薬の話


物が二重に見える、これは副作用?


不眠や不安を訴えて心療内科を受診している患者さん(46歳、男性)。

今まではソラナックスだけが処方されていましたが、今回赤字で示した薬が3剤追加されました。

<院外処方せん>
ドグマチール錠50mg 2錠
ソラナックス0.4mg錠 2錠

   分2 朝夕食後
ジェイゾロフト錠50mg 1錠
分1 夕食後
レンドルミン錠0.25mg 1錠
分1 就寝前
14日分
今までは ソラナックスのみ服用
今回、赤色の薬が追加された

これらを服用して3〜4日目より、眼の焦点が合わない、近くを見ると2重にみえる、ぼやける等の症状が出始めました。
 
患者さんが眼科を受診し、薬の副作用ではないかとの指摘を眼科医から受けたそうです。心配した患者ご本人が、薬局に問い合わせ電話をかけてきました。


電話を受け、早速添付文書を調べたところ、眼に関する副作用の記述は以下のようでした。

ドグマチール;眼のちらつき

ソラナックス;複視、霧視

ジェイゾロフト;調節障害、霧視、羞明、視力低下

レンドルミン;記述なし

患者さんの症状は、副作用の疑いが強いと思われますが、添付文書だけでは詳しくはわかりませんでした。




私たちが物を見るとき、眼の中のレンズ(水晶体)は厚みを変え、どの距離のものもきちんと網膜上に焦点を合わせるようになっています。

遠くのものを見るときはレンズは薄く、近くを見るときはレンズは厚くなります。

近くを見るとき、レンズは厚くなるのですが、これは実は眼にとっては重労働なのです。
レンズを厚くするために、レンズを保持する筋肉は一生懸命働いている状態が続きます。
この筋肉の状態を続けるのに必要なものが、アセチルコリンという物質なのです。

薬によっては、副作用によってアセチルコリンの働きを抑えてしまうもの(抗コリン作用といいます)が、数多くあります。
こうした薬を服用すると、眼のレンズが十分厚くできず、近くに焦点が合わせられないため、ものが二重に見えてしまいます。

上記の薬の中では、ソラナックス、ジェイゾロフト、レンドルミンが抗コリン作用を持ちます。

ジェイゾロフトは、脳内のセロトニンだけを選択的に増やし、アセチルコリンなど、他の物質にはあまり影響を与えないよう開発された薬です。つまり「抗コリン作用などの副作用は少ない」というのが売りなのです。まったく無いわけではないので、念のため調節障害、霧視は記述されていますが、やはり少ないと思われます。

どの薬が抗コリン作用が強いかは、添付文書の記載からだけでは良くわかりません。

抗コリン作用は、これ以外にも、眼圧を上げて緑内障を悪化させるという悪戯もします。そのため抗コリン作用の強い薬は緑内障の人は使えないとされています。
つまり、緑内障禁忌の薬ほど、抗コリン作用は強く、眼がぼやける副作用も起きやすいと、逆に予測できます。


今回の処方では、ソラナックスとレンドルミンが緑内障禁忌であり、よって眼の副作用も起こしやすいと思われます。




薬は、効いて欲しいところだけに効けばよいのですが、なかなか思うようにはいきません。
思いもよらぬところにも影響を与えてしまうものです。
今回は薬が脳内で効いて欲しいのに、眼にも影響を及ぼしてしまったことになります。これがいわゆる副作用です。

では、こうして起きてしまった副作用には、どう対処すればよいのでしょうか。

原因薬を中止する・・これが最も確実な方法です。
しかし、病気の種類によっては、中断できない場合も有るでしょう。
その場合は、副作用を軽減させる薬を使いながら、治療を続けることになります。

今回の場合は、眼の症状が抗コリン作用で起きている可能性が高いため、アセチルコリンを補うような点眼(ミオピンなど)を使うことも、一つの解決策かもしれません。

薬の話 No.81/平成24年2月5日)


 
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