アシクロビルの作用機序
水痘や帯状疱疹、単純疱疹(ヘルペス)の治療薬の1つに、ゾビラックス(一般名;アシクロビル)があります。
アシクロビルはどのような機序で、水痘・帯状疱疹ウイルスや単純ヘルペスウイルスの増殖を抑えるのでしょうか。
アシクロビルは、ウイルスに感染した細胞内で、ウイルス由来のチミジンキナーゼという酵素によりリン酸化され、アシクロGMPになります(図2)。
アシクロGMPは、ヒトのキナーゼによりさらにリン酸化され、リン酸が3個ついたアシクロビル三リン酸(アシクロGTP)となります。
このアシクロビル三リン酸が、薬効を発揮するのです。
●作用 その1
ウイルスが増殖するためにはDNAが合成(複製)されなくてはいけません。DNAは下図1に示すように、ヌクレオチドと呼ばれる構成単位が、もとのDNAを鋳型として配列し、複製されていきます。このときに必要なのが「DNAポリメラーゼ」と呼ばれる酵素です。
先述のアシクロビル三リン酸は、このDNAポリメラーゼを阻害することにより、ウイルスのDNA合成を阻害します。
| <図 1>DNA1本鎖 | <図 2>アシクロビルのリン酸化 |
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| 図 1 | 図 2 |
●作用 その2
上図1の青枠で囲った部分、GMPをご覧下さい。GMPにおける糖の 3’位のOH(赤枠で囲っている部分)は、次に配列されるヌクレオチドと結合する大切な部位です。
一方、図2の青枠で囲った部分、アシクロGMPは、先ほどのGMPと非常に構造が類似していますが、糖の部分が不完全で、3’位のOH が欠如しています。
ウイルスがDNAを複製する際、アシクロGMPは、GMPと構造が似ているため、一旦はDNA鎖に組み込まれます。
しかし、アシクロGMPには、次のヌクレオチドと結合すべき3’位のOHが無いため、それ以上DNA鎖を伸ばすことができず、重合がストップしてしまいます。
アシクロビルは、こうしてDNA鎖のヌクレオチド重合を阻害します。
アシクロビルの選択毒性
DNAは宿主であるヒトにおいても大切なものです。アシクロビルは、ウイルスのDNA合成を阻害しますが、ヒトのDNA合成は阻害しないのでしょうか?
図2に示したアシクロビルの一リン酸化は、ウイルス誘導のチミジンキナーゼによって行われます。
そのため、ウイルスに感染した細胞内ではアシクロビルが活性化され、DNAの合成は阻害されます。
一方、ヒトの正常細胞内ではアシクロビルはリン酸化されず、不活性のままです。
よって選択毒性が高い、安全な薬といえるでしょう。
アシクロビルの腎機能障害患者への投与
アシクロビルは腎排泄型薬剤であるため、腎機能が低下している患者では、精神神経系の副作用が現れやすくなります。
よって腎機能障害患者では、投与量を減らすなどの配慮が必要です。
(H 13.05.01)
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