極私的・旅の音楽
転がることは、旅をすることだと思うから。
- BO GUMBOS『最後にひとつ』
- Original Love『夢を見る人』
- Char 『SUNSET BLUES』
- theatre brook 『One Fine Morning』
BO GUMBOS『最後にひとつ』(ESDB-3080)
惜しまれつつ、でも妙に和やかに1995年6月に解散した、
BO GUMBOSの2枚めのシングル。
『ナイトトリッパー・イェー』というシングルのC/Wになっている。
ワタシには、"C/W" というより、昔っぽく "B面" と言った方がピンと来る。
知らない土地、言葉も通じないところに、身一つで行って、
赤いライトを浴びて歌っているよ……という歌詞だ。
旅先で不安なとき、初めての町で不安なとき。
イントロの岡地さんの太鼓の響きとともに、
KYONさんの泣かせるギターが、頭の中で鳴りまくたものだった。
そんなわけで、“転がる”たびに聴き過ぎて、
レコードだったら、たぶんブチブチになっていたであろう1枚。CDで良かった……。
Background Vocalとしてクレジットされている "Olive" は、
実は元レベッカのNOKKO……というのは、知っている人にはわりと有名な話。
どんととNOKKOの声とのカラミ具合がたまらない。
生では、私は、1990年秋のライブハウスツアー@仙台 と、
95年のBO GUMBOS解散ライブツアー@京都大学西部講堂 で、
この曲を聞くことができて嬉しかったものだ。
ただ、ライブでは必然的にKYONとどんとのデュエットになるので、
別の曲のようで、それもまたをかし、だった。
Original Love『夢を見る人』(PCDA-00719)
列車の先頭車両にのって、運転席の後ろに立つ。
運転席と客室の間のカーテンが開いていれば、これから先の線路が見える。
だれもいないプラットホーム。
この曲を聞くと、JR東北本線の風景が浮かぶ。
私は"テッチャン"(鉄道マニアのこと)ではないが、
仙台で学生をやって、時々東京に行ったり、盆と正月に関西方面へ帰省したりしていると、
自然と時刻表の見方、キップの買い方を研究するようになる訳だ。
今は亡き(帰省ラッシュ時にのみ復活しているらしい?)青森発上野行きの「急行・八甲田」、
今は亡き「バラ売りの青春18キップ」には大変お世話になったものだ。
渋谷公会堂で「俺は渋谷系じゃねえ!」と叫んで笑わせてくれたOriginal Love田島氏も、
高校生のときは、福島は郡山に住んでいたらしい。
ってことは東北本線で上京したんだろうな。と思うと、なんだかオカシイ。
Char 『SUNSET BLUES』(『江戸屋百歌撰 子(ね) 1996』EDCR-30007)
Charさんのこの曲は、ほかのアルバムにも収められているのだが、
アコースティックギターだけのこのバージョンは、バタくささが薄まり
特に「旅の夕暮れ」という感じを強く受ける。
特に日本海に似合う気がするのだ、このバージョンは。
岩場に砕ける波が荒々しい日本海ではなく、
広大な田園風景や砂浜、そして夏には宵待草の広がる、
新潟〜秋田あたりの日本海の夕暮れに。
『江戸屋百歌撰』は、Charさんが設立した江戸屋レコードが、
1991年から年に一枚ずつ出している、コンピレーションアルバム。
タイトルに干支が入っているから、「お年玉」みたいでいい。
theatre brook 『One Fine Morning』(『TALISMAN』ESCB1746)
佐藤タイジ氏のボーカルは説得力があって、なかでも、
日比谷野音のイベントで聴いたときは、空に広がっていくような感じがたまらなかった。
しかし、この曲では、氏のボーカルよりも
氏のエレキギターと、鈴木桃子さん(COSA NOSTRA)のバッキングボーカルの方が、
雄弁で、際立っているのが、おもしろい。
〈旅は一人が面白い。一人旅こそ日常のしがらみから解放され、
心地よい緊張感を味わえる時間なのだ……〉
そんなことを思い起こさせてくれる、不思議なバランスだ。
シアターブルックには、ほかにも旅を感じさせる曲がいろいろある。
同じアルバムに入っている『ドレッドライダー』は、
バイクに乗って旅をする陽気な神様……のイメージ。
次に出たシングルの『まばたき』も、歩き出す背中を押してくれる名曲だ。
お家へ帰ろう♪