳目に横向きに着座します。御文章を奉持したままひざまずき、座前に御文章箱を置き、右手で中啓を襟元から抜き、両膝と御文章箱の間に横一文字に置きます。
 次に御文章の箱を両手で取って、蓋を御文章箱の右側に置きます。この時、蓋が仰向きにならないようにします。御文章を箱の中から取り上げて、頂いてから目の高さまで捧げて拝読します。
 御文章の終わり、初めの「あなかしこ」で御文章を閉じ、次の「あなかしこ」で頂いてから箱に納めます。蓋を両手で締めて、右手で中啓を取り、襟元に差します。御文章箱を両手で奉持して、そのまま立ち上がり、左回り(内陣の方を向いて回る)して、行道後、御文章箱を元の場所に置き、中啓を襟元より抜き一捐後、左に向き退堂します。
 行道中、階段の上り下りは1段づつ足をそろえて進みます。右回り、左回りで回転するときは、ご本尊に尻を向けないように回ります。

御文章(大派ではお文)

 蓮如上人は「文(ふみ)」とよんでいたが、本派では14代寂如上人が奥書に 「五帖一部之文章者信証院連蓮如対愚昧衆生所令和述之消息」と示されたことから御文章というようになったと云われます。
 蓮如上人お文の拝読を勧める。「御一代聞書」276、208章
 「あなかしこ」は平安朝末期頃よりつかわれだしたもので、親鸞聖人もつかわれているが、「あな」は「ああ」、「かしこ」は「恭敬の辞なり」と云い、あらもったいない、ああおそれおおいなどの意味です。

御文章の編集

 蓮如上人ご往生22年後(1521)、円如上人(9代実如上人の第3子、第10世証如上人の父)の編集。31才にて編集完了の日に往生。開版はそれより10数年後の第十代証如上人の時。
 265通より80通を収め、5帖とし、4帖は年代順、5帖目は年代不明なものを集めています。

御文章は蓮如上人のお手紙(文明3年上人57才の7月より御往生の前年の明応7年84才の11月まで)
 1帖目1通より3帖目第4通に至る40通(文明3年〜文明7年8月)めで、越前吉崎御滞在中
 3帖目第11通から4帖目第4通までの7通は(文明7年9月〜文明9年)、河内出口御滞在中。
 4帖目第5通から、同9通までの5通は、山科本願寺御滞在中。
 4帖目第10通から、同15通までの6通は、明応5年以後の大阪石山の御滞在中。
 第5帖目は年月の記載のないもの。
 本山では、宗祖月御命日(16日)には「信心獲得章」、正月(元旦章)を除く毎月1日には「聖人一流章」、
 5帖80通の他に、夏の御文章、御俗姓御文章があります

夏の御文章

 4通で第1通2通は、御往生(明応8年3月25日))の前年(明応7・1498年)5月下中、3通は同年6月中旬、第4通は同年7月中旬の御制作。
 本山では毎年、5月15日より8月15日までの90日間、御影堂にて正午拝読します。

御俗姓

 本山では、御正忌報恩講14日の御逮夜に引き続き御影堂で拝読します。

御伝鈔

 本願寺第三代覚如上人の著作。宗祖聖人の高徳をあらわさんがために、聖人一代の行状を記したもの。上下2巻の絵巻物と共に、永仁3年(1295)10月完成。時に宗祖滅御34年、覚如上人26才の御時のご制作です。
 本山では御正忌報恩講の中日初夜、御影堂にて拝読します。
 祖師前まえ下陣で拝読。上巻「仰ぐべし」で本を閉じ「信ずべし」で頂きます。

領解文

 蓮如上人御制作と伝えられています。領解とは安心のことで、蓮如上人の頃は、 一人ひとりそれぞれの領解を述べたようですが、第10代証如上人の頃より、大衆一同にて出言していたといわれています。現在の「領解文」は、天明七年(1787年)4月、本山から印刷して門末に配布されました。
大派では「改悔文」といい、内容は同じでですが「御恩報謝とぞんじ」の「ぞんじ」がありません。

35通のお加え御文章

 昭和15年3月、この5条80通を改編され、拝読用の御文章として30通を順讃される。同23年8月、法要儀式にて必要なものを加え35通を拝読用御文章と改編。平成8年1月1日、若干の改編を経て現在に至っています。この平成8年の改編では、初めてひらがなのご文章として蔵版されました。

御文章の拝読における伝承音の一部変更(平成8年1月1日より)

 日本語は古代より開音節語と呼ばれるもので、必ず最後が母音で終わる音節によって組み立てられています。撥音「ン」や促音「ツ」は漢字の影響によって平安時代に入ってから新しく生じた音節と言われています。漢字の中で「t]で終わる入声音は、原型とは多少異なるが、鼻にかなる、呑む、ふくむ、などという独特の鼻音(鼻的破裂音)で発音して伝えてきました。ですからお経の「ツ」の文字は鼻音で唱えます。しかし和語の「つ」(保つ)などは「つ」と発音して伝承されたものです。それが何時しか和語の「つ」と入声音の「ツ」が混同され伝承されました。平成8年の伝承音の一部変更はこうした経過の中で変更されたものです。
【拝読における伝承音の一部変更について】式務部・勤式指導所 H7/9宗報
1 和語(本来日本語・一(ヒトツ)・二(フタツ)・三(ミツ)・保つなど)の中で従来、鼻  音(鼻的破裂音)によって発音していた下記の文例に準ずる箇所を普通の   「つ」「tsu」と発音することに変更します。

  〈文例〉
   ワカ身ニハヒトツモアヒソフコト (御文章1帖第11通)
   ヒサシクタモツヘキニアラス   (御文章2帖第7通)
   フタツモミツモアルヘカラサル  (御文章2帖第8通)
   当流ニタツルトコロノ      (御文章2帖第10通)
   アヒソナワリツヘキモノナリ   (御文章3帖第9通)
   ヲクレサキタツ人ハ       (御文章5帖第16通)
   御タスケアリツルアリカタサ   (御文章5帖第22通)

2 従来、促音によって発音していた下記の箇所を「つ」「tsu」と発音する  ことに変更いたします。
   信心トイフコトハカツテ是非ノ  (御文章1帖第12通)
   後生ヲハカツテネカハス     (御文章4帖第2通)
   信心ノ沙汰トテハカツテモテ   (御文章4帖第12通)
   フツトタスカルトイフ事     (御文章5帖第2通)

3 漢字音(中国音の日本語化したものー(イチ)・七(シチ)・八(ハチ)・吉(キチ)・越(エ  チ)・日(ニチ))の下記の文例に準ずる箇所を普通の「ち」と発音することに変更いたします。
  〈文例〉
   コノタヒノ往生ハ一定ナリ    (御文章1帖第5通)
   万一相違セシムル子細      (御文章4帖第6通)
   三途八難ニシツマン事ヲハ    (御文章2帖第1通)