薬の話


ワーファリン の 手術前中止

最近は 入院しないで 日帰りで行う手術も増えてきました。それに伴い、調剤薬局でも 手術直前の患者さんの院外処方を受ける場合も出てきました。
そのような患者さんがワーファリン(一般名ワルファリンカリウム;抗凝血剤)を服用している場合、服薬指導も 特別な注意が必要になってきます。

薬剤師 / 患者さん

眼科からの院外処方箋を持った患者さんが来局しました。処方内容から、白内障の手術を受けられた後の患者さんのようです。
薬歴簿には、手術直前の投薬を担当した薬剤師によって、「ワーファリン服用中。術前中止にあたっては、内科主治医と相談して進めるように指導」と、記載されていました。


白内障手術直後の処方。
このリンデロンA液の他に、手術直前に処方された抗菌剤やNSAIDsの点眼剤も合わせて点眼するよう 眼科医より用法指示されています。
<院外処方せん>

リンデロンA液(眼・耳科用)  5ml

セフゾンカプセル(100mg)  3カプセル
毎食後 4日分

:こんにちは、白内障の手術をされたのですね。
今日は手術後の、点眼剤と内服薬が出ていますが、点眼する時間帯などについて、先生からお聞きになっていますか?


:はい。目薬のさし方については、説明の用紙をもらっているので、分かります。



:そうですか。今日は 内服薬で セフゾンという抗生物質が出ています。
(薬歴を見て) ワーファリンを飲んでおられるようですね。 相互作用の問題もあるのですが、眼科の先生は、あなたがワーファリンを飲んでいることをご存知ですか?


:はい。眼科の先生には、手術前に ワーファリンのことを知らせました。
私は心臓病があってワーファリンを飲んでいるのですが、ワーファリンを出している方の心臓内科の先生は、私に 「他の病院で抜歯や手術するような時は、必ずワーファリンを飲んでいる事を告げるように。」と言っています。
それで、眼科の先生にも告げたのですが、眼科の先生は、「白内障の手術ぐらいでは ワーファリンを中止する必要は無い」と言われました。


:では、ワーファリンの服用を続けたままで、手術を受けられたのですか?


:いいえ、その日、ここの薬局の薬剤師の方が「ワーファリンを出している方の心臓内科の先生にも 一度相談してみて下さい。」といわれたので相談したところ、結局 念のためワーファリンは中止することになりました。先生は、手術の3日前からワーファリンを中止するように言われました。そして、中止してからも 血の固まり具合を調べるため、手術前日まで 毎日 検査に通いました。手術は問題なく終わり、また次の日から 早速ワーファリンの服用を始めています。凝血能の検査のために 心臓の病院にも まだ毎日のように通っています。

:そうですか。ワーファリンの中止や再開にあたっては 心臓内科の先生から 細かく指示が出されていたようですね。
・・・今日お渡しするセフゾンでも、ワーファリンの効き目を強くする場合があります。
今度病院に行かれたら、心臓内科の先生に、セフゾンを飲んでいることも お伝え下さい。


             


ワーファリン(一般名ワルファリンカリウム)は ビタミンK依存性血液凝固因子の生成を抑えることにより 血栓の形成を抑える薬です。
ワーファリンの作用増強は出血傾向につながり、作用減弱は血栓形成につながります。これらのバランスをとるためには、ワーファリンの血中濃度を適正に保つ必要があり、トロンボテストなどの抗凝血能検査を行いながら服用を続ける必要があります。
そして、この凝固能は 併用薬や食べ物による影響を 非常に受けやすいのです。
よって ワーファリン服用中の患者さんに対しては、相互作用について 気を付けなくてはいけません。

ワーファリン服用の患者さんは 処方医から 「服用にあたっての注意」を受けていると思います。
しかし、私が投薬する際、患者さんの方から 「他院でワーファリンを服用している」と 知らせる場合は、 本当に少ないのです。
「併用薬はありますか?」と私が尋ねて はじめて その患者さんがワーファリンを飲んでいることが判明することが多いのです。
患者さんは、 ワーファリンが相互作用の多い薬であるうえ、血中濃度のコントロールが難しい薬であることを理解し、必ず 薬剤師に ワーファリンを服用していることを伝えてほしいと思います。

また、ワーファリンに対する配慮は 相互作用だけではありません。今回の患者さんのような 術前中止に関しても 注意が必要になってきます。
抗凝固剤ワーファリンを服用している患者さんは、出血が止まりにくくなっているため、大きな手術の際は ワーファリンを予め中止するなど 特別な配慮が必要になります。
しかしワーファリンを中止する事は 血栓の発生にもつながるため、中止に際しては主治医の監視が必要だと思います。
手術医に対してはワーファリンを服用していることを告げること、また ワーファリンを中止する時は ワーファリン処方医の指示を仰ぐことなどを 患者さんに 指導することが必要だと思います。

薬の話 No.29/H 11.12.26)

ワーファリンの相互作用についてはこちら

   

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