ルナティック・シアター
~眠れる森の美女~
《キャスト》 | |
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オーロラ姫: | アンジェ |
旅の王子: | アリオス |
王: | ルヴァ |
王妃: | リュミエール |
森の精霊: | ランディ ゼフェル マルセル |
闇の妖精王: | クラヴィス |
若い妖精王: | メル |
他の妖精王: | 残りの守護聖 セイラン ティムカ |
伝令兵: | チャーリー |
酒場の女: | レイチェル |
ナレーション: | エルンスト |
エルンスト: | 昔々あるところに、妖精達の加護を受けた小さな国がありました。 |
ルヴァ: | 小さくても良い国なんですよ~。 |
エルンスト: | そうですね。その国では王家に子供が生まれると、妖精王達を招待して宴を催すという風習がありました。 |
リュミエール: | ささやかな宴ですが、心はこもっていると思いますよ。 |
エルンスト: | 仰る通りです。そしてこの度、王女が誕生したので、国王夫妻は妖精王達を招いて宴を催しました。 |
ジュリアス: | 姫は将来、気高く誇り高い女王となることだろう。 |
オスカー: | 芯の強い素敵なレディーとなることだろう。 |
オリヴィエ: | 美しさに溢れる夢いっぱいの女の子になることでしょう。 |
セイラン: | 感性豊かな女性になるんじゃないかな。 |
ティムカ: | 品位溢れる素晴らしい方になることでしょう。 |
エルンスト: | こうして、妖精王達の祝福が行われていた時の事です。突然、黒い影が生じたかと思うとそれは徐々に人の形をとり、気がつくとクラヴィス様が宴の席に立っていました。 |
ルヴァ: | あ~、クラヴィスも来てくれたのですね。 |
クラヴィス: | 招かれざる客だがな。 |
ルヴァ: | そんなはずはないと思いますけどねぇ。 |
クラヴィス: | フッ…、まさかリュミエールにまで無視されようとは思わなかった。 |
リュミエール: | 誤解です、クラヴィス様。私は…。 |
クラヴィス: | 姫に呪いあれ。姫は17の歳に糸車の針に刺されて命を落とすであろう。 |
エルンスト: | クラヴィス様は、そう言い放つとまた影に飲まれるようにして姿を消してしまいました。 |
ジュリアス: | エルンスト、冷静にナレーションなどしている場合ではなかろう。 |
リュミエール: | ああ、私はどうしたら良いのでしょう。 |
オリヴィエ: | しっかりして、リュミちゃん。この子はきっと死んだりしないから。 |
リュミエール: | クラヴィス様にあのように疑われてしまって…。 |
ルヴァ: | あ~、元気出して下さいね。きっと、クラヴィスもわかってくれますから。 |
リュミエール: | ルヴァ様…(泣) |
エルンスト: | …メル、話を進めて下さい。 |
メル: | はい、エルンストさん。えぇっと、僕の力ではクラヴィス様の予言した運命の星の動きを完全には変えられないけど、少しでも事態が好転するように頑張ってみます。 |
ティムカ: | メルさん、頑張って下さいね。 |
メル: | うん!! ……見えた。アンジェリークは確かに17の歳に糸車の針に刺されるかも知れないけど、死んだりはしない。深い眠りに落ちて、いつの日か彼女を目覚めさせてくれる王子と出会うよ。 |
セイラン: | いつの日か、ってそれがいつなのかは見えないのかい? |
メル: | ごめんなさい、そこまでは…。僕の力じゃ、100年くらい先みたいとしかわからない。 |
オスカー: | それだけわかってれば充分だろう。 |
ルヴァ: | あ~、でも100年先では私達にとっては死んだも同然ですねぇ。 |
セイラン: | その前に、クラヴィス様を探して呪いを解いてもらったら? |
ルヴァ: | それもそうですねぇ。うんうん。 |
リュミエール: | ええ、一刻も早くクラヴィス様の誤解を解かなくては!! |
チャーリー: | あの~、たった今これが宛どころ不明で戻って来たんやけど、どないします? |
ルヴァ: | そ、それはクラヴィス宛の招待状ではありませんか!? |
セイラン: | 今更戻って来ても遅いよ。 |
リュミエール: | とにかく、このことをクラヴィス様に…。 |
セイラン: | でも送達確認を怠ったあなた方のミスじゃない? |
リュミエール: | では、どうしたら…。 |
ルヴァ: | あ~、それでは国中から糸車をなくしてしまいましょう。 |
ジュリアス: | うむ、それは良い考えだ。 |
ルヴァ: | それと、アンジェリークは森の中で隠して育てましょう。あそこなら、糸車などに興味を持つことはないでしょう。 |
ティムカ: | そうですね。あそこにはゼフェル様のおかげでそんなレトロなものは置いてませんから。 |
エルンスト: | こうして、アンジェリークは森に暮らすランディ様、ゼフェル様、マルセル様の元で育てられることになりました。 |
ゼフェル: | へへっ、メカチュピの新ヴァージョンが出来たぜ。 |
アンジェ: | わ~、一段と操作性が良くなりましたね。 |
ゼフェル: | ま、このくらい軽い軽い。 |
ランディ: | そういうもので遊ぶのも良いけど、今度は俺とフリスビーしないか? |
マルセル: | ダメだよ、ランディ。彼女はこの後、僕と花壇の手入れをするんだから。 |
アンジェ: | それが済んだら、フリスビーのお相手して下さいね。 |
ランディ: | ああ、それじゃ俺も花壇の手入れ手伝うよ。 |
エルンスト: | こうしてアンジェリークは毎日楽しく暮らしていましたが、ある日、お城から使者が来ました。 |
アンジェ: | パーティですか? |
チャーリー: | そうや。何やいきなりで悪いんやけど、あんたにも招待状が出とるんで、来てもらえん? |
アンジェ: | 面白そうですね。行きます♪ |
エルンスト: | こうしてお城のパーティに出席したアンジェリークでしたが、その時はまだこれがクラヴィス様の罠だと気付いた方はいらっしゃいませんでした。 |
ゼフェル: | って、おい!! 今のはクラヴィスの罠なのか? |
エルンスト: | はい。どうやら、そのようですね。 |
マルセル: | わかってるなら、止めてよ、エルンストさん。 |
エルンスト: | そう仰られても、私は話の進行を妨害する訳には参りませんので…。 |
アンジェ: | ふ~、パーティって結構疲れるものだったのね。ちょっと、外の空気吸ってこようっと。あら、この階段は何かしら?(のこのこ) |
クラヴィス: | フッ…、待っていたぞ。 |
アンジェ: | えっ? |
クラヴィス: | いや、何でもない。それより、どうだ。これは面白いとは思わないか?(カタンカタン) |
アンジェ: | 本当に、面白そうな機械ですね。どうなってるんですか? |
クラヴィス: | もう少し近くへ寄って、よく見ると良い。 |
アンジェ: | はい♪ ああっ、針が…。 |
クラヴィス: | フッ…、どうやら呪いは成功したらしいな。 |
エルンスト: | こうしてクラヴィス様は満足げに微笑むと姿を消しましたが、幸いアンジェリークは森での生活で毒に耐性が出来ていた為、命を取り留めました。 |
ルヴァ: | あ~、でもメルが言ったように深い眠りに落ちてしまいましたね~。 |
リュミエール: | 100年の後に目を覚ますとしても、もう私達は元気なアンジェリークに会えないんですね。 |
メル: | そんなことないよ!! |
ルヴァ: | おや? メルじゃないですか~。 |
メル: | 僕の力で、何とかしてみせる。 |
ルヴァ: | そんなことが出来るんですか? |
メル: | うん。守りの珠で包んで時の流れに寄るダメージを0にしてあげるよ。 |
エルンスト: | こうして、メルの力で守られながらルヴァ様達はアンジェリークの目覚めを待つことになりました。 |
アリオス: | で、本当にあの廃虚にお姫様が眠ってるのか? |
レイチェル: | うん。それも、あなた好みのとっても素敵な子だよ。 |
アリオス: | 俺好みねぇ。 |
レイチェル: | 元気で、可愛くって、気が強くって、優しくって。 |
アリオス: | で、涙もろくて、食い意地が張ってて、莫迦な奴? |
レイチェル: | …そうね。そうかも。 |
アリオス: | そいつは、確かに俺好みだな。それじゃ、行ってみるか。 |
レイチェル: | そう? 頑張ってね♪ |
エルンスト: | こうして旅の途中だった王子アリオスは酒場を出て、アンジェリークの眠る城の近くまでやって来ました。 |
アリオス: | 随分と廃れた城だな。辺り一帯イバラだらけじゃねぇか。 |
メル: | クラヴィス様の仕業だよ。殺せなかったことに気付いて、こんな風に障壁を作ったんだ。 |
アリオス: | ふ~ん。って、お前は? |
メル: | メルだよ。 |
アリオス: | メル、ねぇ。お前、結構事情通みたいだな。詳しく聞かせろよ。 |
メル: | うん。あのね…。 |
エルンスト: | アリオスはメルから事情を聞き出すと、彼と共にイバラの檻を壊し始めました。 |
アリオス: | 回復と補助は任せたからな。ちゃんとついて来いよ!! |
メル: | うん、わかった!! |
アリオス: | ちっ、斬っても斬ってもすぐに伸びやがって…。 |
エルンスト: | アリオスは文句を言いながらも、行く手を塞ぐイバラを次々と斬り捨てて道を開き、ついに城の中に入り込みました。 |
アリオス: | で、どっちだ? |
メル: | えっ? |
アリオス: | お姫様が眠ってる部屋だよ。 |
メル: | あ、そっちの階段を上がって右へ行って突き当たりの階段を上がって左に行って、3つめの角を左に行ってそれから…。 |
アリオス: | んなややこしい場所に寝かすな!! |
メル: | えぇっと、とりあえずそっちの階段を上がってよ。 |
アリオス: | 了解。 |
メル: | そこ右。その階段上がって。そこ左。あ、次の角を左…。 |
エルンスト: | どうやら、アリオスはメルの案内でアンジェリークの部屋の前までたどり着けたようですね。 |
アリオス: | ここに居るんだな? |
メル: | うん。 |
アリオス: | よし、入るぞ。 |
メル: | うん。 |
アリオス: | こいつか。確かに、顔は好みだな。後は寝てるからわかんねぇが…。 |
メル: | えっ? |
アリオス: | 酒場の女が言ってたんだ。元気で、可愛くって、気が強くって、優しくって、涙もろくて、食い意地が張ってて、莫迦だってな。 |
メル: | それは…。 |
アリオス: | 違うのか? |
メル: | 正しいかも。 |
アリオス: | そうか。それなら、起こす甲斐があるってもんだ。さて、どうやって目覚めさせるかな。 |
メル: | 待って、アリオス! 様子が変だよ!! |
アリオス: | 何だ? 何かが…。 |
メル: | 黒い影! クラヴィス様だ。 |
クラヴィス: | 姫の目覚めなど、私は認めぬ。 |
アリオス: | ほぉ。だからどうするって? |
クラヴィス: | お前に永遠の安らぎを。 |
アリオス: | 冗談じゃねぇ。やっと見つけたかも知れないとびっきりのいい女を前に、永遠の眠りになんてついて堪るか!! |
クラヴィス: | 案ずるな。その女も永遠に眠り続けるだろうからな。共に眠り続けるがいい。 |
アリオス: | ますます冗談じゃねぇな。俺は、ただ横で眠ってるだけで満足出来るような男じゃないぜ。 |
メル: | ……。 |
アリオス: | メル、回復と補助は任せた!! あいつを叩きのめすぞ。 |
メル: | あ、う、うん。 |
クラヴィス: | 出来るものならやってみるがいい。 |
アリオス: | ああ、やってやるさ。 |
エルンスト: | こうしてアリオスはクラヴィス様に斬りかかりましたが…。ああ、どうやら効いてないようですね。 |
メル: | なんとかしなくちゃ。あ、そうだ。アリオス、これを!! |
アリオス: | クッション? |
メル: | うん。そこにあなたの持ってる香水を振り掛けて、クラヴィス様に投げ付けて!! |
アリオス: | 俺の持ってる香水って、このラベンダーの芳香スプレーのことか? |
メル: | 早く!! |
アリオス: | わかった。これでも喰らえ!! |
クラヴィス: | ああ、身体が勝手にクッションを抱えて横に…。 |
メル: | 次はこれを!! |
アリオス: | 本? |
メル: | うん。『妖精王の心得』。著者は光の妖精王ジュリアス様だよ。それをクラヴィス様の目の前に突き出して!! |
アリオス: | あ? ああ。 |
クラヴィス: | ぐ~。 |
アリオス: | …こいつ、熟睡してねぇか? |
メル: | うん。上手くいったね♪ |
アリオス: | 何か、俺って役に立ってないような…。 |
メル: | え~っ、そんなことないよ。香水持ってたし…。 |
アリオス: | それ、俺の力じゃねぇだろ。 |
メル: | ここまで、道を切り開いて来たし…。 |
エルンスト: | そうです。それに、これからアンジェリークを目覚めさせるのはあなたなんですから。 |
アリオス: | まぁ、いいか。それじゃ、こいつを起こすかな。 |
メル: | (わくわく) |
アリオス: | 起きろ! 飯だぞっ!! |
メル: | ア、アリオス。ここはキスするんじゃ…。 |
アンジェ: | ん~? ごはん~? |
エルンスト: | ア、アンジェリーク…。どうして、これで目覚めるんですか? |
アンジェ: | ごはん、どこ~? |
アリオス: | 悪いな。ちょっと離れたとこにあるんだ。 |
アンジェ: | お腹すいた~。歩けない~。 |
アリオス: | 心配すんな。俺が運んでってやるから。 |
アンジェ: | うん♪ |
エルンスト: | あの…、メル。 |
メル: | えっ? |
エルンスト: | 皆さんをお起こしして下さい。 |
メル: | はい、エルンストさん。 |
ルヴァ: | おや~、アンジェリークが目覚めたみたいですねぇ。 |
リュミエール: | クラヴィス様、どうなさったのですか?このようなところでお休みになられては風邪をひかれてしまいますよ。 |
クラヴィス: | すやすや。 |
リュミエール: | それでは、ただいま掛け布団をお持ち致しますね。 |
ルヴァ: | それより、そこの本を遠ざけてあげればいいのではありませんか~? |
リュミエール: | 本? ああ、これですね。 |
クラヴィス: | ん? リュミエールか。 |
リュミエール: | ああ、お目覚めになられたのですね。良かった。あのような本はクラヴィス様には目の毒ですからね。 |
クラヴィス: | そうか。お前があれを処分してくれたのだな。礼を言うぞ。 |
リュミエール: | いいえ、大したことでは…。 |
ルヴァ: | あ~、どうやらクラヴィスの怒りも解けたようですねぇ。うんうん。 |
アンジェ: | ねぇ、ごはん~。 |
アリオス: | はいはい、今連れてってやるよ。 |
アンジェ: | うん。あ、ところであなた誰? |
アリオス: | アリオスだ。 |
アンジェ: | アリオス、大好き♪ |
アリオス: | ああ。俺も、お前のこと大好きだぜ。 |
エルンスト: | こうしてアンジェリークはアリオスと結ばれ、末永く幸せに暮らしました。めでたし、めでたし…と言っておきましょうか。 |
-了-