薬の話


透析患者さん と ビタミンD


ある透析患者さんから、次のような質問メールをいただきました。

質問: 透析生活30年に成ります。
透析が長いせいか、薬には非常に敏感になっています。

透析患者はリンの吸着剤として沈降炭酸カルシウムをのんでいますので、今現在、私の血中カルシウム濃度は10mg/dlくらいありますが、それでも骨形成にはビタミンD3が必要なのでしょうか。
ビタミンD3をのむと覚醒して熟睡が出来なくなります。
又神経痛の様な痛みが足に現れます。

回答:

ビタミンDがもし不足すると、腸からのカルシウムの吸収が悪くなり、血中カルシウムの濃度が低くなってしまいます。そうすると、体は血中カルシウム値を増やそうとして、副甲状腺ホルモン(PTH)を分泌します。しかし、PTHの分泌が盛んに続くと、骨からカルシウムが血液中へ溶出してしまうため、骨粗しょう症を引き起こしてしまいます。
これらを予防する意味合いから、PTHの高値が続くことは避けなくてはいけません。

ビタミンDは、副甲状腺に直接働いて、PTHの合成や分泌を抑えます。
このようにPTHを抑える意味からも、ビタミンDは必要になってくると思います。


質問:

そうしますとPTHが高く無く、血中カルシウム濃度が正常であればD3は必要ないのでしょうか。透析患者がD3を服用しないため骨粗鬆症になると言う事は無いのでしょうか。
血中カルシウム濃度が正常であれば、D3を服用しても、骨密度の改善にはならないのでしょうか。

そのあたりがドクターに聞いても、納得できる返事がもらえません。

ドクターによっては、漠然とワンアルファー等を処方して、沈降炭酸カルシウムの服用が難しく、リンを下げれないことがあります。


回答:

ビタミンD3が必要ない・・と言い切ることは、難しいと私は思います。

骨形成は、ビタミンK、性ホルモンや、骨にストレスをかける運動などにより促進されますが、いずれも最終的に骨にCaが沈着するのには、活性型ビタミンDが必要と考えられています。

腎不全の方は腎によるビタミンD3の活性化がうまくいかないため、慢性的に、活性型ビタミンD3が不足気味になっていると思います。
不足分の活性型D3を、外から補うことも必要だと思います。


しかし、ビタミンDと沈降炭酸カルシウムを同時に服用していると、今度は逆に、高Ca血症の心配も出てきますね。

最近、Ca値を上げずにリンを落とす「レナジェル」という薬が発売されました。
うちの薬局でも、沈降炭酸カルシウムだけでリンを下げるのではなく、レナジェルと併用させてカルシウム値を上げないようにしながら、リンを落としている患者さんも何人かおられます。







一般に腎不全の方は、腎によるビタミンD3の活性化がうまくいかないため、慢性的に活性型ビタミンD3(実際に有効なビタミンD)が不足気味になっています。

ビタミンDが不足すると、腸からのカルシウムの吸収が悪くなり、血中カルシウムの濃度が低くなります。そうすると、体は血中カルシウム値を増やそうとして、副甲状腺ホルモン(PTH)の分泌を盛んにします。
PTHは、血中カルシウム濃度を上げようとして、骨からも どんどん血液中へカルシウムを放出させます。
このように、PTHの分泌が盛んに続くと、骨からカルシウムが血液中へ溶出してしまうため、骨粗しょう症を引き起こしてしまいます。
これを阻止するため、PTH値が高い患者さんには、オキサロールやロカルトロールなど 活性型ビタミンD3の、パルス療法(高用量、短期間投与)が行われます。副甲状腺にはビタミンDの受容体があり、ビタミンDはこの受容体に結合して、PTHの合成や分泌を、直接抑制することが認められています。

また、ビタミンDは骨形成にも欠かせないものと考えられています。
骨は、コラーゲンを原料とした骨基質に石灰が沈着して形成されますが、この過程は骨芽細胞により行われています。
骨芽細胞には、ビタミンDの受容体が存在し、ビタミンDが直接的に骨形成に関与していることが示唆されています。


ビタミンDは、腸管からのカルシウム吸収を増やして血中カルシウム濃度を上げ、それによって二次的に PTHを抑制したり、骨形成を促進したりします。
もしビタミンDの働きが、こうした二次的なものだけであれば、もうすでにしっかりと血中カルシウム濃度が上がっている上記の患者さんの場合、これ以上のビタミンDは不要ということになるでしょう。

しかし実際は、副甲状腺や骨芽細胞には、ビタミンDの受容体があり、一次的にも ビタミンDが直接関与していることが示唆されています。


薬の話 No.60/平成17年6月5日)

 
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