薬の話


イトリゾールとリポバスの相互作用


調剤薬局に、皮膚科の院外処方箋を持った患者さんが訪れました。

皮膚科からの処方箋
<院外処方せん>
イトリゾール 8カプセル
分2 朝夕食後

7日分
薬剤師: こんにちは。今日はイトリゾールというお薬が出ています。
今日はどういう症状で受診されたんですか?
患者さん: はい、足の爪が厚く、変色して。
先生からは爪の水虫と言われました。
薬剤師: そうですか。今日出されたイトリゾールは、のみ合わせの問題がある薬なんですが、今、ほかの病院で出された薬を何かのんでおられますか?
患者さん: はい。内科に通っています。コレステロールの薬をのんでいます。
薬剤師: 薬の名前はわかりますか?
患者さん: いいえ。家に帰らないとわかりません。
薬剤師: そうですか。実は今日出されたイトリゾールは、リポバスという名前のコレステロールの薬とは一緒にのんではいけないとされているんです。今のまれている薬がリポバスでなければいいんですが・・。
患者さん: それなら、家が近いので薬を持ってきます。

患者さんは一度帰宅し、併用されている高脂血症の薬を持って薬局に戻ってきました。併用薬はリポバスでした!!

すぐにイトリゾールを処方した皮膚科の主治医に電話して、指示を仰ぎました。
皮膚科主治医からは、「イトリゾールは処方変更したくないため、リポバスを処方した内科医に連絡し、他の高脂血症の薬に変更していただくよう私から直接頼んでみる。」との回答をいただきました。






コレステロール値を下げる薬の中で今最もよく用いられているのは、HMG-CoA還元酵素阻害剤とよばれるもので、スタチン系薬剤ともよばれています。
HMG-CoA還元酵素とは生体内でコレステロールが作られるときに必要な酵素です。スタチンとよばれる薬は、この酵素の働きを阻害することにより、コレステロールの生合成を抑えます。

今市場に出ているスタチンは6種類。これらを下表に示しますが、表の下にいくほど新しく開発された薬となり、効き目もシャープになります。

一般名 商品名 主な代謝酵素 溶解性
プラバスタチン メバロチン CYP以外 水溶性
シンバスタチン リポバス CYP3A4 脂溶性
フルバスタチン ローコール CYP2C9 脂溶性
アトルバスタチン リピトール CYP3A4 脂溶性
ピタバスタチン リバロ CYP以外 脂溶性
ロスバスタチン クレストール CYP以外 親水性

リポバスはCYP3A4という酵素により代謝されて体内から消失しますが、イトリゾールが併用されていると、CYP3A4の働きが阻害され、リポバスの代謝が抑えられます。つまりリポバスの血液中の濃度が上がって副作用が起きやすくなる恐れがあるのです。このため、イトリゾールとリポバスは、併用禁忌とされています。





スタチンに共通の副作用でもっとも重大なものは、「横紋筋融解症」とよばれるものです。
最近、身近な知人で、その副作用が疑われた人がいました。
その人は高脂血症のためリピトールを服用していたのですが、コレステロール値があまり下がらなかったため、用量が2倍に増やされました。その頃から、足の筋肉に力が入りにくくなったそうです。座位から立ち上がるときも、手の支えが必要になったそうです。知り合いの医師に話したところ、薬のせいではないか?と言われ、そのとき初めて副作用の存在に気付いたそうです。
この症状が副作用によるものかはわかりませんが、主治医に話して、現在リピトールは元の用量に減らされたそうです。しかし足の症状はまだ続いているとのことでした。

横紋筋融解症は怖い副作用ですが、めったに起きるものではありません。
スタチンは、コレステロール値を下げる有用な薬であり、それによって脳血管障害や心筋梗塞などの発症を抑えてくれます。副作用にはじゅうぶん気を付けたいですが、そればかりが強調されてもいけません。上手に薬と付き合っていきたいものです。

薬の話 No.61/平成17年9月25日)


 
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