2022/12/27更新
R1/beta4 – Release Notesの私訳です。訳のおかしいところは原文を参照ください。


R1/beta4 – リリースノート

Haiku R1 4番めのベータ版は、Haikuのハードウェアサポートと全体的な安定性の改良、およびより多くの移植版ソフトウェアを使えるようにするための1年半以上のハードワークでした。400を超えるバグおよび機能強化のチケットがこのリリースで解決されました。

これは、ベータ品質のソフトウェアであることを心に留めておいてください。つまり、機能は完成しているが既知や未知のバグがまだ含まれていることを意味します。安定性にはますます確信がありますが、データ損失に対して保証はできません。

今回のリリースサイクルのほとんどに、waddlesplashがHaikuで活動する契約者として雇用されました。皆様のような読者のHaiku, Inc., a 501(c)3 non-profitへの惜しみない寄付で契約は現在も続いています。

Haikuのダウンロード、またはR1/beta3からのアップグレードについて学ぶなら、“Get Haiku!”を参照ください。プレスの問い合わせは、“プレス窓口”を参照ください。

システム要件

このリリースは、x86 32-bitおよび64-bitプラットフォームで利用できます。

BeOS R5との互換性
BeOS R5との互換性は32-bitイメージでのみ提供されることに注意ください。

最小構成(32-bit)

  • プロセッサー : Intel Pentium II; AMD Athlon
  • メモリー: 384MB
  • モニター: 800x600
  • ストレージ: 3GB

推奨構成(64-bit)

  • プロセッサー : Intel Core i3; AMD Phenom II
  • メモリー: 2GB
  • モニター: 1366x768
  • ストレージ: 16GB

新しい機能

HiDPIサポートの改善

左: 標準DPIでのHaiku上のさまざまなアプリケーション。右: 同じアプリケーション、“200%”スケール(24ptフォントサイズ)

Haikuの以前のリリースでは、システムフォントサイズの変更だけで部分的にHiDPIスケーリングをサポートしていました。しかし、必ずしもすべてのメトリックが本来あるべきフォントサイズと実際に結びついているわけではなく、すべてのアプリケーションがシステムで設定されたフォントサイズへ実際に従うわけではありませんでした。このリリースサイクルから多くの取り組みがこれらの修正に行われました。そして、上のスクリーンショットで見られるように、ほとんどのネイティブアプリケーションは十分に良くスケールするようになりました。それでもまだいくつかの弱点がありますが、そのうちに修正されるでしょう。

加えて、初回起動時にHaikuは自動でHiDPIディスプレイを使用しているかどうか検出して適切なサイズに設定するようになりました。もちろんこれらは外観プレファレンスのフォントサイズ設定で調整できます。いまのところ、これらの設定の変更は再起動後に有効となります。

いくつかの移植されたアプリケーションにはHaikuの設定を正しく読んで使用するようにパッチや更新されているものがありますが、まだすべてではありません。

フラットデコレーター

Haikuの階調使用が少し“多い”と感じる方のために、“フラット”デコレータ&コントロール表示が利用できるようになりました。デフォルトではインストールされませんが、“Haiku Extras”パッケージ経由で追加でき、外観プレファレンスで有効にできます。(上図で示されている色はまだデフォルトでは含まれていません。似たような外観にするにはThemeManagerを使うか、いくつかのプレファレンスをマニュアルで調整する必要があるでしょう)。

Trackerのサムネイル表示

何年間もリクエストされていたものが今実現しました。“Tracker”、Haikuのネイティブファイルマネージャー(もとはBeOSから受け継いだものです)は、画像のサムネイルの生成をサポートし、表示できるようになりました。サムネイル自体は、ファイル自体の拡張属性中に保存されます。つまり、アプリケーションが望むならカスタムファイルタイプ用に独自のサムネイルを作成できます(たとえばスクリーンショットはエミュレータの保存状態のサムネイルになるでしょう)。

(いくつかの) USB WiFiデバイスのサポート

ほとんどの“RTL”およびいくつかの“RA” USB WiFiデバイス(その2つはごくありふれたデバイスファミリーで、違う名称で何度も再パッケージされています)がHaikuでサポートされました。これは、FreeBSDからの関連するドライバーの導入と、FreeBSDの基本的なUSBに関するAPIのHaikuのFreeBSDドライバー互換レイヤーへの実装の結果です。ひとつ大きな制限があります。これらのデバイスはHaikuの起動前に接続しておく必要があります。起動が完了したあとで接続しても認識されないでしょう。

OpenBSDからのWiFiドライバー

OpenBSDからのiwmおよびiwxドライバーは、OpenBSDの802.11スタックとともにHaikuへ導入されました(そしてネイティブ名idualwifi7260およびiaxwifi200が与えられました)。これらはインテルの“Dual Band”および“AX” WiFiハードウェアファミリーのサポートを提供します。FreeBSDバージョンのiwmドライバーは長年Haikuで利用できましたが、802.11a/b/g (802.11nすらなく、まして802.11acもない!)しかサポートしておらず、信頼性もあまりないものでした。一方でiwxドライバーはFreeBSDに同様なものはありませんでした。

これは、Haikuが(我々が知る限り) LinuxとOpenBSDに続いて802.11ac WiFiをサポートする3番めのオープンソースオペレーティングシステムであることを意味します。FreeBSDでさえ何年も断続的に作業しているのに関わらず(まだ?)サポートしていません。

これらのドライバーのサポートには、“OpenBSD互換レイヤー”の追加が必要でした。これは既存のFreeBSD互換レイヤー上にビルドします。FreeBSDがサポートしないハードウェアをOpenBSDがサポートすることは多くなる傾向にあります(OpenBSDにドライバーがあり、Haikuにとって利益が得られるいくつかのほかのイーサネットやWiFiカードがあります)、この作業は今後の開発の下準備となるものです。

USB-RNDISテザリングのサポート

“RNDIS”イーサネットテザリングをサポートする新しいドライバーが追加されました。これは、最も一般的な種類のAndroidフォンが、“USBテザリング”を選択する際に使用するものです。それはデフォルトで有効となっており、ホットプラグをサポートしています。

新しいNTFSドライバー

NTFSファイルシステムドライバー(NTFS-3Gライブラリのラッパー)が完全に書き直されました。古いドライバーはBeOSの時代を思い起こします。それは開発に追いついていませんでした。キャッシュをサポートしていませんでしたし、カーネルパニックを起こすような正しくないファイルの削除の扱いや、メモリーマッピングファイルをサポートしない(このためNTFSパーティションではgitが使用できない)、加えて多くのほかの問題がありました。

新しいドライバーはより自然で、Haikuの共通ファイルシステムのキャッシングシステムの主要なレイヤーをサポートしています。また、既知の問題や以前のドライバーが苦しめられた主要な機能不足が解決されています。これはFUSEベース(LinuxのNTFS-3Gのように)ではなく、カーネルモードで動作するため、ほかの完全にネイティブなファイルシステムにパフォーマンスで負けません。

AVIFトランスレーター

デフォルトでAVIFイメージトランスレーターが利用できるようになりました。これは、すべてのネイティブHaikuアプリケーションに新しく進んだイメージフォーマットの読み書きのサポートを提供します。

WebPositive

HaikuWebKitはアップストリームのWebKitの最新バージョンと同期しています。また、以前のHaikuリリースから多くのバグフィックスを含んでいます。cURLネットワークバックエンドも使用するようになりました。これにより、以前のリリースで見られた多くのネットワークに関する問題を解決しました。

ブートローダー

32-bit EFIサポートが追加されました(以前のリリースでは64-bit EFIのみのサポートでした)。32bit EFIローダーから64bit Haikuインストール済環境の立ち上げも可能です。

移植されたソフトウェア

GTKアプリケーション!

(最初に)新しいX11互換レイヤー、(現在は)新しいWayland互換レイヤー(詳細は下に)のおかげで、Haikuへ動作するGTK3が移植されました! InkscapeGIMPなどの移植版がすぐにインストールできるようになりました。さらに多くのGTKアプリケーションが、時間が経つにつれてHaikuPortsへ追加されていきます。

新たに追加されたGTKアプリケーションのひとつにGNOME Web別名Epiphanyがあります。それは、とても新しいバージョンのWebKitGTKをベースとしています。Epiphanyは、残念ながらネイティブではありませんが、大いに機能的でYouTubeやほかのメジャーなウェブサイトで"動作する"状態のウェブブラウザーを久々にHaikuに提供します。

GNU Emacs

以前からHaikuにはターミナルベースのGNU Emacsがありましたが、今では(Emacs開発者のおかげで!)アップストリームに統合され、磨き上げられたネイティブGUIアプリケーションがあります。EmacsはすでにHaikuDepotからインストールできます。または、開発ブランチをチェックアウトして自分でビルドできます。

WINE

コミュニティメンバー&貢献者であるX512のおかげで、HaikuにWINEが移植されました! 最初はX11互換レイヤーをベースにしていましたが、今は完全にネイティブのHaikuウィンドウと入出力バックエンドを備えています。

今のところ、やや制限があります。それは、64-bit Haiku上のみで利用でき、64-bit Windowsアプリケーションのみサポートということです。Haikuのいくつかの制限のためパフォーマンスに関して少し非効率です。しかし、Haikuがより多くのI/O APIを備えるにつれて、おそらく改善されるでしょう。

Xlib (X11)互換レイヤー

X11用のネイティブ互換レイヤーがパッケージリポジトリで利用できるようになりました。ほかのOS上でXQuartzやほかのX11互換パッケージが行っているように、完全なXサーバーを走らせる代わりに、それは直接Xlib APIコールを処理しHaiku API コールに変換します。これがどのようになぜ行われているかについてのいくつかの追加情報を読んだり、パッケージを直接pkgman install xlibe_devel経由でインストールしたり、ソースコードをチェックアウトできます。

もとはGTK3を移植するために書かれました。そのため、ほかのアプリケーションで必要ないくつかの(または多くの) APIコールがないかもしれません。しかし、さまざまな X11アプリケーションやほとんどのMotifを使用しないアプリケーションですでに少なくても部分的には動いているようです。

Wayland互換レイヤー

はい、X11互換レイヤーに加えて、Wayland互換レイヤーもあります! X11のものに比べるとより複雑で、CのAPIコールを直接変換する代わりに“インプロセスWaylandサーバー”をアプリケーションごとに動かしています。GTK3の移植は、機能面とパフォーマンス上の両方の理由から現在X11互換レイヤーの代わりにこちらの上でビルドされています。

変更点&バグ修正

前のリリースから数百ものバグや小さな問題が修正されています。すべてをここに記載するには単純に多すぎます。事実上、システムのすべてのエリアがある程度の注目を集めています。その結果が、あちこちにいまいちなところは残っていますが、今までのところHaikuの最も磨かれて安定したリリースです。

POSIX互換性の向上

Haikuは、POSIXへの順守を向上させ、開発者にソフトウェアの移植を容易にさせる方法に常に目を向けています。個別のリストでは変更が多すぎるので、ここにいくつかのハイライトを:

起動できない問題の修正

起動失敗にはUSBドライバーのバグから初期化と再初期化の競合状態までの広く多様な原因があります。実際のハードウェアまたは仮想マシン上で正常な起動を完全にまたは断続的に妨げる多くの問題は、追跡され解決しました。これにより以前より幅広いさまざまなハードウェアでHaikuを少なくとも起動できるようになりました。

NVMeドライバーの改良

NVMeドライバーは、割り込みが正しく動作しない場合“polling”モードへのフォールバックをサポートするようになりました。“unaligned”転送をより確実に処理し、多くのパフォーマンス向上が行われました。TRIMサポートも実装されました。

常に新しいGCCでコンパイルされるカーネル

32-bit x86システムでは、BeOSとの互換性を維持するために古くさいGCC 2.95をシステムの多くの部分のコンパイルにまだ使用しています。しかし、この開発サイクルでシステムのほとんどがGCC 2.95でビルドされているときでも、カーネルとドライバーは常に新しいGCCバージョン(現在は GCC 11)でコンパイルするように変更されました。

全体的な安定性への取り組み

かなりの時間がシステム全体の安定性に関する取り組みに注がれました。多くのカーネルやドライバーのクラッシュ、ハングアップ、データー破壊などがこのリリース開発サイクル中に追跡され修正されました。コミュニティからのこの結果に対するたくさんのフィードバックが寄せられており、全体としてシステムはこれまでになく安定しているようです。

新しい貢献者

前回のリリースから、新たにコミット権を持つ開発者が1名増えました: davidkarolyは、すでにHaikuの進行中のARMサポートへ重要な貢献をしています。ようこそ!

ソースコード

Haiku自体のソースコードへは、GitHubミラーから、またはHaikuのGitインスタンスを通じてアクセスできます。パッチはGerritを通じて貢献できます。

問題の報告

Haikuのバグトラッカーには、3,600個近くのオープンチケット、14,300個を超えるクローズドチケットがあります。問題と思うものを見つけたなら、バグトラッカーを検索して、すでに報告されているか確かめてください。もし報告されてなければ、バグトラッカーへ新しいチケットを登録してください。

リリース後に修正された主要な問題の情報は、Release Addendumページを見てください。

さらに詳しいヘルプについては、'Quick Tour'を手にとって、‘Userguide’を読んでください。どちらも Haikuデスクトップ上にリンクされています。WebPositiveはデフォルトで'Welcome'ページを開きます。そこにはHaikuプロジェクトのウェブサイトと同じく、有益な情報やたくさんの役に立つリンクがあります。

Haikuに関するサポート/ヘルプは、掲示板に投稿するか、IRC/Matrix/XMPPルームに参加するか、またはメーリングリストへメッセージを送ってください。私達の親切なコミュニティが手助けしてくれるでしょう。

プレス窓口

プレスの問い合わせは、直接以下へ:

上記3名には、<nickname>@gmailから連絡できます。