薬の話


ダイアモックス による しびれ感



緑内障の患者さんには、通常、点眼薬だけが処方されることが多いのですが、それだけでは眼圧のコントロールができない場合に、内服薬が併用されることがあります。
緑内障の内服薬として良く用いられるのに、ダイアモックス(一般名アセタゾラミド:炭酸脱水酵素阻害剤)があります。ダイアモックスは房水の産生を抑えて眼圧を下げます。

この薬の比較的多い副作用として「四肢の知覚異常」があり、投薬窓口でも指先のしびれ感を訴える患者さんが非常に多いと感じています。


薬剤師 / 患者さん(女性、75歳)


眼科の院外処方箋(右図)を持った患者さんが、薬局を訪れました。
緑内障の患者さんで、今までは点眼薬だけで眼圧をコントロールされていたのですが、今回より内服薬が追加されています。



こんにちは。今日は新しく飲み薬が追加されていますね。



ええ、点眼だけではなかなか眼圧が下がらなくて。今日は飲み薬も出すと先生に言われています。


<院外処方せん>

ダイアモックス(250mg) 2錠
分2 朝夕食後
 3日分

アスパラ K  4錠
分2 朝夕食後 3日分

トルソプト点眼(1%)  5ml
両眼 1日3回

そうですか。今日はダイアモックスという飲み薬が出ています。房水という目の中の水が、増えすぎると眼圧が上がるのですが、このダイアモックスは、房水を作りにくくするお薬です。ダイアモックスは利尿薬としての働きもあって、少しトイレが近くなるかもしれません。ダイアモックスを飲んでいるとカリウムが不足しやすくなるので、このアスパラKというカリウム剤も、忘れずにいっしょに飲んでください。


3日後、この患者さんは再び薬局を訪れました。処方は、前回と同じです。(右図)


こんにちは。今日も、前回と同じお薬ですね。
お薬のことで何か気になることはありませんでしたか。



あります。なんだか、指先がジンジンとしびれるんですよ。



そうですか。そのことは眼科の先生にお話しになりましたか。



ええ、話しました。先生は、そんなに心配はいらないとおっしゃってましたけれど・・・



そうですか。
ダイアモックスでしびれ感を訴える患者さんはとても多いです。先生がおっしゃったように、心配はいらないですよ。しばらくすると慣れて、しびれが消えると思います。









ダイアモックスの添付文書によると、四肢知覚異常の副作用は、25.9%という高率に起きているようです。私が投薬窓口でインタビューしても、しびれ感を訴える患者さんがかなり高率でいると実感しています。
ダイアモックスの製造元である日本ワイスレダリー社に問合せたところ、この知覚異常は、電解質のバランスが崩れて起きているとの回答でした。とくに重大な副作用ではなく、服用を続けるに従い、慣れてしびれ感が軽減される場合も多いとのことでした。

アセタゾラミド(ダイアモックスの一般名)の副作用に関して、有用な報告があります。しびれなどの副作用は、赤血球内のアセタゾラミド濃度が高く、炭酸ガス濃度が高くなっている人に起き易いというものです。(文献 1)

アセタゾラミドは炭酸脱水酵素を阻害するため、体内のCO2が処理されずに溜まり、血液は酸性に傾きます。
またアセタゾラミドは、腎において、HCO3-イオンの尿中への排泄も高めるため、血液のHCO3-イオンが減り、このことも血液を酸性に傾けます。
こうした体の変化が、しびれなどの副作用を起こしていると思われます。

しかし、こうしたしびれも、いつまでも続くわけではありません。
酸性に傾いた血液は、主にCO2を体外へ排出することにより、やがて少しずつ元通りの状態へと是正されていきます。
酸性に傾いた血液が脳の呼吸中枢を刺激して呼吸を盛んにし、CO2の肺からの呼出を高めるからです。

副作用の強く現れている患者さんの場合には、急激なアセタゾラミドの負荷をうまく処理しきれず、こうした是正がスムーズにいっていないと考えられます。
こうした患者さんには、アセタゾラミドの服用量を減らす、あるいは今よりも少用量より開始し、少しずつ用量を増やすなどの配慮が必要だと思われます。

薬の話 No.47/平成14年 9月12日)

<参考文献>
1)乾正 他:Acetazolamideの赤血球内濃度と副作用の関連について、最新医学 35(12):2494-2496、1980
2)安田典子:炭酸脱水酵素阻害剤長期使用の注意、眼科 29(5):405-412、1987
3)ダイアモックス添付文書
 
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