ルヴァ: |
昔々あるところにそれはそれは美しい娘さんが居ました。 |
エルンスト: |
ああ、アンジェリーク。あなたの美しさには我が愛しのレイチェルも敵わないでしょう。 |
レイチェル: |
あはは、エルンストったら棒読み~。 |
ルヴァ: |
レイチェル、笑ってないで…。ここは、話の都合上、怒りをアンジェリークに向けなきゃいけないんですよ~。 |
レイチェル: |
仕方ないな。でも、あの娘って憎めないんだよね。 |
ルヴァ: |
レイチェル…。お願いですから話を進めてください。 |
レイチェル: |
わかってるわよ。アリオス、あの娘のところへ行って、どうしようもない男と結ばれるようにしてらっしゃい。 |
アリオス: |
へいへい。 |
ルヴァ: |
アリオス…。そんな簡単に引き受けていいんですか? |
アリオス: |
平気、平気。どうしようもない奴だったら、俺でいいんだから。 |
ルヴァ: |
はぁ。お手軽ですね。 |
アリオス: |
さて、と。それじゃ、ちょっくら神託でも与えてくるか。 |
ルヴァ: |
はぁ。頑張ってくださいね。 |
オリヴィエ: |
なんか、怪しい神託だったよね。 |
セイラン: |
でも、行くんだろ? |
アンジェ: |
はい。 |
ルヴァ: |
あ~、アンジェリークが裏山の祠へ来たようですねぇ。神託に従って、ちゃんと婚姻の誓いも立ててくれたし…。 |
アンジェ: |
これで、良いはずなんだけど…。どうして、相手の顔を見ちゃいけないのかしら? |
アリオス: |
話の制約条件だ。 |
アンジェ: |
そんなこと言って…。実は声は素敵なのに顔が悪いとか? |
アリオス: |
ざけんじゃねぇぞ、こら。とにかく、おいそれと人間に素顔を晒しちゃいけないって決まりがあるんだよ。 |
アンジェ: |
まぁ、いいわ。 |
ルヴァ: |
アンジェリークは素直ですねぇ。うんうん。 |
オリヴィエ: |
でもさぁ、それって相手が人間じゃないって事だよね。 |
セイラン: |
ちゃんと顔を確認した方が良くないかい? もしかしたら、とんでもない化け物かも知れないよ。 |
アンジェ: |
実は、寝てる隙に顔を見ようとはしたんですけど、勘が良すぎて起きちゃうんです。 |
ルヴァ: |
困りましたねぇ。あ~、アリオス。このままだと話が進みませんから、寝た振りしてもらえませんか? |
アリオス: |
仕方ねぇな。 |
アンジェ: |
あ、寝てるみたい。よ~し、今度こそ…。あっ、良かった、凄いハンサム。それに、この輝きはもしかして、神様? |
ルヴァ: |
実は、そうなんですよ~。って、あ~っ、アンジェリーク!! ろうそくが…。 |
アリオス: |
わ~、危ねぇ!! てめぇ、火の付いたろうそくをそのまま落としやがったな。 |
アンジェ: |
きゃ~、ごめんなさい!! |
アリオス: |
謝る前に、消火しろ、消火。 |
ルヴァ: |
あ~、どうやら火は消えたみたいですね~。 |
アリオス: |
とにかく、約束が破られた以上、お別れだな。あばよ。 |
アンジェ: |
待って!! |
アリオス: |
どうしても会いたかったら、今度はそっちから会いに来い。 |
ルヴァ: |
あ~、行ってしまいましたね。 |
アンジェ: |
…会いに行くわ。 |
ルヴァ: |
でも、相手は神様ですよ。どうやって居場所を探すんですか? |
アンジェ: |
メルさん、お願いします。 |
メル: |
うん、頑張って占うよ。……えぇっと、北のはずれの神殿で祈りを捧げれば道が開くみたい。 |
アンジェ: |
わかりました。やってみます。 |
ルヴァ: |
…あれからだいぶ経ちましたが、まだ道は開かれないみたいですねぇ。 |
アンジェ: |
……。 |
ルノー: |
あの…、あなたがアンジェさんですか? |
アンジェ: |
ええ、そうだけど…。 |
ルノー: |
御主人様から、あなたを迎えに行くように言われて来たんです。 |
アンジェ: |
迎えに? |
ルノー: |
とにかく、御主人様のお家まで御案内します。 |
ルヴァ: |
おや、これがそのお家ですか。随分と立派な神殿ですね。 |
ルノー: |
すいません。レイチェルがこちらへ向ってるので、僕はここで…。 |
レイチェル: |
あら、アリオスに会いに来たの? |
アンジェ: |
ええ。アリオスに会わせて!! |
レイチェル: |
そう言われて、はいそうですか、って会わせる訳にはいかないのよね。 |
アンジェ: |
どうして? |
レイチェル: |
話の都合上、私はあなたに無理難題を押し付けなきゃいけないのよ。と言う訳で、そこの田んぼの稲刈りお願いね♪ |
アンジェ: |
そこの田んぼ、って…。 |
レイチェル: |
あら、見えないの? 見渡す限りに広がるこの田んぼが。 |
アンジェ: |
これ、全部? |
レイチェル: |
そうよ。頑張ってね♪ |
アンジェ: |
はぁ…。 |
ルヴァ: |
これを一人で刈り取れと言うのは、確かに無理難題ですね~。 |
ルノー: |
あの…、レイチェルはもう行っちゃったよね? |
アンジェ: |
あら、あなたはさっきの…。 |
ルノー: |
(キョロキョロ)それじゃ、僕が収穫するよ。ちょっと離れてて。 |
ルヴァ: |
これは凄い。大したものですねぇ。 |
レイチェル: |
何ですって!? 稲刈りが終わった? そう、誰かの手を借りたのね。それじゃ、次の難題よ。 |
アンジェ: |
まだ、あるの? |
レイチェル: |
ええ。黄泉の国のロザリア様のところへ行って、「最近、レイチェルは心労で美しさにかげりが出てるから、あなたの美しさを少し分けて下さい」って言って来てちょうだい。美しさを分けてもらうのを忘れないようにね。 |
アンジェ: |
はぁ…。(ぽてぽて) |
ゼフェル: |
ちょっと待ちな。ここから先は、人間は立ち入り禁止だぜ。 |
アンジェ: |
でも、私はレイチェルのお使いで…。 |
ゼフェル: |
だったら、通行証を見せな。 |
アンジェ: |
そんなもの、預かってないわ。 |
ゼフェル: |
じゃ、通す訳にはいかねぇな。っつーより、通行証がないと俺様の作ったセキュリティシステムは突破出来ないぜ。 |
アンジェ: |
そんなぁ~。 |
ルノー: |
アンジェ、アンジェ…(こそこそ)。 |
アンジェ: |
あら、また…。 |
ルノー: |
これ、ショナからもらって来たおもちゃだよ。これと引き換えにゲストパスをもらうように、って。 |
ゼフェル: |
おい、おめぇら、何をごちゃごちゃ言ってんだ。 |
アンジェ: |
あの、これとゲストパスを交換してもらえませんか? |
ゼフェル: |
そ、それは…!? |
アンジェ: |
ダメですか? |
ゼフェル: |
ほれ、ゲストパスだ。さっさと、それ寄越せ。 |
ルヴァ: |
ゼフェルったら、随分と簡単に懐柔されてしまうんですね~。 |
アンジェ: |
でも、これでお使いに行けますね。 |
ロザリア: |
あら、珍しい。こんなところに人間が何の用かしら? |
アンジェ: |
あの、実は…。 |
ロザリア: |
承知しましたわ。それでは、これをお持ちなさい。でも、決して蓋を開けてはダメよ。 |
アンジェ: |
ああは言われたけど、アリオスに会う前にちょっとだけ美しさをお裾分けして欲しいなぁ。 |
ルヴァ: |
ダメですよ、アンジェリーク。開けてはいけないって言われたでしょう。 |
アンジェ: |
でも、ちょっとだけなら…。 |
ルヴァ: |
ダメですってば!! あ~、開けてしまったのですね。 |
アンジェ: |
何かしら? 急に眠気が…。 |
ルヴァ: |
中に入ってたのは、闇のサクリアだったのですね。 |
ルノー: |
アンジェ、起きてよ。アンジェ~(泣) |
アリオス: |
ああ、もうっ、懲りない奴だな。また、ひとの忠告を無視しやがって…。 |
ルヴァ: |
アリオス!? どうして、ここに…? |
アリオス: |
こんなピンチに手下任せになんかしてらんねぇだろ。ジュリアスのお小言なんか聞いてる場合じゃねぇっての。 |
ルヴァ: |
ジュリアスの…。それで、今まで出て来られなかったんですね。 |
アリオス: |
ああ。ひとのこと軟禁して、毎日毎日飽きもせずに同じこと繰り返しやがって。おいそれと人間に素顔を見せるとは云々、って…。ったく、自分は光輝を隠して地上に行ってるくせに、ひとには厳しいんだから。どうせ、俺はまだ人間の顔が出来ないくらい未熟だよ。(ブツブツ) |
ルヴァ: |
はぁ。ところで、どうやってアンジェリークを起こすつもりですか? |
アリオス: |
こいつの中に入った余計な闇のサクリアを中和すりゃいいんだろ? |
ルヴァ: |
かざした掌から光が…。 |
アンジェ: |
ん…。アリオス!? |
アリオス: |
目が覚めたか。それじゃ、ジュリアスんとこ行くぞ。 |
アンジェ: |
えっ!? |
ルヴァ: |
おや~、幕の向こうにいるのは本当にジュリアスのようですねぇ。なるほど、光輝がきつすぎるから普段は幕で緩和してるんですね~。 |
ジュリアス: |
アリオス!! そなた、私の話の途中で抜け出すとは…(怒) |
アリオス: |
悪いな。緊急事態だったんだ。 |
ジュリアス: |
そなたが連れているのは、人間か?そなた、また人間に素顔を晒して…。 |
アリオス: |
また、って言うけどなぁ、こいつには既に顔見られてんだから良いじゃねぇか。 |
ジュリアス: |
そういう問題ではなかろう!! |
アリオス: |
ああ、そういうこと言いに戻って来た訳じゃねぇよ。こいつを今度こそ正式に俺の妻にしたいから、神の列に加えてくれねぇか? |
ジュリアス: |
むむっ、そういうことならば…。 |
アリオス: |
認めてくれるのか? |
ジュリアス: |
うむ。幸せになるのだぞ。 |
アリオス: |
サンキュ。 |
ルヴァ: |
こうして、アンジェリークは神の列に加えられてアリオスと末永く幸せに暮らしました。めでたし、めでたし…って、これってこういうお話でしたかね~?全然違ってたと思いますけど…。 |