薬の話


耐性菌を生み出さないために


ミノマイシンはテトラサイクリン系の抗生物質で、幅広い種類の細菌の増殖を抑える特長を持っています。また細菌だけでなく、マイコプラズマやクラミジア、リケッチャなどの微生物にも効きます。

またミノマイシンはニキビ菌も抑えるため、ニキビの患者さんにも使われています。

2〜3か月のように長期に使用されることもしばしばあります。
今回の話は、2ヶ月ほど前からミノマイシンの投与が続いているニキビの患者さんの例です。



薬剤師 / 患者さん(19歳 女性)

こんにちは。
具合はどうですか?


以前に比べれば、だいぶ良くはなったのですが。

<院外処方せん>


ミノマイシン( 50mg ) 2錠
分2  朝夕食後
14日分

ベシカムクリーム  10g
1日2回 患部塗布
本日の処方箋。
3週間前も、同じ処方で
出ていた。

でも、まだひどくなったり、よくなったりの繰り返しです。


そうですか。
今日もまた前回と同じお薬が出ています。ミノマイシンが2週間分ですね。



薬歴簿をみると、前回薬局でお薬を渡したのが、3週間前でした。
その時も、2週間分の飲み薬しかお渡ししていないので、途中で薬がなくなっているはずです。

その点を患者さんに聞いてみました。


前回、ここへ来られたのが3週間前ですね。その時ミノマイシンは2週間分しかお出ししていないので、途中でお薬が不足してしまったのではないですか。


いいえ、塗り薬は無くなったんですが、ミノマイシンの方は、まだ家に残っています。
ひどい時だけ飲んで,調子の良い時は止めていましたから、なかなか減りません。



患者さんの言葉が気になりました。
ミノマイシンのようなテトラサイクリン系の抗生剤は、菌を死滅させるのではなく、菌の増殖を抑えているだけです。つまり、菌はまだ生きている状態なのです。
見かけ上良くなったからといって、すぐ薬を止めると、菌はまた増殖を始めてしまいます。



良くなったからといって、すぐ中止したりしないで下さい。薬の効果がなくなると、菌はまた増えてしまいます。中途半端に服用していると、治療も長引きますし、その間に薬が効かない菌も増えてしまうかもしれません。
抗生物質は、きちんと指示どおり服用するようにして下さい。









ミノマイシンは2〜3か月のように長期に使用されることもしばしばあります。
さらに、患者さんが自己判断で中途半端な服用をしていると、いつまでもすっきり治らず、長い服用期間を、更に延ばしてしまいます。
抗生物質が長期に使用されるということは、それだけ耐性菌(抗生物質が効かない菌)を生み出す危険性も高くなるということなのです。

抗生物質の菌に対する作用は「殺菌的」と「静菌的」の2種類あります。
殺菌的とは、菌を死滅させる作用。
静菌的とは、菌を死滅させるほどの力は無く、ただ増殖を抑えているだけの作用。このあと、患者さんの持っている免疫力や、菌自身の寿命で菌を死滅させる必要があります。

ミノマイシンなどのテトラサイクリン系抗生剤は、後者の静菌的の方です。決して効き目が強い薬ではないのです。
よくなったからと患者さんが勝手に薬を止めると、死滅せずに増殖を抑えられていただけの菌は、又増殖を始めてしまいます。
このとき、もし生き残っている菌の中に耐性菌があれば、ミノマイシンを中止している間に耐性菌も増殖させてしまいます。
さらに耐性菌は、「耐性」の性質を周りの菌にうつすことがあり、結果、今まで抗生剤が効いていた感受性菌も、耐性菌へと変化します。こうして、耐性菌は増えていくのです。
こうしたことを防ぐためにも、自己判断せずに、出された薬はきちんと指示どおり服用することが大切です。

また、症状が良くなったのにまだ暫く抗生剤の投与が続く場合もあります。このとき、主治医は「完全に菌をたたくまで、もうしばらく服用を続ける。」という考えで、抗生剤の処方を続けており、この期間しっかりと服用することはとても大切なことです。感染症の種類によっては、完全に菌を叩いておかないと,あとで怖い合併症を引き起こす場合もあるからです。


しかし、なかには処方医自身が安易に抗生剤を使用し、症状の改善もないのに漫然と長期に同じ抗生剤を続けている場合もあるかもしれません。
耐性菌はこうした状態の場合にも作られ易いのです。

耐性菌の増加は、抗生剤の用い方など、その大半は医療従事者サイドに原因があると思います。
しかし、患者さんサイドでも、出された薬は指示どおりきちんと服用するなどの注意はしていただきたいと思います。
その上で、症状の改善もないままに漫然と同じ抗生剤が長く続いているなど、患者さんが何か不安を感じた時は、処方医に積極的に問い掛けることも大切だと思います。
「長く飲んでも大丈夫か?」「いつ頃まで飲むのか?」
こうした積極的な問いかけが処方を見直されるきっかけになり、耐性菌の出現を少しでも減らすのに役立つかもしれません。

薬の話 No.46/平成 14年 7月18日 )


抗菌剤についての詳しいページは、こちら抗菌スペクトル表 、抗菌剤の種類と特徴

 
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