薬の話
インスリンの自己注射をしている患者さんが、受診日ではないのに薬局を訪れました。
手にはインスリンのキットと針を持っています。
何か不具合でもあったのでしょうか?
ヒューマリンN注キットを使っているのですが、2単位の空打ちで、液が出にくいとのこと。
針も曲がっていないのに、なぜ?・・とのことでした。
私も試してみました。
新しい針に替え、懸濁液のためゆっくりと振って、2単位に合わせてピストンを押しましたが、抵抗が強く、液がなかなか出ません。
同じ針で試していると、3回目で急に詰まりが取れたようになり、噴水のように液が出ました。
この患者さんは長年インスリンを使っていますが、このようなことは初めてだそうです。

キットの製造元のイーライリリーに確認すると、担当者の方が薬局まで説明に来て下さいました。
懸濁液だからといって、またナノパスという細い針だからといって、針が詰まることは有り得ない(心配ない)とのことでした。
一番多い不具合は、針をカートリッジのゴムに斜めに刺してからねじを回すこと・・だそうです。特に長年インスリンを使い、慣れている人ほど、この斜めセットが多いそうです。
斜めに刺すと針が曲がってしまい、ピストンを押してもインスリンが出ない。
出ないのに無理にピストンを押すと、内圧が上がり、ロックがかかってしまうそうです。そうなると、ダイヤルは動かなくなるそうです。
もし内圧が上がったまま使用すると、セットした単位以上にインスリンを注入する恐れがあるため、安全のためにロックがかかるそうです。
解決策は、とにかく針を変えたりしながら、液が出るまで空打ちをくりかえすこと。
空打ちさえうまくいけば、もう問題なく注射できる状態ということで、以後はその針やカートリッジを使用しても問題ないとのことでした。
もし針を変えても空打ちができない時は、カートリッジ自体の不具合かもしれないので、その時はカートリッジは回収処分になるとのことでした。
リリーさんの指導で、実際に正常なキットで空打ちをしましたが、最初はピストンが重くて滴るようにしか出ず、次に噴水のように出ました。最初から勢い良く出るわけではないとわかりました。
・・空打ちは、単に気泡を抜くだけではなく、針やキットの不具合を確かめたり、圧を抜いたりするのに、とても大切な操作なんですね。