薬の話


感染症 と ステロイド

アトピー治療に重要な位置を占めるステロイド剤は、その強力な抗炎症作用、抗アレルギー作用により薬効を発揮します。
しかしステロイドは、こうした作用の裏返しとも言える「免疫抑制作用」も有し、これによって抵抗力が弱くなるため、ステロイド使用時には細菌やカビ、ウイルスなどに感染しやすくなります。感染症のあるときには、ステロイドの使用は症状を悪化させることがあり、慎重に行う必要があります。

薬剤師 / 患児(1歳)の母親 


1歳の男の子が、お母さんに抱かれて薬局に入ってきました。顔にはいっぱいプツプツができています。眼科からの院外処方箋を持ってこられました。

こんにちは。今日はゾビラックス眼軟膏が出ていますね。今日は、どういったことで眼科にかかられたのですか?


ヘルペス(単純疱疹)です。この子は、ついこの間もヘルペスになってしまって。ようやく治ったと思ったら、また再発してしまいました。
皮膚科に通っているんですが、目の周りが特にひどいんです。心配なので、きょうは眼科でも診てもらいました。


それはたいへんでしたね。ところで皮膚科ではどんなお薬が出されているか分かりますか?


本日受けた 眼科からの処方
<院外処方箋>

ゾビラックス眼軟膏  5g
1日3回 塗布
.
皮膚科で出されている薬
アシクロビン(抗ヘルペスウイルス剤)
一般名;アシクロビル

バナン(セフェム系抗生剤)
一般名;セフポドキシムプロキセチル

テルギンG(抗ヒスタミン剤)
一般名;フマル酸クレマスチン

ザジデン(抗アレルギー剤)
一般名;フマル酸ケトチフェン

ネオメドロールEE(ステロイド+抗生剤)
一般名;フラジオマイシン+メチルプレドニゾロン

ええ。これが皮膚科でもらったお薬の説明書です。ヘルペス以外に、アトピーや とびひにもなってしまっているので、種類がとても多いですよ。


そう言って、右下の表に示した薬の説明書を見せて下さいました。
最後のネオメドロールEEが少し気になりました。
ネオメドロールEEは、眼の周囲や眼内に使用するステロイドの眼軟膏なのですが、ステロイドによる免疫力低下のために感染症を悪化させる恐れがあリます。
よって、角膜ヘルペスなど、眼がウイルスに感染している時は、原則として、使ってはいけないことになっているのです。


ネオメドロールEEが出ていますね。目の周囲にはどのように使うのか、皮膚科の先生からお聞きになっていますか?


はい。目の周囲がとくにひどいので、なるべく目の周囲にはしっかりと塗るように言われています。



そうですか。ところで、今日の眼科の先生は、皮膚科でネオメドロールEEが出されていることはご存知ですか?



はい、眼科の先生にもこの説明書を見せました。眼科の先生は、ヘルペスの時にステロイドを使うのはあまりよくないので、ネオメドロールは目に入らないよう、目から離れたところに塗るようにと言われました。


そうですか。
ヘルペスに感染している時にステロイドを使うと悪化させる恐れがあるので、ステロイドの使用は気をつけないといけないんです・・



ネオメドロールEEを、眼科の先生は「目から離れたところに」、皮膚科の先生は「目の周りもしっかりと」・・
双方で言うことが違うんですけれど、どうしたらいいでしょうか。


お顔の皮膚症状に関しては皮膚科の先生が一番良く把握されていますが、目の病状に関しては、眼科の先生が最も詳しいと思います。眼科の先生が、目に入れてはいけないと指示されているのなら、やはり目から離して塗らなくてはいけないと思います。
もう一度皮膚科の先生に、眼科では「ステロイドは目に入らないよう、目から離れたところに塗るように。」と言われたことを伝えて、再度 用法について指示を受けて下さい。



ステロイドは強力に炎症を鎮める薬であるため、角膜ヘルペスでも、病状によってはステロイドを使用する場合もあるそうです。ステロイドを使って良いのか悪いのか・・薬局では判断できません。
感染症があるときのステロイド使用方法にはとても難しいものがあります。医師の指示をあおぎながら、使用しなくてはいけないと思います。






アトピーの患者さんは、ステロイド使用による免疫力低下のためか、あるいはアトピーで皮膚のバリアー機能が弱まっているためか、とびひなどの感染症をたびたび併発することがあります。
アトピーに感染症を併発した時は、単なるステロイドだけでなく、抗菌剤入りステロイドを用います。ネオメドロールEEは、そうした抗菌剤入りの製剤で、目に入っても大丈夫な製剤のため、目の周りの皮膚疾患などに使用されます。
またステロイド外用薬を塗りつづけていた部分に、ステロイドによる免疫力低下によってカビが生えた場合などは、抗真菌剤が併用される場合もあります。
このように、ステロイド使用によって感染が引き起こされた時は、感染を抑える薬も併用されるのです。

水虫などに市販のステロイドを自己判断で使用すると、免疫力低下でカビをはびこらせてしまい、かえって症状を悪化させてしまいます。
化膿や水虫など感染症があるときに、ステロイドを自己判断で使用することは、避けたいものです。

薬の話 No.38/H 13.06.23)

ゾビラックスに関する詳しい説明はこちら
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