薬の話
薬を2倍量服用してしまった
ある夕方のこと、薬局の電話が鳴りました。先ほど、抗生物質のクラリスをお渡しした75歳の女性患者の家族の方からです。
1日2回、朝・夕食後服用・・これを4日続けるという処方でした。
しかしこの患者さんは、初回の服用で、夕食後の分として
1錠服用するところを、誤って2錠服用してしまったとのこと。少し気分が悪いけど、大丈夫か?と、ご家族が心配されています。
薬は、通常 何日間か連続して服用します。
連続して服用することにより、薬が少しずつ蓄積され、血液中の薬の濃度が、回を追って徐々に上がってきます。
こうして、ある程度の濃度にまで上がって、初めて薬が効き始めるように設計されたものも多いのです。
たとえば・・
薬の半減期(半分の量が体から消失する時間)が来た時に、次を服用する・・・こうしたタイミングで服薬を続けると、薬の血液中の濃度が徐々に上がり、数回服用を続けた後ぐらいには、初回に比べ2倍の血中濃度にまで上がります。
こうしたタイミングで飲む薬の場合は、数回服用して、血液中の濃度が2倍量にまで上がって初めて効果的に薬が効くような設計になっている場合が多いのです。
こうした薬を、初回からいきなり2倍量服用すると、即、2倍量という有効血中濃度に達するため、それだけ早く効き始めることになります。初回に2倍量服用してしまっても、早く効き始めるだけで、とくに心配はいりません。
ところでクラリスの場合はどうでしょうか。
クラリスの半減期は約4時間。服用間隔は、12時間おきです。半減期に比べ、かなり長い間隔をおいて、次を服用するように設計されています。
2回目服用するときには、もうすでに血液濃度がかなり下がっています。こうした服用の場合、服用回数を重ねても、それほど血中濃度は上がりません。よって、この薬は血中濃度が2倍まで上がってはじめて薬効が期待される・・という薬では無さそうです。
このような薬をいきなり2倍量を服用すると、通常 薬効が期待される量より、もっと血液中の濃度は上がってしまいます。
あまり好ましいことではありません。薬によっては、通常の2倍になるだけで危険なものも有ります。
クラリスは、症状などによって適宜増減できる薬なので、2倍量服用したからといって即危険とはいえず、とくにあわてる必要はないと思います。
しかしこの女性の場合は、高齢ということもあり、若い人に比べると排泄・代謝の能力も落ちるので、それだけ薬が蓄積され易くなります。
2倍量服用してしまった場合、危険性は、その薬の半減期や投与間隔、安全域の広さ、患者の薬の代謝能力(年齢、肝障害や腎障害の有無)など、さまざまな要因が絡み合うため、個々のケースでの判断が必要となります。
(
薬の話
No.70/平成21年3月21日)
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