Special Dayに乾杯♪

12月21日、土の曜日。聖地ではパーティーの準備に大忙しの人々が居た。
女王アンジェリークと補佐官ロザリアは朝からパーティー用の料理の準備に追われていた。
マルセルとランディとゼフェルは、会場の飾り付けに大騒ぎしていた。
そして招待状の準備を一手に引き受けたルヴァは配達の手配まで終えてしばしの休息を読みかけの本の続きに没頭することに充て、女王陛下達のスタイリストに任命されたオリヴィエはドレスやアクセサリーの選択に余念がなかった。

この日、オスカーの元に1通の手紙が届いた。差出人はアンジェリークで、それは午後から宮殿で行われるパーティーへの招待状だった。
「ふっ、当日の朝に届けて驚かせるとは、お嬢ちゃんもやってくれるじゃないか。」
今日は特に予定はない。週に2日もデートの予定を予め立てておくとツブシが利かないので、土の曜日は全て飛込みや集団のデートに充てている。適当にぶらついて出会った女性とお茶を飲んだり公園で大勢の女性と談笑したりとそれなりに忙しい休日ではあるが、午前中にそれらを切り上げることは容易い。
そして昼近く、公園で大勢のレディ達と楽しく言葉を交わしていると、クラヴィスの元へと向うリュミエールが近くを通り過ぎがてらそっと耳元に囁いた。
「随分と楽しそうですが、お支度はもう宜しいのですか?」
それを聞いてチラリと時計に目をやったオスカーは、美しいレディ達に別れを告げ、急ぎ足でリュミエールの後を追った。
「貴方にエスコートしていただく謂れはありませんよ。」
「ただ途中まで道が同じなだけだ。」
そうは言うが、オスカーとリュミエールでは歩く速度は全く違う。オスカーがリュミエールに合わせてゆっくり歩いているのは明白だった。
「何かお話でもあるのですか?」
妙にニヤニヤして、自分に速度を合わせて横にピタリとついて来るオスカーに、リュミエールは溜息を押し殺して話を振った。
「話と言う程でもないが…。お前も、今日のパーティーに出席するのか?」
招待状が届いたのは今朝のことで、特に誰かにそのことを話した覚えもないオスカーとしては、先程のリュミエールの囁きは不思議だった。彼が今日のオスカーの予定を知っているのみならず、それを気に掛けているように思えてならない。
オスカーの問いに、リュミエールは「何を驚いているのでしょうか」と内心では不思議に思いながらも平静を保って答えた。
「ええ、アンジェリークのお誘いを断る訳にはいかないでしょう? もちろん、守護聖一同、招待を拒むことはないと思いますよ。」
「守護聖全員を招待!? そうか、お嬢ちゃんはそんなに盛大に祝ってくれるのか。」
オスカーは、そんなに派手に祝ってくれるとはやはりお嬢ちゃんも俺の魅力の虜と見える、と口元が綻んだ。
だが、そんなオスカーを冷ややかに横目で見ながら、リュミエールは別れ道まで来たのをこれ幸いと少々ペースを上げてクラヴィスの私邸へと歩き去ったのだった。

そして、パーティーは始まり、その場には女王ならびに補佐官、守護聖一同が顔を揃えた。
豪華な顔ぶれに、オスカーの心の中ではますます歓喜の念が膨らんで来る。
だが、それも束の間のこと。
全員がグラスを手にしたのを確認したアンジェリークの口から発せられた言葉は、オスカーの想像とは違っていた。
「メリークリスマ~ス♪」
てっきり自分の誕生日を祝ってくれるものと思い込んでいたオスカーは、落胆しながらも平静を装った。だが、リュミエールと寄り添って楽し気に笑うアンジェリークを眺める背中には哀愁が漂い、それを見てからかいに来たオリヴィエを相手に会場の酒を浴びるように飲んで、翌日は二日酔いでデートの予定をキャンセルする羽目になったのだった。

-了-

《あとがき》
Happy Birthday Dear Oscar & Merry Christmas♪
これって、オスカー様の誕生日を知ってる人なら1度は書いてみたいと思うようなネタではないでしょうか。
クリスマスに近いと、忘れられたり一緒に祝われたりするんだろうなぁ、きっと…(^^;)
オスカー様宛の招待状にだけ"クリスマスパーティー"って書かなかったルヴァ様は、確信犯ですね。真相が判るまでの喜びをオスカー様にプレゼント♪

indexへ戻る