…《十四歳》 《火の粉》 《島原》 《忘れ雪》 《無名》
『十四歳』 2009.02.04.up
「いま国語で『万葉集』習ってんだ」
「へえ、どんな歌?」
「つき草に衣色どり摺らめども うつらふ色と言ふが苦しさ」
「つき草って?」
「露草のことらしいよ」
「じゃあ、『にがさ』と『苦しさ』を掛けてるんだ」
「あと谷川さんの出身地」
「なぜ?」
「俳句に‘挨拶句’ってあるじゃない」
「和歌の‘本歌取り’みたいなものね」
「メロディーに詩をつける填詞の第一号だから故郷から始めたかったんじゃ…?」
「なら、たぶん『苦海浄土』」
「そうだね、天草出身で谷川さんに文章を見て貰っていた人だし」
「でもこんな短い詩にこれだけの仕掛けをするなんて、さすが谷川さんだね」
「『苦』と『海』は簡単にわかるとして」
「『浄』は『からっぽ』で、『土』は『はだし』から連想できる!」
『無名』 2009.02.03.up
「戦で真っ先に死ぬ奴ァ‘無名戦士’と相場が決まってる」
「‘人肉食のジャングル’も、三井三池争議も…」
「全学連じゃ樺美智子も死んだ!」
「あれは毛沢東が民族的英雄と評したから無名とも言えないが」
「なぜ昔も今も争いが絶えない?」
「それが人の世ってもんだろ」
「猛き者も遂には亡びぬ…か」
「『平家物語』?」
「『祇園精舎』から『灌頂巻』までね」
「継信なら『八島』」
「みずうみで繰り広げられた源平合戦ねぇ…」
「三井三池争議で組合を分断された怨みは深かったようだな」
「あの負けっぷりじゃあ炭労にも党にも失望するし」
「挙げ句の果てに夕闇に紛れて左肱をへし折られたとは」
「裏切りなんて日常茶飯事!」
「骨肉相食むのが人の世の常ってことさ」
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