ディオバンは、少し難しい話になりますが、AT1受容体ブロッカーと呼ばれる系統の降圧剤です。
アンジオテンシンUという血圧を上げる物質(昇圧物質)があるのですが、ディオバンはこの昇圧物質の働きを抑えることにより、血圧を下げます。
これに対しテノーミンはβブロッカーと呼ばれる系統の薬で、心臓の働きを緩やかにして、血圧を下げる薬です。
このようにテノーミンとディオパンはどちらも血圧を下げる薬なのですが、血圧を下げる方法、つまり作用機序は全く違います。
化学的な構造式も全く違います。
このように全く系統の違う薬は、上述の薬剤師も言っているように、単純にmgで、効力の強さを比較することはできません。
mgの違いがそのまま薬効の強さに結びつくのは、全く同じ成分の薬の場合だけです。
たとえば、ディオバンには含有量が20mg、40mg、80mgという3種類の製品があります。
これらは全く同じ成分ですから含有量で単純に比較ができます。つまり20、40、80mgと含有量が多くなればなるほど、薬が強くなるといえます。
では、全く同じ成分でなくても、同じ
系統の薬であれば含有量の比較ができるのでしょうか。
たとえば骨粗鬆症の薬についてみてみましょう。
1990年にビスホスホネート類と呼ばれる骨粗鬆症の薬が承認、発売されました。骨吸収(骨から血液へカルシウム分が溶け出ること)を抑える薬です。
出始めの薬はエチドロネート(商品名;ダイドロネル)といい、
含有量200mgの錠剤でした。
薬は、よりシャープな効き目を求めて日夜研究が続けられます。エチドロネートも例外ではなく、より活性の高い化合物ができないものかと研究が進みました。そこでエチドロネートの化学構造式にアミノ基をくっつけることにより、なんと薬効が100〜1000倍にもアップした新しい化合物ができました。この化合物はアレンドロネート(商品名;フォサマックなど)として現在発売されています。アレンドロネートは強い活性があるため少しの量だけで効きます。
錠剤含有量はエチドロネートの200mgよりずっと低く、5mgです。
アレンドロネートは、エチドロネートの化学構造を少しだけ変化させて生まれました。ですからこれらは同じ系統の薬です。
最初にできたエチドロネートは200mg錠ですが、アレンドロネートは5mgです。
しかし、5mgだから効き目が弱いという意味ではありません。いえ、5mgぐらいの少量でも十分効くという意味で、かえって効き目はシャープな薬だといえるのです。

では、全く違う系統の薬の場合は、含有量の比較ができるのでしょうか?
これが、最初の病院での会話例に当たるのですが、系統が全く違う薬では、含有量の比較はできません。
先ほども書きましたが、テノーミンはβブロッカーといって、心臓の働きを鎮めることにより血圧を下げる薬です。
ディオバンは、昇圧物質のアンジオテンシンUを抑えることにより血圧を下げる薬です。
これら二つの薬は化学構造も作用機序も全く異なり、mgを比較しても何の意味もありません。
降圧剤には、上述のβブロッカーやAT1受容体ブロッカー以外にも、Ca拮抗剤や利尿剤、ACE阻害剤などの種類の薬があります。どの系統の薬剤であってもさほど降圧効果に差はないようです。
それよりも、他の合併症や、患者さんの薬に対する感受性などを考慮して、より好都合な薬が選択される場合が多いようです。
この病院で気になったことが一つありました。それは、テノーミンが中止になり、薬がディオバンに代わったという点です。
長い間テノーミンのようなβブロッカーを服用してきた人が、急に薬を中止すると、動悸がしたり血圧が上がったり・・という症状が現れることがあります。
βブロッカーから他薬に変更する場合は、少しずつ減量しながら他薬に移ることが理想ですが、必ずしもそのような処方になっているとは限りません。
そこで、患者さん自身も、薬が変更になった場合は体調の変化に気をつけながら、もし異常があれば直ぐ主治医に伝えることが大切だと思います。
(薬の話 No.48/H 14.11.14)